第八十一話 入江姉弟の反乱
地下の《遺跡》でマサルだった靄が。
一気に拭き溢れた。
真っ黒な風が、獰猛に吹き荒れるのだった。
「っぐ! っま、サルー~~ッッ‼」
目の前の視界も真っ黒で。
その中で。
ミウが彼の名前呼んだ。
荒く吹き溢れる靄が、ミウや。
他の仲間の身体にも、痛くもーー当たる。
あまりに強い風に。
「っく! つ、ょーー」
地面を拭籠める足にも力を籠めるが。
ズ、ズ、ズズズーー……。
ゆっくり、と。
ゆっくり、と。
その身体を浮き飛ばしていく。
「ミウ! どうにもならないのか!?」
たまらずに、マーニーがミウに訊ねた。
視界はゼロで、どこに居るのかさえ視えないミウに。
「ないよ! あるわけないじゃんか‼」
「ポンコツ!」
「! その台詞、そっくりそのまま、返すぜ! ボンタコタレス嬢ォッッ‼」
言い合い、罵りあう二人。
「真っ暗~~もー~~どーなってんのさー~~!」
悲鳴を上げるのは他も同じで。
ガーナもそうだ。
「どうもこうも、マサルがーー元に、……--暴走したのよ」
だが。
アデルは、どこか。
想定していたかのように。
冷静そのものだった。
「っぼ、暴走って?! もぉ~~アデルー~~どこ~~??」
泣き声にも、悲鳴にも近い声でアデルに声を上げるガーナ。
「愛ちゃ~~ん‼」
辺りは暗闇よりも、密度の高い闇。
そのものだった。
「……--マサル。お前はおれの、おれの大切な男よ」
ガリ!
「っつ!」
アデルは指を噛んだ。
確認は出来ないが。
口の中に広がる鉄分にーー血が滲んでいると確信した。
そして。
「《腐敗の一滴》!」
《呪術者》の誇りと、自信を持って。
そう唱えた。
「口を閉じなさい! 死にたくないのなら‼」
「「「「????‼‼」」」」
その声に。
みんなが、口を手で覆った。
ボッッッッッン。
ボボボボーー……ッッ‼‼
宙に火花が散った。
かと、思えば。
勢いよく着火したかのように。
爆音を立てて破裂した。
すると、靄が薄れていった。
辺り一帯の視界もよくなったのだった。
「お痛をする子はお仕置きよ? マサル」
不敵に微笑みながらガーナが言う。
「やるじゃん! 呪術者!」
パチン! とミウが指を鳴らした。
「どっかの役立たずとは違うなぁ」
関心するかのようにマーニーも頷いた。
ミウは口を突き出していく。
「君もだろう! マーニー嬢!」
「……--ミウ」
「……--どうする? マーニー嬢」
そして。
いい案も浮かばずに。
また押し黙ってしまう二人。
そんなやり取り全部を。
入江姉弟が、他人事のように。
客観的に見ていた、腕を組みながら。
煙草を咥えながら。
「デグチ! メゴ‼ 何かあるなら、出せよ‼」
ようやく。
周りを見たミウが、二人に訊ねた。
「てか。これやり過ぎだよ。アデルちゃん」
愛が地面を踏みつけると。
っか!
アデルの足元に魔法陣が浮かび上がった。
「!? なッ??」
不意打ちに、驚きの声を漏らすアデルを無視するかのように。
愛が魔法陣を発動させた。
「これはーーッッ‼」
アデルの影が棒状に、着き上がって来た。
そして。
複雑怪奇に、曲がり曲がって。
鳥かごのような形になった。
がん!
ガガンッッ‼
「お前は何を考えているの?!」
鉄格子を掴み。
囲った愛に噛みつくようにアデルが声を荒げた。
「何を考えているだってェ?? ははは! どうだっていいだろう?」
意地悪く愛も、声を上げて笑い返した。
すぅ。
っぷ、っはー~~ッッ!
「俺たちゃあ、靄を封じる約束をしてんだよ」
すぅ。
っふ、ぅうう~~……。
「……--大とさ」
「てか。遅くないか?? どうすんのさ、アタシだって。いつまでも、こんなおっかない奴の相手したくないんだけど?」
舌打ちしながら愛が、苛立つながら出口に訊ねた。
「あの変態のおっさんも来るんでしょう?」
「……--いや。多分、江頭さんは来ないだろうな。来れないはずだ」
「あ、そっか!」
入江姉弟が呑気に話す中。
靄の勢力も復活するかのように、また視界を黒く塞いでいく。
「さすがに。暗いなァ!?」
出口が遺跡の天井目がけて矢を放った。
シュッッ‼
「確かにねェ‼」
愛が勢いのある矢の先端に魔法陣を浮かばせた。
矢が魔法陣を貫くと。
辺りが真っ白く、いや、鱗粉に近いものが浮く空間に切り替わった。
それは真っ黒な靄だったマサルの姿を変えたものだ。
「ほら。明るくなっただろう? 出口ちゃん♡」
「創り変えちゃうことなかったんじゃないのか? 姉さんよォ」
「爆弾の秒を止めるためさ。よくやったって誉めてくれたっていいんじゃねェの?」
すぅ。
っぷ、はァ~~……。
「はいはい。姉さんにゃあ、適わねェわ」
「姉だしな!」
「だな♡」
「イカれちまったのかぁ?! デグチ! メゴォ?!」
「っこ、のォ‼」
しびれを切らしたミウと、マーニーが。
二人目がけて飛び、魔法文字を書き。
呪文を唱えていた。
「次から次へと。本当にさァ」
「面倒だなァッッ‼」
出口が矢を放ち。
愛が魔法陣を発動させた。
どちらが、どう早いのか。
それは。
ほんの数秒の差。
「「っぎゃ‼」」
ミウと、マーニーが地面に落ちてしまう。
「「子供は大人しく見ていろよ」」
二人を嘲笑しながら入江姉弟が見下ろしていた。
いかに場面や、世界を変えようと。
舞台を踏んで来た二人にとって。
ミウも、マーニーも小鳥のように可愛いものだった。
「……お前たちは狂ってる! マサルを見殺しにするつもりなのか!?」
鉄格子越しに、アデルが叫んだ。




