第二十話 ミュウとダカタ
ここはーー《ホロスカ遺跡》なる《迷宮》
「っつ、ぁ゛ただただだ~~! こん゛の、馬鹿力‼」
入江が鼻血を垂らしながら、都築に詰め寄る。
「手前! 手前は馬鹿力の、制御も出来ねェのかァ゛~~ぁあ゛あ゛~~!?」
「俺が、制御してないように見える?」
冷淡に都築は、入江を見下ろして言い放った。
入江は唇を突き上げ、頬を膨らませる。
「お前。頭、おかしいんじゃない?」
都築も追撃の手を緩めない。
いがみ合う二人の間に、
「ツヅキ? おれの話しを聞いているの?」
アデルが参入する。
「……ああ」
少し、逃げ腰になってしまう都築に、入江が冷やかす。
「童貞と、処女の初めては痛いだろォ~~なァ~~!」
「~~……っっ‼」
◆
--ミュウ。分カッタ。
男の声が、女にミュウと呼んだ。
呼ばれたミュウも、
--良カッタ。貴方ナラ、分カッテクレルト思ッテマシタヨ。ダカタ。
ミュウも、男の名を呼んだ。
--問題ハドコマデ成長サセテルカデハナイカ? ミュウ。
--ソレハ、ソノ時ニ考エマセンカ? ダカタ。
ダカタは押し黙り、都築を伺った。
--アア。ソノ時に考エルトシヨウ。ミュウ。
--ハイ。ダカタ。
ミュウの声は、笑いを堪えるのに必死で、震えていたが。
ダカタは、気づく様子はない。
--デハ、転送魔法ヲ発動サセマショウ。
ヴォン。
ヴヴヴヴーー……。
◆
カカカカカカカカ!
都築の顔が、羞恥にあまり、真っ赤に染まった。
そして、手で入江の顔を掴もうとするも、逃げられてしまう。
「っち!」
「ツヅキ、力欲しくないの? おれを抱けば手に入るのよ?」
アデルが、都築ににじり寄る。
逆に、都築は半歩下がる。
力は欲しい。
もの凄く、欲しい。
でも、この少女をーー抱く真似は出来ない。
「欲しいが、その」
歳も、身体も幼いアデルに、都築は恐怖した。
真っ直ぐに、都築を見るアデルに、咽喉を鳴らした。
「お、俺じゃダメだろう。その初めてとかは」
「いい。いつかは破瓜するものだもの」
「……俺は、嫌だ」
「力、欲しいでしょ?」
「欲しいが、お前みたいな子供を抱く趣味は、俺にはない」
都築は、思ったことを正直に言った。
その言葉に、アデルは硬直してしまう。
だが。
すぐに、嘲笑した。
「おれ、こう見えてーー103歳なのよ」
都築は目を細め、入江を見る。
入江は、ミウを見た。
ミウは、アデルを見て言った。
「その子は《美麗魔人種》で、不老不死に近い種族なんだよ。その容姿が厄介なんだ。多くの彼らは、いたいけな少年少女で時間を自動的に止めるからね」
都築は、目の前の年上の幼女を見た。
冷汗が止まらない。
化け物を見るような目になってしまったのが、あからさまだったのか。
アデルが唇を突き出した。
「何? 年増は嫌なの? どっちなの??」
困った表情の都築にミウが。
「今日、会ったばかりなのに、無理強いは、よくないんじゃないのかい?」
都築を庇護するように言った。
「望んだのは都築なのよ?」
アデルも怯まない。
二人に挟まれる格好になってしまった都築は、げんなりとした表情になっていた。
「っが、ガーナ。道はどうなんだ??」
思い出したかのように都築は、ガーナの元へと逃げた。
「うわ! マサル??」
背中にいるミウも、声を漏らす。
逃げられる恰好になってしまったアデルは、都築の背中を睨んだ。
「え? 何? 逃げて来たのwwwwwツヅキってば。ウケル!」
手帳に顔を埋めてガーナが、身体を震えさせながら笑う。
「うっせぇよ! っち! で?! どうなんだよ!」
「うん。ぶっちゃけ、なんか調べてた《迷宮》が、いや《遺跡》を間違っていたようなんだよ! びっくりだ!」
引きつった笑顔を向けるガーナに。
「ポンコツ2号かよ!」