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世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
二章

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83/91

実験体

「う……上だぁ―――――――っ!!」


 上空の魔方陣から、一斉にドラゴニュートが降ってきた。

 全身を光沢のある黒い鱗に覆われ、大きく裂けた口からは鋭い牙が覗いている。

 縦長に開いた金色の瞳孔が、まるで降り注ぐ流星群のように煌めいていた。


「に、逃げ場がねぇ!」

「か、壁を背にするぞ! 全員でこっちを叩け!!」

 桐谷が大声で叫ぶ。

 だが、その瞬間、まるで桐谷をあざ笑うかのように、目の前に魔方陣が並んだ。


「クッ……!」


 そうしている間にも、空からドラゴニュートが降ってくる。

 わずか数分にも満たない間に、この部屋は地獄と化した。


「上等だ……ぶっ潰してやる!」


 ―――――――――――――――――

  HP:94(+2444)

  MP:1033(+8548)

 ―――――――――――――――――

  憑魔:ブネ

  

  ・魔素執刀(マナ・オペレート)

   切開、切除、縫合、思いのまま(MP1000/時間)

  

  ・再構築(リビルド)

   ブネ家所有の実験体を(フィールド)に再構築する(MP300/体)


  ・■■■

   現LVでの使用不可

  ・■■■

   現LVでの使用不可

  ・■■■

   現LVでの使用不可

 ―――――――――――――――――


 よし、俺のMPはほぼフルで残っている――。

 ぶっつけ本番だが、ブネのスキルでこっちの頭数を増やす!


『全員どいてろぉ! ――――再構築(リビルド)!!!』


 そう叫んだ瞬間、(フィールド)に複雑な多重魔方陣が展開された。


「な……なんて美しさなの……この魔方陣は⁉ い、いったい」

 モリーナが呆然と立ち尽くす。


『――実験体(モルモット)が私の実験体を呼ぶか……ククク、面白い』

 ブネの声が聞こえた。


 魔方陣から現れたのは異形のキメラだ。

 獅子の頭部、竜の身体、大蛇の尾、それだけではない、昆虫の身体を持つ者もいるし、全身が軟体のような化け物までいた。


「これがブネの実験体……」

『さあ、遠慮は要らぬ! 思う存分使ってくれたまえ、私の最高傑作たちを!』


「よし……お前ら、好きなだけ喰らいやがれ!」


 再構築した20体が、一斉にドラゴニュートに襲い掛かる!


 獅子頭のキメラが腕を振ると、ドラゴニュートの頭が簡単に吹き飛んだ。

 回復する間もなく、隣に居た軟体生物が胴体を取り込み消化してしまった。


 また一方では、全身が剣に覆われた山嵐のような、最早生物らしさの欠片もない実験体が上空に飛び上がり、ドラゴニュート達を串刺しにした。


 圧倒的なまでの力……そこら中で断末魔が飛び交う。

 あれほど手こずっていたのが嘘のようだ……。

 最早、ドラゴニュートは実験体達の捕食対象でしかない。


「ひ、ひぃぃ! 何だこの化け物は⁉」

「に、逃げろ!」


「せ、瀬名! 何だこれは⁉」

 桐谷が俺に向かって叫ぶ。

「まあ、そこで大人しく見てろよ」


 石像の持つ宝珠が光る度に、ドラゴニュートを召喚する魔方陣が展開されている。


「まずは、あれを潰さねぇとな……」


『――魔素執刀(マナ・オペレート)


 視界が赤く染まる。

 こりゃすげぇ……さすがレベルSダンジョン、魔素濃度が桁違いだ。


 ――俺はイメージする。

 強く、鋭く、しなやかで、何物をも切り裂く……剣を。

 イメージに合わせて、俺の手に集まった魔素が剣の形となり凄まじいオーラを放った。


「な、何だその剣は……お前は一体……」

「ククク……桐谷、お前がそんな顔を見せるとはな」


 石像に向かって飛び、俺は宝珠を一閃する。

 赤光の筋が走り、宝珠は二つに分かれた。


「オラオラオラ―――――ッ!!」


 その勢いで無茶苦茶に切り刻むと、石像は崩れ落ち、ドラゴニュートを生む魔方陣も消えた。


「よぅし、後は残党狩りだ! ぶっ殺せ!!!」


 俺の言葉で、メンバー達の目に光が戻った。

「う、うぉおおおおーーーー!!!」


 状況は一変し、攻撃に転じる。

 全員で残ったドラゴニュートを狩りまくる。


 最後の一体は俺が真っ二つに切り裂き、ご褒美代わりに軟体生物にくれてやった。


 *


「ヤベぇぞこりゃあ……地獄かと思ったが天国だ!」

 そこら中に散らばる魔石を見て、石丸さんが鼻息を荒くする。


「見ろよ⁉ この魔石の美しさを……かぁ~竜系はやっぱモノが違うぜ!」

「全部一緒に見えるけどね」

「おいおい、まったく、戦闘以外はまるで駄目だな……」

 石丸さんが信じられないという目で俺を見る。

「そうですかねぇ……」


 その時、桐谷が近づいてきた。

「一応、礼は言っておく……」

「……そりゃどうも」


 しばらくお互いに目を逸らさずにいた。

 崩れた石像の前にいたメンバーから声が上がった。


「桐谷部長ーっ! 通路があります!」


 二人で駆け寄ると、残骸の向こうに奥へと続く通路が見えた。


「よし! 石をどけろ! 準備が整い次第、奥へ進むぞ!」

「「はいっ!」」


 *


 洞窟を覗き込むスナイダーがニヤリと笑った。

「見つけたぜ……、おいクロ、泉堂にメッセージを入れろ、『ちょっとスナイダーさんと遊んできます』ってな」


「ちょ、無茶言わないでくださいよ! あの桐谷もいるんですよ⁉」

 そう言った瞬間、黒田の身体が浮く。


「チチチ、わかってないねぇ……、日本にいるS級は全部で9人だ。その内、泉堂、宮應はいない、クレディの鵜九森もいない、アヴァロンの3人もいない、なら、中にいるのは何人だ? Am I making sense?」


「く、苦しいっす……」

「な? 桐谷兄弟と、九人目のガキだけだ」


 黒田がスナイダーの手をタップすると、スナイダーがポイッと手を離した。

 地面に落ちた黒田は喉を押さえて咳き込む。


「オホッ! オホオホッ! ど、どういう意味っすか……?」


「たかが日本のS級が三人だろ……? OKOK、何も問題ない、俺なら全員潰せて皆ハッピーってことさ」

 スナイダーは笑って肩を竦めた。


「もう嫌……誰か助けて……」

 黒田が天を見上げ、小声で呟いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 計算違いと計算違いの掛け算。 このカオスは楽しみで。 しかし、偶然か神様の所の修行の縁か、しっかり召喚術を使うことになってニヤニヤしてしまいました
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