第七十八話 悲劇の入り口
ーーコッチダヨ。コッチダヨ。
空耳のようなものに、どうしてだか。
マサルも、
「出口サン、そっちじゃなくてあっちですって!」
背負った出口に、指示を出している。
翻弄させるマサルに、出口の額に青筋が浮かんだ。
ふるふる、と身体も揺れる。
「何? 聞いてんの??」
マサルも、踵で胸元を叩いた。
「--き~~ぃてるよぉ~~??」
ドスを聞かせた声を出す出口に、マサルも。
「じゃあ、まっすぐに進んでください!」
少し、興奮気味に指を前を指した。
そんな彼を横目に、出口も小声で。
「ったく、しょうもないガキだな」
鼻先で笑った。
◆
辿り着いた先は。
洞窟の中とは思えないほどに鮮やかに茂った密林。
小さな光る虫も飛んでいる。
「ぉおおう! あぁンん♥」
その光景を見たガーナの目が輝いた。
しまいには身体をぐねぐねと捩じらせた。
「やっとだよぉう! ほら、ほらぁ~~ん♥ あたしの情報に間違いなんかナッシング!」
そんな彼女に物p申すのは愛だ。
「お前じゃなく、マサルのお手柄だろう?」
「! っぐ、そそそそっ!」
ガーナの視線が泳いだ。
「おい。姉さん、めんどくさいから、その辺は気にすんなよ」
「だな」
愛も、大きく頷く。
「で、この奥に。どんな埋蔵金があんだってェ??」
口端を吊り上げながら、せせら笑った。
「いいねェ? 冒険にゃあご褒美はつきものだかんな!」
『触った人間の時間や、未来を予知出来るんだよ』
アデルはガーナの言葉を思い返していた。
とても、その言葉にーー恐怖を抱いたからだ。
(そんな遺物が……こんな、《遺跡》に)
それを。
先人が創り出したものを、今の、自身たちの掌に収まるか。
見つけてしまったところで、捕縛に成功はするのか。
ぎゅ!
アデルは唇を噛みしめた。
「--……ッ!」
「おい? アデル、どうかしたのか?」
そんな彼女を、出口の上から覗き込んだ彼が聞いた。
「具合悪くなったのか?」
「いいえ。大丈夫よ」
マサルに、アデルは顔を横に振った。
「それよりも。ガーナ、ここから先どういーー」
「書いてなーーい♥」
アデルが言い終わらないうちに、ガーナが言い放った。
そのことに。
その場にいた、マサル以外全員の表情が消えた。
「ぉおおう! ゃ、だって?? あるのはある。でもさ? こんな密林の中とか♥」
足を半歩後ろに下げながら、ガーナが言う。
そんな彼女を救ったのが。
「うんまぁ。地図ってのは道順。在処の先なんざ、あるわけないよな」
達観したマサルが、
「でも、俺たちなら見つけられるさ。お宝を」
耳元を抑えながら、声を聞くかのように。
「絶対に、見つけて帰ろうじゃないか」
しかし、その後。
帰ることはーー叶わなかった。




