第四十五話 獣人の娘
ここはーー《星屑の野菜》
「おい。最弱、帰っぞ!」
古い闘技場である。
寝そべっている都築に、入江が蹴飛ばしながら言う。
都築は、荒く息を吐いていた。
「はい」
そして。起き上がった。
「っは、ぁーー……」
愛とは未遂に終わった。
それは、こんな一言だった。
都築が聞いた言葉。
『あんたは! 愛サンは、好きでもない奴と寝れるのか?!』
愛の目が泳がせ、上着を羽織る。
『っじょ、冗談だっつぅ~~の! 真に受けんじゃねェよ!』
愛は、都築の額を弾き、身体を横たえた。
九死に一生を得た都築は、
『ぁ、っぶね~~!』
身体を震わせた。
ざわざわーー……。
「嫌な、風だな」
入江が空を見上げ、そうぼやいた。
起き上がった都築は。
「? そうですか??」
首を傾げた。
「ふん。子供にゃあ、分かんねェだろうさ!」
「--……年齢的に、俺のが年上なんですけどね」
笑い声が止まってしまう。
召喚された入江はーー19歳。
別時空の都築はーー26歳。
「生意気なことばっか言いやがってよォ~~! っこ、のォ~~‼」
痛いところを突かれたのか。
入江は、小学低学年並みの身長になった都築を、肩に乗せた。
「わ゛! っちょ! 出口サン!?」
突然のことに、都築も慌ててしまう。
そして。
そのまま、球技場を後にした。
一見すると。
都築と入江は親子のようだった。
「ぃ、いい加減に下ろして下さい!」
都築は入江の肩を叩く。
「!? ぃっで~~‼」
馬鹿力になった、その手で叩かれ。
入江は膝を下した。
「ふん!」
降りた都築は前を、突き進んで行く。
「おい! マサルちゃん! マサルちゃんってば♪」
その後ろから、入江がついて来る。
(ったく! 本当に……--出口サンなんだ! 俺の!)
都築の頬が赤くなった。
ったったった!
昼ということもあって、辺りに人は多かった。
入江のことばかり考えていた都築は。
異変に気付くことはなかったが。
前の人混みを掻き分ける様子があった。
「退いて下さい~~お願いですからぁ~~!」
掻き消えそうな声が聞こえ、前を向いた瞬間。
「っへ??」
ドン!
都築の軽い身体が、ふっ飛ばされた。
「ぁ、だ!」
「! ぼく。ごめんね!」
その人はーー獣人だった。
顔は、まんま犬の容姿。
髪は人間のようにあり、左右を縛っていた。
艶のある黒髪だった。
黒いローブをまとっていた。
「あ! おい、謝れよなァ! ったく!」
見惚けていた都築に。
「大丈夫か? マサル、腰打っただろう?? 平気か?」
入江が膝を折り、都築の身体に触る。
都築も「大丈夫」と漏らした。
見続ける都築の視線を、入江も追う、も。
すでに、彼女の姿はない。
「手前、動物好きだもんなァ」
そこに。
「追え‼ あの娘を探すのだァ‼」
黒装束の人間が、覆面をして走って来た。
十人近くいた。
「最悪、殺しても構わん!」
その言葉に。
「殺すーー……??」
都築が反応した。




