第三十六話 愛、無双②
ここはミウの屋敷ーー《ボゾロイ家》
「君は何なんだよ! もう!」
「手前! 私たちの勝負に水を刺して、どういう了見だ‼」
ミウとメイレーが、愛に詰め寄る。
愛は机の上の本を払い落とし、そこに腰を下ろしていた。
そんな二人に、愛は鼻をほじりながら。
「お前らの愛、重いよ?」
そう吐き捨てた。
一斉に、都築を見ると。
頷きも出来ないため、強く瞬きをする。
「「……喜んでいるじゃないか‼」」
言葉を同調させた二人に。
都築の目も、大きく見開かれる。
信じられないものを見るかのように。
「--……ぅ、わぁ~~自己中心的ぃ~~」
愛も、蔑んだ目で二人を見た。
「ちった~~相手のことも考えなさいよ♪」
ミウが、
「なんなんだい! 君は部外者なのに!」
メイレーが、
「そうだ。手前が入る余地はねぇんだよ!」
それぞれが、愛に吐き捨てる。
ちゃ!
愛が弓を、ミウとメイレーに据えた。
距離的に、二人同時に射抜くことは可能だった。
「お嬢さん方? 躾てやろうか?」
真顔で愛が弦を引く。
「おお、お姉さん! 止せよ‼」
都築が慌てて声をかけた。
それに、愛も。
「はいよ♪」
弓を収めた。
◆
「で。仕事は結局ないのかよ」
腕を組み、床に正座する二人を見下ろす。
何故か、グレダラスも正座している。
「ばい゛」
ミウは涙目だった。
メイレーは屈辱といった表情に、歪ませていた。
「っは~~来るんじゃなかった!」
そう言い都築は立ち上がった。
こきこき、と肩を鳴らし。
「二度と、俺の前に現れんな! 二度とな‼」
息巻く都築の肩に。
「? 何??」
グレダラス、が強く掴んだ。
顔には。
約束を守れ!
と書かれている。
「何? お前もしつこいな」
ぎゅ! とさらに力が籠められる。
眉間にしわを寄せる都築。
ミウが、首を捻りながら見ている。
「つぅか。雇用主の前だぞ?」
都築が親指を立てて、ミウに向けた。
グレダラスも、表情を崩すも。
改めて、都築を睨む。
「……アレの程度なら、いいけどさ」
目を逸らして、首を顰めた。
「いや。ダメだ」
「!? っは、ぁああ??」
グレダラスは、都築の前に膝を下し。
顔を見上げた。
手は都築の脇と、腕にある。
「君のせいで発情してしまった」
強く、グレダラスに掴まれてしまう。
「って……ぉ、いぃ~~お前ぇ」
都築の腰が引けてしまう。
冷汗も、止まらない。
「あたしの弟の子分に、言い寄らないでくんない?」
そんな彼から、愛が都築を剥ぎ取る。
が。
グレダラスも、一歩も引かない。
「--君……」
愛に牙を剥こうとするグレダラス。
「邪魔、ですね」
「あぁん?!」
殺気を放つグレダラスに、愛も言い返す。
一色触発の事態に。
「おいおい! 止せって! 馬鹿‼」
都築は、頬を叩いた。
そして。
(~~……ったく!)
渋々、グレダラスの左目の瞼に。
軽く口づけをした。
それに、グレダラスは口をへの字にさせ。
「そこじゃない」




