第八十三話 役者たちの挽歌
都築 大という女性は。
探求心の塊で、とても厄介なものだった。
強気で、勝気で、男勝りで。
しかし。
それらがどうしてだか、周りを魅了し惹きつける中毒性もあった。
だから、彼女が望めば大概が叶ったのだ。
異世界の来てしまったのも。
そういう経緯があったのだ。
そして。
彼女を召還したのはーーミレーヌ=ボゾロイであり。
ミウの母親だった。
◆
「お終いにするたって! 私は、私はッッ‼」
小脇に抱えた孫の紫陽花を胸に抱きしめた烈。
ぎゅ! と強く。
「息子を失うことが怖い!」
そして、大粒の涙を流した。
烈の叫びに、出口が口をへの字にさせながら。
どうしょうかと、戸惑っていると。
すぅ。
ふぅううーー……。
「仕方ねェじゃねェかよ。なァ? 可愛子ちゃん♡」
「……江頭、さん」
「なんだよ。随分な様子だなァ! 手前の大好きな先輩に対してよォ‼」
「好きじゃないし。キモイんですが」
「! ああそう! もういいわ! やってらるかっての‼」
ズカズカ、と車内に戻っていく保を他所に。
凛が入り口に残った。
「--……ネクスト」
「ああ。出口」
過去と、未来。
異なる世界の《入江出口》が、思わぬ形で出会った。
姿や、形が違えど。
魂や、その色は同じものだった存在。
「「終わらせたいか??」」
思わず声も同調してしまう。
「おい。真似すんじゃねェよ!」
「そっちこそだよ」
そして。睨み合うが。
「おーい。いいから、とっととやっちまおうぜェ! 時間がねェじゃねェかよ」
愛が制止させるのだった。
険しい表情で。
「「ああ」」
またしても重なる声に、両者が睨む。
◆
何回か来るうちに。
禁忌地区にも、内緒に行くようになった。
大とミレーヌ、そして烈の三人で。
そこで遭遇したのがーー黒い靄。
《ダークスキャナー》という生命体だった。
伝承に記述が残る伝説に近いもの。
それがーー都築マサルだ。
仲良くなり、懐かれるようになり。
次第に大の中に芽生えるものがあった。
『ボクはこの子を地球に、日本に連れ帰るよ。研究対象としてだ』
彼女がどうしたかったのかも、烈は知らない。
今となっては分からない。
そして、ミレーヌの魔術師としての力を借りて。
あるものを呼び出すことに成功した。
森羅万象を司る《番人》の召喚をだ。
『この子は養子にします。ただ……人間にはなれません。してくれとも言わない』
召喚された番人も、戸惑い苦笑いを浮かべる程に。
召喚されたことにーー唖然、茫然としていたのだ。
そして、じわじわと胸を占めていく屈辱的ーー怒りにも。
『もしものことに備えて保険が欲しいんだ』
大の懇願に番人が、落ちるのはすぐだった。
『この子を閉じ込める《番人》が欲しいんだ』
『閉じ込めるだけで、殺さないですよ? ですよ??』
烈も、慌ててながら言葉を添えた。
『……人間になるか、空気の粒子に戻るか。選ぶ権利がありますわ』
ミレーヌも、畏まりながら、口添えをする。
願いは叶えられた。
発動条件はーー暴走だ。
◆
「江頭さん! いつまでも拗ねないでくれ‼ おっさん‼」
《御霊特急》の中に顔を入れ叫ぶ出口。
渋々といった様子で江頭が出て来た。
「だりィ~~本当にやんのかァ? 面倒くさいんだけどォ?」
「あんた。そのために産まれたんじゃねェの??」
「んだけどよォ~~平子もいなーー」
「いますよ? アナタ」
背後からの聞き慣れたはずの声に。
咥えていた煙草を落とし、上擦った声を漏らしてしまう。
「!? ぅ、おっと‼ ひ、平子、ちゃん……」
引きつった笑いに、平子は出口を睨みつけた。
「泥棒猫が!」
口汚く罵る平子に、
「手癖が悪いのがおっさんじゃねェかよ。知るかってんだよ」
溜息交じりに、そう返す出口だった。
「……殺してやる。殺すわ」
「奥様wwww あとで煮るなり焼くなりお好きにどうぞwwww」
愛がそう応えると。
「だからーーあの馬鹿を《宙門殿》に封じてくれ!」
強い口調で命じた。
「ええ。私も、あの人も……この日のために在るのですから」




