第八十五話 さぁ、行こうか!
「《今、我が鍵によって! 開門し、邪悪なる者を封じんとするものなり》」
そう保が、平子の顎に指を置く。
平子の頬も紅潮する。
「ああ。アナタ、なんと勇ましいこと……」
「いやいや……惚けてねェで。な?」
「《私の門を鍵を持って悪しき者を闇へと祀らん》」
そして。
二人が口づけをした。
瞬間。
頭上に門が現れたかと思えば。
ガコン‼
勢いよく口を開け。
「さ。行けよーーマサル」
出口が宙に腕を上げた。
すると。
鱗粉のような光の粒子が、指先にまとわりついた。
「人間になるために!」
次の瞬間。
ド、ッゴォオオンッッ‼‼
門が閉じ。
姿を消してしまう。
「ぅ、ううう……ァ゛ああ゛あ゛ッッ~~‼」
ミウが地面に腰をつけ、泣きじゃってしまう。
その横に烈が膝をつけた。
「ほらー泣かないで―ミウちゃん♡」
「ァ、ああ゛ああ゛ァ゛アア゛ッッ‼」
烈がミウの頬を両手で挟んだ。
「なんだよ゛ぅ゛~~う゛ぅ~~」
「待ってってあげてーあの子をー」
「?」
唇を突き出すミウに、
「あの子は必ず戻って来るからー君の元にか、誰かの元に」
にこやかに、優しく烈が微笑む。
「おじーちゃん……ここ、どこ?」
「あ。紫陽花ちゃん」
目元を擦りながら、《御霊特急》から降りて来た。
そして。
烈が立ち上がり、駆け寄った。
「? その子供は、誰だよ……レツ」
「君の甥っ子に当たる子ー紫陽花っていう名前だよー」
「甥っ子?? だって??」
--フザケルナァアアアアッッ‼
ダカタの雄叫びを上げた。
それに、この場の全員の身体がビクついた。
--俺ガ望ンダ展開ハコノヨウナモノデハナイィイイイイッッ‼
「おっとー《ミッション・ウインクノ夜》を起こそうとしていた奴じゃないかー」
--貴様ハ一体、何者ダァアアアアッッ‼‼
さらに声を荒げるガタカに。
訊かれた烈は、満面の笑顔で。
「手前に言う名前なんざねェんだよッッ‼」
強く言い放った。
◆
「ん……」
マサルが目を覚ますと、全身の感覚があることに気づいた。
「ぁ、そっか。全部ーーゆ」
「夢であるかってんだよ。馬鹿かってんだ」
「!? っだ、誰だよ?!」
慌てて置き上がると、視線が高いことに気がついた。
そう。
身体が元の大きさに戻っていたようだった。
「つぅーか……ここ、どこだよ。てか、ミウは? 出口サンは?!」
「おいおい。落ち着け、落ち着け!」
「落ち着けるか‼」
「こういうときこそ。落ち着かなきゃなんねェだろうが」
「……お前は、誰だ?」
「儂はさる飛かず志ってもんさ」
彼の容姿は猿そのものだった。
顔は青年、腰にはマサルのように、腰布が巻かれていた。
「ある女がよォ~~お師匠さんに頼み込みやがってよォ~~たっく! お師匠さんも、お人よしってもんだ」
ブツブツ、と小さく漏らすさる飛に。
「俺を、どうするつもりだ??」
「どうするも何も。手前はーー《人間》になりたかねェのかよ???」
「人間……--人間に、なる? 俺が????」
少し混乱気味に、マサルは手を見た。
指先から、黒い靄が溢れていた。
「--なりたい。人間に俺はなる!」
「ああ。じゃあ、行こうぜ! お師匠さんがいい場所を見つけてくてたんだぞ!」
ぴょんぴよん! とさる飛が飛び跳ねながら。
マサルの背中を押した。
「ぉ、おおう! っちょ! 押すなよッッ!?」
「ここでの維持も中々と厳しいんだよ! って、お師匠さんも言ってたぞ!」
「お師匠さん、って。誰だよ」
さる飛が目を丸くさせた。
そして、はにかむ。
「まァ、その話しは行きながら教えてやんよ」
「そうしてくれ。混乱してるから」
そして、マサルが歩き出した。
一歩前に、足を踏み出し。
「俺はきっと戻る! 必ず! みんなの元にッッ‼」
◆
襲いかかるガタカに、
「あーちゃん。喰べちゃってー」
眠そうに目を擦りながら。
「……--おじーちゃん。分かった」
口を大きく開けた。
そして。
襲い掛かって来たがガタカを飲み込んだ。
ちゅぽん!
「まっずー~~いッッ!」
口を手で覆う紫陽花に、烈が。
優しく頭を撫ぜた。
「ありがとうーあーちゃん♪」
「うん。……--ここ、どこー?」
「夢の世界だよー、さ。寝ようか? あーちゃん」
「そーするー~~」
そして抱き上げた。
「あ、あの……--その、僕は、どうしたらいいの??」
もじもじ、とミウが烈に訊く。
「だって、その……あの、実はここに居ずらい事じょーー」
「ダンブア、だね? あの堅物!」
荒くため息を吐くと、
「来るかい? あっちはこっちとは違って、苦しいことばかりだけど」
ミウに訊いた。
「行く! 僕は視たいんだ! マサルが居た世界を‼」
即決の回答に。
烈が手を伸ばした。
「さ。おいで」
「うん」
ミウは辺りを見渡した。
ガーナを、アデルを。
マーニーを、出口に愛を。
皆が、固唾を飲んでミウを見た。
「他はいないのかい?」
その言葉が合図かのように。
アデルだったものを、ガーナはマーニーに手渡した。
「行くんでしょ? 一緒に♥」
「! ああ、行くよ」
「アデルを、お願いね♥ あたしは行かないからさ」
「分かった。さようなら、ガーナ」
そう言い、手を固く握る。
戦友に別れをするかのように。
「俺は運転手なんで乗るしかねェし」
江頭が煙草を咥えながら、頭を掻きむしりながら。
「……--出口。手前はどうすんだ?」
「? 俺は人間じゃないから。そろそろ、消えるよ」
「そっか……そうだよな。なら、俺ァ、また入江出口を探すとしにゃなァ」
「さよなら、江頭サンwwww 見つかるといいねwwww」
「見つけてみせるさ♪」
間もなくして出口も、その姿を消した。
愛は、すでにいなくなっていた。
挨拶もなく。
ガコン。
《御霊特急》の扉が閉まった。
ブロロローー……。
エンジンがかかると、ゆっくりと。
走り出した。
中途半端にではなく、ここで終わりです。更新も遅れたことにお詫びをします。お付き合い有難うございました!この続きはGA文庫様に投稿予定です。一次落ちした際に、ここに戻る予定です。
新作もぜひお付き合いをお願いします!有難うございました!




