41話 各地にて、各地の話
明海七年 六月 大成帝国 首都マッドフォート
「見て下さい!あの大空を翔る翼を!」
この土地で、早風、太刀風を浜綴から輸入し、さらにライセンスを取得し、ライセンス生産が始まり、そしてそれらを模倣して造られた、国産の飛行機が飛んでいた。
「我ら、王立海軍は陸軍とは異なる、空の力を手に入れるに至り、そして今、自国に於いてその力そのものを作り出す能力を得たのです!」
会場は湧き上がる。
「飛行機同盟提案国であり、我らが王立海軍に飛行機を提供してくれたヒンテイには、感謝を示すとともに、これからはやがて我々が『飛行機先進国』、いや、『航空列強』となるべく、この飛行機同盟を強く支持します。そして、今現在首都を飛んでいる“hawk”、これらからなる航空偵察部隊を海軍に結成することを、ここに宣言いたします!」
この日、大成帝国王立海軍に於いて、初めて飛行機を運用する、航空部隊が結成された。
また、この海軍士官が発した「航空列強」、“Air Great Power”は、全世界で意識され、飛行機が提供、輸出されなかった国家、航空機の運用実績のない国家においても強く意識させられる言葉となった。
同月 浮蘭詩王国 首都ルートティア
「成国は航空部隊を軍に設立したそうです」
「そうか。我が国も設立したいところだが、未だ研究開発は進んでいないようだからな……」
「ええ、後年に輸入したものも、彼らが研究のためにと接収していきましたし」
「王立技術院に研究させているが、彼らはいつまで掛かるものだね?一号機が納入されてから、もう何年になる?」
「6年といったところでしょうか?」
「長いな。既に成国は自国産の航空機だって持っているというのに」
「しかし、一号機については二号機から六号機を納入するまでに失われていますから、それまでの情報さえ失った状態でしたし」
「だからといって、複製すらままならないとは一体どういうことだ?私は自国産航空機を作れと言った覚えはないが?」
「彼らは行き急いでいるのかと。それに、オーリヴェルジ連邦共和国から来たとか言う、期待の新人を捕まえたと言っていましたし」
「はぁ……取り敢えず、今年度までに複製位は可能となっている状態にさせろ。そうでなければ予算を下げなければならない。これでは煤浮同盟を解消して飛行機同盟に加盟した意味がないではないか」
「分かりました。そう伝えます」
「全く……これでは成国のほかにも航空機を得た列強、いや、準大国の国家にすら追い越されるかもしれんと言うのに……」
同月 北伊銀出連邦(North Iginda Federation) ノースローリー州(North Raleigh)
某市 Whight自転車店
「なあウィルバー兄さん、この新聞見て見ろよ」
「なんだよ、オーヴィル」
「見出しにでっかく書かれているだろ?」
「何々……『世界初!空気より重い航空機、“飛行機”、飛行見学会、リッチモンド州、州都リッチモンド(Richmond)にて開催!』ねぇ……。確かに面白そうだが、遠いんじゃないのか?隣の州だし」
「東海岸に来てるってだけでも珍しいのに、そんなこというのかよ」
「確かに今まで西海岸にしかなかったし、珍しいがな……やっぱり店のこともあるしなぁ」
「母さんが死んで、親父が落ち込んでいたときは収入を減らさないように一日たりとも休まなかったけど、もういいだろ?十年もの間、一日たりとも休んでないんだ。たまには数日店を開けたって、誰も文句なんか言うかよ」
「はぁ……分かったよ。で、飛行見学会とやらはいつあるんだ?」
「えぇと……来月の15日から三日間だね」
「なら、その前後の一日を移動時間にでも当てて、見に行くか」
「この話、ルクラン、ローリン、オーティスにアイーダ、キャサリンにも話しておくよ」
「分かった。親父には俺から話しておく」
北米連邦のとある自転車屋を営む7兄弟が、この後、この飛行見学会に感化され、自ら誰の手も借りず、航空機用エンジンと機体を作成し、北銀連邦初の完全自国産航空機の開発に成功することになる。
同月 藩泥流帝国 首都ベアリーン とある場所
「これが例の……」
「はい。これを誰にもバレずにここまで持ち運ぶのは苦労しました」
「ご苦労だったな」
「有り難きお言葉。こいつを駄目になっていない接合箇所を態々彼の国の規格のドライバとスパナを手に入れて、分解して運びましたので、そちらの方もどうか経費として落として貰えると助かりますが……」
「いいだろう。領収書はあるのだろうな?領収書がないと落とせないぞ、流石に」
「あります。こちらに」
「うむ。後で財務部に行くと良い。ここまでの任務遂行、誠に大儀だ。後の帝国の誉れとして、貴様の名は刻まれるだろう」
「有り難き幸せ!」
「下がって良いぞ」
「ハッ!それでは失礼します」
「……これで、大きな後れを取る心配は無くなったな」
同月 煤羅射帝国 とある場所
「これが……そうなのか」
「ええ、我が国に今までなかった、空への翼」
「よもや王族に知られてはいまいな?」
「勿論です」
「知られてしまえば首が飛びかねないからな、物理的に」
「冗談になってないですね」
「冗談じゃないからな。唐と浜の力を元にしているとな」
「我々はその情報に意識を受けて、一から作ったことにでもしておきましょうか」
「所詮は皇帝の自負に掛かるだけの話だからな。ほぼアレを複製しただけだが、それでもいいだろう」
「まあ、そう祈るしかないだけでしょうけど」
「云うな云うな」
同月 唐国 (臨時)首都 重京
「なんとか無事にこれを運んで逃げ落ちることができたな」
「今思うと全く以って奇跡以外の何物でもないな」
「まあ、欲を言えば落ちていた三つ全て持っていたかったがな」
「まあ欲を出しても、三つなんて運ぶ手段がそもそもなかったし、あの二つを渡してしまって結果として良かったような気がするけどな」
「確かに、三つ全て持っていたら、途中で賊か小浜綴の奴らに襲われていたかも知れなかったからな」
「運が良くても、奪われていたことには変わらないかもしれないからな」
「取り敢えずこれをバラして、この技術を超える技術を手に入れて、いつの日か、小浜綴に明け渡した遅れと首都燕京と港を取り戻してやる!」
「勿論だ、そして奴らには我らが味わった以上の苦渋を小浜綴共に味わわせてやる」
同年 7月18日 大浜綴帝国 高須賀 相坂家
「ソウ言えバ、倉田サンの結婚カラ、今日デ丁度二ヶ月デスネ」
「そうだね」
「ワタシモいつか、あのような結婚式ヲ挙げてミタイですネ」
「……いつか、できるといいね」
「浜綴ノ女性ノ結婚可能年齢ハ16歳なのデ、あと4年か5年くらいですネ」
「そう……なるな」
「ソレまでに、慎太郎サンにオ似合いナオ嫁サンに相応しい女性に成りたいデス!」
「頑張って……ね?」
今や自分とアイナ結婚するということは、もはや決定事項であるということなのだと、程度の諦めが自分の感情に現れてきていた。
「相応しいとイエバ、今日、女学校デ飛行機乗りニなる為ノ試験ヲ受けるコトがデキル様になるラシイデス」
飛行機乗りになる為の資格試験。
これは、事業用操縦士、定期運送用操縦士、准定期運送用操縦士、自家用操縦士、そして自分が取得している特殊操縦士の資格がある。
この中で一般のものは上の四つ。
軍用は特殊操縦士免許のみである。
これは現役の軍人なら自家用と事業用の中間免許であり、退役後は自家用と同等のものとなる。
因みに退役後、事業用操縦士になるにはその試験を受けなければならないが、一部試験を免除される。
そして、特殊の中でも三つあり、一つは一種。
これは新規で取るためのもの。
次に二種。
これは上記の四つのどれかを持っていたら、一部試験及び実技が免除されるもの。
そして特殊。
これは操縦士資格制度が成立する前から操縦試験員や軍役で操縦していた者、つまり自分たち、実技を免除された者たちのことである。
数年前に新たに成立した時に、特殊操縦士免許(特殊)というものを取らされたのである。
この通称“特々”は、自分は勿論、さらに陸海軍、技廠、政府の人間を全て合わせて百数十人しかいない。
何気に珍しいものだ。
閑話休題。
「そんなことを高須賀の女学校ではやっているのか」
「私モ一応ハ留学生と言う扱いデスシ、アノ女学校デハ、進ンだコトをやるノニ躊躇イが少ナイノダと思いマス」
近年、軍学校以外でもそういった資格試験取得に動きを見せている中学校やら大学やらの話は聞くが、まさか女学校でも行われていたとは。
……そういえば、新聞でも書いてあったような。
「そういうことなら納得がいくね。どの免許が取れるんだい?」
「一般ノ資格ハ全テ取れるラシイデス。他にモ、整備士や通信士、機関士、航法ノ、航空士ナドノ資格試験モ受けるコトが出来マス」
「なるほど。アイナはどれかを受けるつもりなんだ?」
「ハイ!合格スレバ資格試験料金が免除サレルノデ、一通り受けテミルツモリデス!」
「……全部の操縦士資格と、他の航空関連の資格も?」
「ハイ!」
「ハ、ハハハ……頑張ってね……」
そんなに受けて大丈夫なのだろうか……。
アイナは要領は良いのだが、それでも少し心配になった。
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