7話 反撃と上陸
明海元年 9月20日
唐国 西蛮逃湾上空 第一航空戦隊飛鶴所属 海軍第二一航空群 第二〇一飛行隊
初の実戦から五日後。
自分は今から唐国の北の大規模湾港である、広連港に対しての攻撃を仰せつかっている。
涼東半島は半島西部を坊海、南部を赤海、南東を西蛮逃湾が存在し、広連港はその涼東半島の先端に存在する港である。
涼東とは、近くに流れる涼河という河川の東にある地域と言う意味らしい。
広連港への攻撃は、五日前の、海戦の戦闘後に提案した、「砲弾を空中で放す」ことによって、地上に対してどのような効果があるのかを試し、効果を測ることも目的とされている。
使う砲弾は、飛鶴の自衛用砲である12.7㎝単装砲に用いられる砲弾である。
これは、着発信管……着弾によって爆発する信管で、尚且つその中でも瞬間信管と呼ばれる着弾による衝撃によって直ちに起爆する信管である。
この他にも信管の種類はあり、軍学校でも習ったが、これとさらに導火線を使う、時限式信管以外は忘れてしまった。別の物は、使う時にでも思い出そう。
そしてその起爆方式であるため、取り扱いには注意が必要である。
そんなに簡単に爆発するようなものではないが、強い衝撃を与えてしまうと爆発してしまうことには変わりない。
その信管の砲弾を広連港上空で放つ。
広連港は大規模な貿易を行っていたが、今は戦時とあり、平時に戻れば貿易を再開するだろうが、軍港としか使われていない。そのため、民間人に対して誤爆してしまう心配がない。
民間人への攻撃は、数十年前に帆蘭土王国はデン・ハークで結ばれたハーク陸戦条約によって禁じられている。
大浜綴帝国の近代化以前での大規模な戦闘と言えば、前「幕府」成立前であり、戦国時代と言われる数百年前の時代の話であり、その時代では小遣い稼ぎに百姓らが戦へと臨んでいたため、我が国ではそのような意識は低い。しかし、雄州ではそれ以上の戦いがあったらしく、その中で結ばれた条約らしい。雄州列強はもとより、独立戦争や独立運動に耽っている北銀連邦なども加盟しているらしい。浜綴は流れで入ったというだけらしいが。
というか、ハーク陸戦条約には唐国は入っていない。
彼らはその条約に批准していないためどんな手でも使ってくるだろうが、我々はそのようにはいかないらしい。
条約に加盟している国家は加盟していない国家に対しては特に何もしても構わないとは思えるし、そのうえハーク陸戦条約は「陸軍」に当てられた条約であったが、我々は海軍なのである。
しかし、加盟国の多くが違反であると言えば違反になる恐れがあり、場合によっては列強国から何を言われるか分からない。その為、我々はこれになるべく従うような行動を行わなければならない。
「ま、軍港ならその心配はないか」
空は少し涼しすぎるきらいがあり、それを紛らわせる為、思わず独り言が口から出てしまう。
「投下準備空域に到達!」
隊の一人がそれを叫ぶ。
「よっと……」
飛行機の中の荷物置きに置かれていた砲弾を担ぐ。
今の速度と高度を確認し、砲弾を落とす距離までどのくらいか確認する。
そして数分後。
「砲弾投下!投下!」
声を張り上げ、砲弾を投下した。
唐国 広連港
「あれはなんだ?」
「なんだ?俺は目が良くないから分からないぞ」
「そう言えば、あの負け犬共が何か言っていたような気が……」
「何を?」
「空飛ぶ何かが艦隊の攻撃の邪魔をしたって」
「あれは負けた将官達の錯乱した言い訳みたいなものだろう?」
「じゃああれはなんだ?」
「知らん」
港の軍人たちが話をしていると、突如として轟音が走り、水柱が昇った。
「なんだ!?」
「敵の軍船か!?」
「でも船は見えないぞ!」
「まさか……空のあれか!?」
「そんな訳……取り敢えず、港の軍船を全て出せ!これ以上軍船を失う訳にはいかない!」
「でも殆どの船の炉が温まっていません!」
「いいから出せる奴は全て港から出せ!」
「りょ、了解!」
同空域 第一航空戦隊飛鶴所属 海軍第二一航空群 第二〇一飛行隊
「目標、全て外した模様」
「了解。反転して二発目を投下する。着いて来い」
「了解。一番機に着いて行く」
ふぅ……そう上手くは行かないか……。そりゃそうだな。
「当該空域に再突入した」
「砲弾投下!投下!」
「投下完了」
「こちらも投下完了した」
「投下作業終了した」
「着弾を確認したのち、速やかに当該空域から離脱する」
「……二発着水。一発湾港施設に命中した模様。一発も当該湾港から離脱しようとする軍用艦と思しき艦に命中。湾港に大きな影響は見られず。命中した船舶は炎上し、行動不能に陥っていると見られる。以上、確認作業終了した」
「了解した。作戦終了。当該空域から離脱する。お疲れ」
「了解しました。お疲れ様です」
唐国 広連港
「離脱した船が燃えているぞ!」
「あの船沈むんじゃないのか?」
「港の方も第二区画が木端微塵になっちまったみたいだ。水兵も何人か死んじまったみたいだぞ」
「あいつらは一体何だったんだ……」
「さあな。兎も角、あれらは敵だったということ、負け犬共の証言がただただ錯乱した時のものではないと考えなければならんくなったことだ」
「そう言えば、船は出さなくていいのか?どこかの将官共が、出せ出せと急かしていたのに」
「そう言って出した船が爆発して燃え上がったんだ。今度は絶対に出すなとのお触れだ」
「なるほどな」
西蛮逃湾 大浜綴帝国海軍 第一航空戦隊飛鶴
前衛の群鶴基地所属艦隊を通り過ぎ、臨時の瀬保基地所属艦隊である、第一航空戦隊の船に戻って来た。
「湾港に命中が一、船に命中が一か。全八発ならなかなかに命中が高いかもしれないが、船は行動中だったのか?それによってまた今後、砲弾投下をするかどうかの評価が変わってしまうのだが」
「行動中でした。船は急いで出したのか煙突からは黒煙がモクモクと上がっていました」
「その言葉に嘘偽りはないな?」
「はい」
「分かった。とはいえ、まだまだ情報が必要である為、今からも繰り返し出撃し、湾港施設、及び敵船舶等の破壊を行え」
「了解しました。では今から砲弾を再び持ち出し、出撃します」
「そうしてくれ。再度言う様だが、くれぐれも気を付けてな」
「もちろんです」
「あ、あと一つあるのだが……」
「はい?」
「次の投下の後は出撃しなくていいぞ。船が主砲攻撃圏内に入るからな。空から間違えないようにだ」
「分かりました。では次の投下も速やかに行います」
そして、再び空に上がった。
唐国 広連港
「まただ!また空の奴が来たぞ!」
「今度は何をしに来たんだ?」
「暢気なこと言ってんじゃねえ!船に戻るぞ!」
「船って……動いてない船は的だと思うが……」
「さっきの攻撃で動いている船と港がやられただろうが!だから当たってなかった動いてない船に行くんだよ!」
「そうか、なら俺も行くか……」
「急げ急げ、きっと奴らは攻撃を待ってはくれないぞ!急げ!」
「分かってるって……」
広連港上空 海軍第二一航空群 第二〇一飛行隊
今度は少し遅らせるか……さっきは全て海に落ちてしまったしな。
「隊長?砲弾、落とさないんですか?」
隊員の一人が聞いてくる。
「少し遅らせる。さっきは命中せずに大分手前で落ちてしまったからな」
「了解しました。隊長が落としたときに俺らも落とします」
「ああ」
数分後。
「そろそろ落とすか……投下!」
「投下!」
「……今度は陸に落ちましたね……」
「ま、当たらないよりは良いだろう。それに、軍港には当たったんだ」
「そうですね」
「ではしばらくしたら反転して、再び投下を行う。次の攻撃で今日の投下は最後だ。気を引き締めていけ!」
「「「応!!」」」
唐国 広連港
「やっぱり港を狙っていたのか!」
「船に当たったのは偶然か?まあいい。奴らの狙いが分かっただけでも良い。皆、船に乗れ!動いていなくても良い!奴らの狙いは港だ!早く乗るんだ!」
「灯台から連絡です!」
「なんだ!?」
「浜綴国の物と思われる船舶が見られました!」
「やはりか……動ける船は奴らの迎撃に当たらせろ!帆船でも構わない!奴らを港に入れるな!」
「分かりました!連絡します!」
「急げ!あと翠島の港と、天心の港にも援軍を送るように伝えろ!」
「了解!連絡用の帆船を一隻出します!」
「そ、空から奴らが来た!!!」
「砲と銃を使って撃ち落とせ!」
「奴らも何か落としていったぞ!」
「多分爆弾だ!逃げるか船に乗るかしろ!」
そして爆発音が轟く。
「どこに落ちた!?」
「港だ!近くに帆船があったぞ!」
「やっぱり奴らは港を……!」
「船は大丈夫か!?」
「なんとか大丈夫そうだ!帆や船体に燃え移ってはいないぞ!」
「他は大丈夫か!?」
「もう一発が港のどこかに落ちたみたいだ!その他は海に落ちたとよ!」
「空の奴らは!?撃ち落とせないのか!?」
「駄目だ!もう既に飛び去って行ってしまった」
「……あ!て、敵の船だ!軍船!」
「何だと!?」
「港に残っている砲台に人を寄越せ!邀撃させろ!」
「船は?」
「出せる奴は出しているだろう?それよりも、港を守れ!」
「敵の軍船も撃ってきたぞ!」
「この速さだと援軍が間に合わないぞ!」
「まだだ、敵はまだ射程に収めていない!敵の砲弾は港よりかなり遠方に着弾している!できる全ての迎撃の方法を考えて、準備しろ!」
「敵の軍船は全て装甲艦です!港の迎撃装備は大砲以外には重弩以外ありません!重弩では敵の装甲は……」
「何でもいい!迎撃をしろ!敵の足止めさえできればそれでいい!」
刹那、再び彼らにとっての敵からの砲弾が炸裂した音が聞こえた。
結果、涼東半島に大浜綴帝国海軍は上陸し、さらに後から来た同陸軍による制圧がなされ、広連港はもとより、翠島港と天心港が制圧され、それらの間の全ての港も大浜綴帝国のものとなり、端の広連港と翠島港から二つずつの小さな港町も大浜綴帝国のものとなった。
また、この戦いで飛行機の存在が公になったことで、浜綴と国交を有する全ての国家から飛行機の提供が求められたが、浜綴は検討の意思を示し、最終的に、現在の海軍を基とした大成帝国、鎖国政策以前から国交を有する帆蘭土王国には一機ずつの提供がなされ、陸軍を基とした浮蘭詩王国、帆蘭土王国以外の雄州の国との国交開設をするに至った理由の国である、北銀連邦には一機ずつの輸出がなされた。
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