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(「〜で」「〜を」などで続ける)

 

 しばらくして涙雨が止むと、いつものように言葉の雨が降り始めた。




「伯父は元々は画家志望だったらしい。

 伯父の父、つまり私の祖父にあたる人で今はもう鬼籍に入っている人なんだが、大反対されて法曹界行きを押し付けられたそうだ。

 結局はそこまでのやる気がなくて、ここの教授に落ち着くまでは結構紆余曲折があったらしい。私自身はあまり祖父との面識はなくて、母が電話越しに喧嘩しているのを聞いていたくらいしか覚えていない。祖父の葬儀が伯父と初めて会ったときで、母がいなくなる一年前くらいだから、私が八歳かな。

 伯父が何度目かの司法試験を受けた頃で」




 ベンチに背を預けた先輩が溜息をこぼす。変わらずハンカチで目元を抑えたままだが、声の震えや詰まりはだいぶ収まっている。




「私を引き取ることが、伯父が法曹界入りを諦めるきっかけになってしまった。本人は自分の実力不足だと認めないだろうけれども、私にはそう見えるんだ。

 それが、伯父の言う不要な縁なんだと思ったら、ごめん、ちょっと……苦しくなった。迷惑ばかりかけて、何一つとして報いられていないことが、不甲斐ない。伯父にとって不要な縁の私は……なのに何故、伯父は私を切り捨てないのかな。

 やはり本当は優しいからかな。

 正直、私は伯父の考えることはあまり良く理解できないんだ。尋ねて教えてくれる人でもないし。言葉を尽くせば尽くすほどお前の言葉は無駄だらけだと言われてしまって、でも言葉を減らせば減らしたで遮られて会話を打ち切られてしまうんだ。

 たぶん、私がこんな風に喋りたい言葉が定まらないのに口に出しているのは、伯父との関わりの結果なんだろうな。いやそれさえあの人にしてみれば無駄なことなのかもしれないけれども。

 それでも本当に感謝しているし、尊敬してもいる人で、だから全くやる気がなくても院に進む選択肢を優先していたんだけれども、結構そこにはお互いに壁を作って距離を測っているような人しかいないと気づいてしまった。

 手を握ってただ耳を傾けるような変人はいないんだよ。母もあの人も、そんなことはしなくて、それが当然だと認めたくなくて一人愚痴っていたのを」




 ハンカチで少し擦ったのだろう。崩れた目元の化粧の中で、少し涙ぐんだ瞳にこちらが映る。




「こんなふうに手を取られたら、私だって欲をかいてしまうんだよ」




 責任は取り給えよ、と拗ねたような呟きを溢して、先輩は笑った。






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