(「」噛み合わない地の文「」)
当事者の認識が恋人という関係性に変わったところで、大きく変わるところはそれほどない。
「━━━━の花火大会には何度か行ったことがある。他と比べると歴史は浅いが、それでも見応え充分で観覧客も多い」
週末などに二人で出かけたり、お互いの家にちょっとだけお邪魔したり。
「地元ではないが最寄りでは一番大きな花火大会だったこともあり、まだ幼い頃に、たぶん父と一緒に行ったのが最初だろうか。花火の印象ばかりが残っていて誰と行ったのか、いつ行ったのかは朧気だが。伯父に引き取られて一人で行ったのは確か受験の息抜きだったかな。何故か味気なく思ったのを覚えている」
二人並んで写真を撮ったり。
季節限定のアイスをシェアしたり。
出先でペア小物を見つけて衝動買いしたり。
「大菊、牡丹、椰子、八方と、これは柳。結構上手く撮れているだろう。あ、これは大口を開けて食いつくところのキミだな。やだ。消さない。キミだって同じような私の写真があるだろう。動画? いや動画は消さないかい? 消そう?」
お互いを撮影したり。
お互いの携帯から自分のそれを消そうと狙いあったり。
そんな姿を撮影したり。
「ところで学友が一人、先日失恋したらしくて。私にも別れてしまえなんて呪詛を吐かれてな。つい売り言葉に買い言葉というか呪詛返しをするつもりで、どうだ羨ましいだろうとキミの写真を見せつけごめん待って悪かった反省してるから動画再生はやめるんだキミはなんで人目があるところで私の動画を再生したがるやめて止めてやめて止めて」
いつものように手を繋いで、柔らかく降る先輩の声に耳を傾けている日常には、大して違いはない。




