第四十四話 誘惑
「っと! おい! 待てって!」
都築は小さな身体を弾ませていた。
相手はーー入江出口。
弓を放っていた。
バシュ。
バシュシュ!
「交わせねェとおっちんでしまうぜェ!?」
「む、り、を! っと、ととと!」
都築の脛が、曲がってしまい。
身体が地面に落ちてしまう。
「っだ!」
そんな都築を見下ろす入江は、鼻先に、矢を刺した。
「はい。おっちんじじまったなァ」
「っく!」
都築が歯を噛み締めた。
◆
都築が目を覚ましたのは、またしても。
深夜だった。
「--……真っ暗だ、な」
ごろん、と横になると。
「っぐ、ぉおお~~!」
「!?」
いびきをかく入江。
慌てて身体を引くと、背中に柔らかい感触があった。
ゆっくりと、顔を向けると。
「っあ、愛、サン!?」
入江姉弟に挟まれる形で寝かされていた。
勢いよく、起き上がり。
出ようとするも。
「おい。勝手に起きるんじゃないよ」
愛に腕を掴まれ。
寝かせられてしまう。
「っひ!」
「いい顔しないで、寝ろっての」
「も、戻る! ソファーで寝る!」
強い力で、愛の腕から逃げる都築。
慌てて、ベッドから這い出た。
肩で息を吐きながら。
「っそ、そう言うわ、訳だから!」
そこに、
「ふぁ~~……目、覚ましたんかよ」
入江が、目をこすりながら起きた。
「寝てりゃあ、可愛いのに。寝顔とか」
「!? ぅ、っせ~~よ! 馬鹿なんじゃないのか‼」
「いい子にしてたら。特訓してやってもいいぜェ? マサルちゃ~~ん」
愛が布団を叩く。
来いとばかりに。
「守るためにゃ。まず、手前が強くなんねェとなァ」
都築は唇を突き出した。
(分かってんだよ! 俺だって! だから、だから、俺は‼)
アデルの顔を思い出す。
(だから、俺はッッ‼ っくそったれ!)
都築はベッドの中に戻った。
真ん中の特等席に。
ふかふか、と柔らかい感触に。
(ソファーのがいいな)
観念するかのように目を閉じた。
「掴まれたぜェ~~マサルちゃ~~ん♪」
「あ、っそ」
そっぽを向く都築の頬を掴み、自身に向かせる愛。
「本当に、可愛いったらねェなァ~~♪」
舌なめずりをする愛。
ぞぞぞぞ!
「でで、出口さささ、サンんんん?!」
悍ましくなり、都築は入江に助けを求めるも。
ぐお~~といびきをかいて寝てしまっていた。
「手前。童貞??」
下世話なことを聞く愛に。
「そうだよ!」
強く吐き捨てた都築に。
愛が跨った。
衣服を脱ぎ。
「ふぅ~~ん♪」
◆
「てか。手前、集中力なさ過ぎだわ」
矢を肩に担ぎ、そう吐き捨てる入江。
「よろよろ、しってっし。ったく!」
唇を噛み締める都築。
ここはーー《星屑の野菜》
古い闘技場。
よく、剣技や技を磨くために使われる施設になっている。
そこに、二人は来ていた。
「もう。今日は止めだなァ」
入江は、持っていた弓を消した。




