第七十九話 一寸先の○○
《御霊特急》の窓を。
ゴン! と烈が拳で殴った。
「手遅れになる前に、お父さん、行った方がいいんじゃないの?」
「分かってる!」
烈に凛が声をかけるや否や。
烈が、そう吠えた。
「お熱いこった。羨ましいねェ」
すぅーー……。
「俺には、分かんねェわ。情熱ってのは」
っぷ、はァああ~~!
そう煙と、言葉を。
保は烈に吹きかけた。
◆
ドタタタタ!
物々しい足音が廊下を走った。
そこはーー都築宅㏌実家。
「はははは、紫陽花ちゃん!」
笑っているわけじゃなく。
必死に、慌てている烈だ。
寝ている紫陽花を、起こしに戻ったのだ。
しかし。
すやぁ~~★
当の本人は、当然ながら。
起きる様子もなく、寝息を立てていた。
「起きて! ねぇ、起きていい子だから!」
「んぅー~~……」
しかし、やはり。
「起きないな。当然か」
「ま。子供だもんなwwww」
後ろから、保と凛も上がり込んで来た。
ズカズカ、とばかりに。
「時間がない。連れていけばいいだろォ?」
煙草を吐き出しながら、不機嫌に保が言う。
「そりゃあ、そうだwwww」
楽しそうに、保の頭で手を鳴らす凛。
「強行だ!」
「うん! 言われなくてもだよ!」
言われるがままに、烈が紫陽花を持ち上げると。
抱きかかえたまま、廊下を走った。
「マサル! 待っててくれ!」
◆
--アア。ヤット、面白イコトニナッテキタナ。ミュウヨ。
突き進みだしたマサルたちを。
遥か上から覗き込む。
趣味が悪くも。
そんなダカタに、ミュウも驚きを隠せないよう様子だ。
--ソウ、デスネ。ダカタ。
--? ドウシタ、ミュウ。スコシ様子ガ可笑シイヨウダガ?
疑惑の目を向けるダカタに。
--《ミッション・ウィンクノ夜》ヲ起コシテマデ、貴方ガ視タイモノハナンデスカ?
ミュウが、ここで問いかけた。
しかし。
ここで重要なーー《ミッション・ウィンクノ夜》なるものは。
ミュウも、ダカタも。
視たことも、経験もしたことがないことだった。
あくまで。
聞いたのだけに過ぎなかった。
他ならないーー
--世界ガ閉ジルノヲ視タイ。
--ダカタ! 貴方ハ!
それを知り得る者から。
--黒イ靄ノ者モ、ソレヲ望ンデイタ! アノ、マサルト名乗ル者ガナ‼
その言葉に。
--ソレヲ嫌ガッタノモ! マサルデス‼
ミュウが、遥か地上の。
その地下の。
マサルに、声を投げかけた。
ーーアノ人間ト、出会ッテイナケレバ! コノヨウナコトニハッ!
--イマサラノ話シジャナイカ? ナァ、ミュウ??
--ダカタ‼ !? ァ、ッグゥウウ‼
ミュウの身体が、ダカタにより吹き飛ばされ。
何か、小さな箱の中に。
閉じ込められてしまう。
--雌ガ。雄ニ逆ラウトハナ!
ついには。
ミュウの意識も途絶えてしまう。
一人残ったダカタは、
--サァ! 貴様ガ嘆イタ未来ヲ視セロ‼
強く、一際高い声で吐き捨てた。




