第八十話 マサルの正体①
ガサガサ、と草を掻き分けていく。
マサルはいいが、その草は背丈があり。
出口や、他の仲間たちの身体を傷つけていく。
「った! ったったったった!」
その痛みと、なんとも言えない痒みに、
愛が声を上げる。
「おい! マサル、手前! 適当に歩いていたらーー」
しかし、声がしぼんでいく。
愛の目に、マサルの身体がが靄になっていくのが。
視えたからだ。
「--おいおい。マサル」
口をへの字にさせる愛の背中を。
ぼかん!
ぼっかん!
「った! あァ゛??」
振り返ると、叩いていたのはアデルだった。
ふるふる、と顔を左右に振る彼女に。
「あんだって言うんだよ! っち!」
愛が舌打ちをして、前を向いた。
(きっと。マサルは気づいていないわ。不安を煽っちゃ駄目)
しかし。
靄が益々、濃く溢れだしていく。
ガサーー……。
そして。
密林を抜けると。
そこにはーー《神殿》が在った。
黄金が朽ち、カビが、苔が。
眠っていた歳月を、見せつける。
ドックン!
ドックン‼
「? え??」
バクン。
バックンーー……。
高鳴っていく心拍数に。
マサルが自身の胸に手を当てると。
手から靄が溢れていくのが見えた。
「!? っな????」
手が薄くなっていくのが分かる。
慌てて、腕や足。
全身の視える場所を確認すると。
モクモク、と靄が溢れていた。
「っな、なんだよ! これはッ‼」
ジタバタと、暴れ始めたマサルに。
「っちょ! おい、マサル‼」
出口の身体が揺れ、後ろに倒れてしまう。
どっしーーん‼
「あ、っだ~~‼」
「俺、俺ッッ‼」
立ち上がったマサルが両手を改めて視た。
慌てて、そこを抑えるも。
効果もなく、溢れていく。
まるで、身体なんかないかのように。
「なんだって言うんだよ!」
声を荒げていく、苛立っていくマサル。
「おお、俺は……俺はッッ!」
「落ち着いて! マサル!」
背後から覆いかぶさる影があった。
それは。
ミウだ。
「ミウ……俺。俺はーーッッ‼」
「大丈夫だよ! なんの心配もいらないよ★」
「何がだよ……これは、心配しなちゃ、ダメだろう?」
適当に言っているようなミウに、マサルも言い返した。
強張った声で。
自身の身体が、軽くなっていく感覚に。
恐怖が、支配していく。
「俺は! 俺はッッ‼」
ーーオ主ハ、勘違イヲシテイルヨウダ。
「!? 誰だッッ‼」
--オ主ハ人デ在ラズ。
「誰だって! 聞いてんだよ‼」
どん! とミウを引きはがすマサル。
「マサルぅ~~」
尻もちをつきながら、ミウは情けない声を漏らした。
「神殿が、光っている!」
そんな彼女を他所に。
目の前の光景に、
「ここから、逃げて! マサル‼」
アデルが、大きな声で叫んでいたが。
マサルの身体が硬直し。
思考さえも止まっているかのようになり。
と。
そしてーーマサルの身体が黒い靄に変わってしまった。
真っ黒く。
禍々しく。
ーーオ主ハ我ラノ王! 破壊ノ神ノ御子‼
「「マサル‼」」
アデルとミウが彼の名前を呼んだが。
黒い靄になってしまったマサルによって、吹き飛ばされてしまう。
「っち!」
すぅ。
ぷっはァー~~……。
出口が煙草を吸い舌打ちをする。
「やれやれだなァ? 姉さん?」
「ああ。でも、ずっと。待ってたのかもしれない。手前と離れてから」
「ひょっとしたら」
「このときのために産まれたとかなしだぜ。死亡フラグにならァ」
「かもしれねぇな」
煙草の箱を愛に向ける。
愛も、煙草を咥えた。
出口の煙草越しに火を点け。
ふぅーー……。
「あとは。最後の希望を待とうぜ」
愛が目を細め。
宙を仰いだ。




