第四十三話 アデルの恋人宣言
「いい《遺跡》の物件あったっどー~~!」
満面の笑顔で、ガーナが家に帰って来た。
腕には紙が大量に抱かれている。
「聞いてよ! 聞いてよ~~ぅ♥」
前が見えないながらに、玄関から、ふらつきながら進んで来る。
通行人に突撃したのだろう。
紙には泥や、足跡がついていた。
「ガーナ!」
「?? どったの?? アデルちゃん?? あ、これ持って~~♥」
ガーナが差し出した紙を、アデルも持ちながら。
「どうしたも何も! デグチが!」
「?? だから、どったんだよ????」
首を捻りながら、リビングに着いたガーナ。
「何? あいつ、実は《警護員生》だったってオチ?? そいつぁ、厄介、な……こっ、て」
バサ、バササーー……。
「かわゆす……♥」
愛を見たガーナが、腕から紙を散らばされた。
「あん? 可愛いって、あたしが? 当たり前じゃん♪」
ひらひら、と手を振る愛の手を。
「あああ、あたしと結婚して下さい!」
勢いよく手を、ガーナが掴んだかと思えば。
求婚した。
「--……っは、はァ??」
「ひひひ、一目惚れって、ししし、信じますか!?」
「おい。出口」
「でな、マサル。あんな」
そっぽ向き、都築と話す入江に。
「いい加減に離れなさい。このホモ」
「っは、はァ??」
「マサルはおれの恋人で。夫になるのよ」
「--……はァ?!」
都築が入江から視線を逸らした。
「手前は、節操がねェなァ」
呆れたとばかりの入江の言葉に。
「手とか出してないから!」
都築が噛みつくように言う。
「あったり前だろうが。こんな幼女と、ハメようなんざ、鬼畜だよ。鬼畜」
「しないから! あー~~もう! お前なんか、出口サンなんか嫌いだ~~」
布団をかぶり、潜ってしまう都築に。
「よしよし。一回、ゆっくり寝ちまえよ。後は、そっからにしょうぜ♪」
入江が優しく背中を撫ぜた。
「--……ああ」
短く都築も応えた。
「ん。寝る」
◆
リビングで寝てしまった都築を、ガーナを入江のベッドに運び。
そこからがーー最悪の展開だった。
「おおお、お名前ををを、教えて下さい~~♥」
「愛だ」
「っほ、わわわ~~♥ いいお名前ですね~~♥」
愛が、入江を見た。
顔は引きつっている。
(知らんし)
入江は腕を組み、目の前に座るアデルを見た。
「マサルを諦めろ」
強い口調だった。
それにアデルも。
「お前もだ。デグチ」
「諦めるも何も。しつこく、ついて来るのが、あの馬鹿なんだよ♪ お嬢ちゃん」
「おれが《呪術者》だって、知っているのか?」
目を鋭くさせるアデルに、
「じゃあ、あたしが弟好きだってことも、手前はァ」
愛が背中に手を置き聞いた。
「知ってたりすんのかなァ??」
「ーー……メゴ」
指先を動かすアデルに、ガーナが手で押さえた。
「!? ……ガーナ、邪魔をするの??」
「っじゃ、邪魔する、その、つもりはぁ、ないんだけどぉ~~っね?」
大きくアデルは、息を吐いた。
「でも。おれはーーマサルを諦めないよ。デグチ」