第三十八話 ネクストルート0
愛って名乗るーー入江出口の姉が。
俺の前に飛んで来た。
そんおかげで、俺は助かったわけだが。
ポンコツと、メイレーの馬鹿な諍いも収まった。
「……--眠い」
だから、どうにも。緊張感がなくなって。
溜まらなく眠いっつ~~のに。
愛の奴が、話し始めた。
「これはね。過去にあった未来に繋がる物語なんだぜ♪」
如何とも、俺は興味もないし。
全く持って、関係がねぇったらないのに。
愛の奴には、それ自体が関係ないようで。
腹が立ったが。
助けてもらった建前、言えないだろう??
「んんん?? おい、起きてんのか? マサル」
「……--ああ」
「本当にか??」
「……--ああ」
「嘘くせェ~~どら」
そう言うと、俺を肩から下ろして。
向かい恰好になった。
「なんですか……起きてるんですがね」
少し、強調した声で言ってやる。
「そのようだな。安心したわ♪」
そして、また俺を肩にしょい込んだ。
ちょろいな。
このまま、寝ちまおう。
眠ぃし。
「君の知る《入江出口》と、今、居る《入江出口》は異次元の人間なんだ」
はい、きた。
一番、面倒な話しだ。
SFはあんま好きじゃねぇんだよな。
「かく言う、あたしだってそうだ。だって、そうだろう? マサルちゃん」
尻を手で持ち上げて、俺の身体を揺らす愛。
尻を触んな。
尻を。
「何が、ですかね?」
っち。
寝れねぇ~~ッッ。
「手前の居る世界に、あたしは居ないだろう? 姉って存在がさ」
「ああ。聞いたことがない」
眠ぃ~~ッッ!
俺は愛の肩に、額をつけた。
もう、限界なんですが。
「つまり。そう言うこった」
「……はぁ」
「でもって、今の《入江出口》は。手前の子供の頃の時空系列の人間だ」
知り合ったばかりの、頃の出口サンてことかな。
じゃあ、今の俺なんか知る訳ないのか。
子供の頃の俺の、出口サンじゃないのか。
「でもって、その《入江出口》の中の《入江出口》も、また然りさ」
俺には、本当に関係がないじゃないか。
「でも、最初は全部、決まっているんだ。必ず、そうなるようにセットされていたからな」
「?? --……誰に、ですか??」
愛が、少し黙った。
なんか言いたくないのか。
思い出したくないのか。
別に、関係ないけどな。
俺には。
「そう。手前もさーー都築マサル」
はぁああ?!
俺の目が見開く。
言ってる意味も、全く分からねぇのに。
俺を、巻き込むんじゃねぇよ‼
「なんで、俺が。巻き込まれるんだよ」
「なんでって、そりゃあーー……あの女と男に聞きなよ」
「?? だから、そいつらは誰だって言うんだよ」
「身近に居るんだからさァ」
意味深に言われることがムカつく。
俺はには関係がないってのに!
「だから! --……おい、愛……サン??」
俺の視界のあった、長い髪が千切れてく。
短くなってく。
丸みのあった肩も、角ばってくる。
細い腕が、太くなってく。
声も、低くなってく。
「あたしのお願いはさ。マサルちゃん♪」
愛が、出口サンに戻って行くのが分かる。
俺も、その状況に驚く。
「出口の傍に居てあげてよ♪」
愛の足が止まった。
「愛、サン??」
「『愛じゃねェし。ば~~か』」
「!? で、出口サン??」
「『ああ。なァ、マサル』」
「っは、はい!」
出口サンの声に、俺はビクついてしまう。
だって、声があまりに低いんだ。
怒っているみたいに。
「『勝手に、居なくなんなや』」
その短い言葉に。
俺は、何も言い返すことが出来ない。
でも。
「はい。ごめんなさい」
反省をしなきゃいけない。
だって。
俺には守らなきゃ、いけない奴らが居るんだから。




