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世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
二章

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ノイズ

「森……?」


 ポータルを抜けた途端、目の前に広がる樹々と酷い湿気が肌にまとわりつく。


「ボーッとするな! 早く憑魔しろ!」

 桐谷の鋭い声が響いた。


 腰を落とし、戦闘態勢を取る桐谷。

 手にはうっすらと光りを(まと)った、銀色の剣を握っている。


 桐谷は……剣士なのか?


『グルルル……』

 木陰から、地鳴りのような唸り声が響いていくる。


 剣を構える桐谷のすぐ後ろに小鳥遊が控え、その右斜め後ろで詠唱を始めたモリーナが、透明な宝珠(ほうじゅ)が付いた魔術師用の杖を構えて、魔法を発動させる準備を取っている。

 俺は石丸さんとアイコンタクトを交わして、少し離れた茂みに身を隠した。


『――ソロモンズ・ポータル!』


 空間に黒い穴が開く。


『――来い! アス……あれ?』


 ―――――――――――――――――

 〈召喚可能悪魔一覧〉

 ・アスモデウス

 ・アンドロマリウス

 ・ブネ

 ・■■タ―――

   ・セーレ

 ・アム■2s■キアス  ――

      ・オ――

 ・ア■h■

 ・■6カロル

■ナック

 ・マ――シ×ス

 ・  バルy うぇトス

・パイ■ ン――

 ―――――――――――――――――


 一瞬、召喚可能悪魔一覧に、ノイズと共に何かが表示された。


「なっ……⁉」


 だが、瞬きをした瞬間、何事もなかったかのように元に戻る。

 ―――――――――――――――――

 〈召喚可能悪魔一覧〉

 ・アスモデウス

 ・アンドロマリウス

 ・ブネ

 ―――――――――――――――――


「……な、何だったんだ、今のは⁉」


『グガァアア―――――――――!!!』


 凄まじい咆哮(ほうこう)

 マズい! 早くしないと!


『――来い! アスモデウス!』


 ポータルの闇から、黒いニーハイブーツが見えたと同時に、妖艶なオーラを放つアスモデウスが姿を見せた。

 蝙蝠のような黒い翼を広げ、白金の美しい髪を(なび)かせながら、赤紫色に光る瞳で俺を見つめた。


『おぉ……主よ、会いたかったぞ……さぁ、どうしてくれよう? 攻めか、受けか?』

「え……」


 攻めか受け……ちょ、それって……。

 ど、どうしよう! あぁー! 時間が無いし!


 俺が狼狽えていると、アスモデウスが俺の耳元で囁く。


『はぁ……ご主人様……せつのうございます……あぁ……早く、我をいじめてくださいませ……♥』

「ちょ⁉ そ、そんな……」


 潤んだ瞳、微かに震えながら顔を上気させて俺に寄り添う。

 アスモデウスから漂う淫靡(いんび)な薫りが、たまらなく俺の衝動を掻き立てた。


「あ、アスモデ……」


 抱きしめようとした、その時――!

 俺の頭を両手でガッと包むように掴む。


「な、何を……⁉


 蟲を見るような目で俺を見つめ、舌舐めずりをする。

『主よ……どうして欲しい? ハァ……♥ このまま快楽の海に沈めてやろうか……? ン~♥?』


 突然豹変したアスモデウス、まるで盛りの付いた雌猫だ。


『さぁ……攻めか? 受けか? 言うのだ! さぁ、早く!』

「せ、攻めでお願いします……」


 そう答えた瞬間、アスモデウスはパッと俺の髪から手を離した。

 すると突然、嘘みたいに大人しくなる。


『ご主人さま……♥ ご、ご命令を……くださいませ……♥』


 ぷるぷると唇を震わせ、物欲しそうな瞳を向ける。

 クッソ可愛い顔で言われると、自分の中の何かが吹っ飛びそうになる。

 だが、時間がないんだ……!

 クソッ! 俺だって男だ、もうちょっと楽しみたいのに!!


「ごめん、アスモデウス、でも……時間が無いんだ!」


 俺はアスモデウスに唇を重ねた。

 アスモデウスは目を開けたままで、舌をねじ込んでくる。

『はぁ……主は意気地無しよのぉ……ハァ……ハァ……ング、んはぁ……♥』

「ん……」

『人間の女では味わえないような……ハァ……んふっ、極楽を……見せて、レロ、ん……♥やろうと思うたのに……ん……』

 し、舌が犯される!

 や、焼ける! 脳が焼ける……!


「く……来る……来た―――――――――――っ!!!」


 ふぅーっ! ガンガンに目が冴えてる!

 身体に重さを感じない!

 感覚が研ぎ澄まされ、辺りの状況が手に取るようにわかる……。


 相手は……一体か。

 かなり大物だな。だが、魔物の息が荒い。

 へぇ、桐谷が押してるな。


「よっしゃ、ぶっ殺しにいくか!」

 俺は茂みから飛び出し、交戦中の桐谷と魔物の間に入った。


「せ、瀬名か⁉」

 桐谷が驚きの声を上げる。

 まあ、初めて見たらそういう反応になるわな……。


「待たせたな。あぁ、それと……、ダンジョン内での呼び捨ては許してやる」

「……⁉」

 桐谷は言葉に詰まり、戸惑っているようだ。


「やった! 瀬名さぁーん! そんなのやっちゃって下さーい!」

 大声で叫ぶ小鳥遊、どうやら憑魔した俺が気に入っているらしい。

 ま、どうでもいいが。


『グオオオォォ――――――――!!!!!』


 咆哮の音圧で鼓膜が震えた。


「ったく……うるせぇな……」


 立ち上がって俺を威嚇する黒毛に覆われた熊のような魔獣。

 5メートルくらいあるんじゃないか?

 金色の眼、黄色い牙、吐く息は悪臭を放っていた。


「気を付けろ! そいつは覇王熊だ、並の攻撃は――」

「ぬぅんっ!」


 ――ズドンッ!

 俺は熊を殴り倒した。


 地面が円形に(えぐ)れる。


「な……⁉」

「クックック……これくらいで終わりか? あ゛ぁ?」

 俺は熊の上に飛び乗り、頭部に手を翳した。


『……黒炎弾!』


 ゴウッ! っと黒い炎が噴き上がる。


『グォオオオオオ――――――!!!!』


「ヒャ――――ッハハハハ!!! 燃えろ! 燃えろ! 焼き尽くせ!」


『……黒炎弾! 黒炎弾! 黒炎弾! 黒炎弾! 黒炎弾! 黒炎弾!』


 空中に飛び上がり、熊目掛けて黒炎弾を連発でぶち込む!

 あっという間に、獄界の黒炎が熊を包み込んだ!


「さ、下がれ!」

 桐谷達がその場を離れる。


「終わりだぁ! 死ねぇェエェェ――――!!!』


 覇王熊の中心に膝蹴りを落とす!

 ――――ドォンッ!!!

 周りの木々が揺れる。


 地面に空いていたクレーターがグワッと二回り大きく広がった。

 足元の覇王熊は、真っ二つに分断され、頭部は消し炭となっていた。


「瀬名さーん! やりましたね! やっぱ最高です!」

 小鳥遊が満面の笑みで駆けてきた。


「おぅ、おっつー」

「かぁ~、こりゃ魔石も燃えちまってるかも知れんな……」

 石丸さんが困り顔で頭を掻いた。


「それが……お前の憑魔という力か?」

 近くに来た桐谷が、俺を刺すような眼で見た。


「おいおい、それが仲間に向ける目かよ? 殺すぞ?」


 ――場が凍り付く。


 桐谷の口端が上がり、

「ほぉ……」と口を開いたその時、モリーナが慌てて声を上げた。


「すごいわ! これなら今回はボスの負担も軽くなるわね?」


 桐谷はフッと鼻で笑う。

「そうだな……、いや、私が悪かった。頼りにしてるよ、瀬名くん?」


 おっと……ヤバい、明らかにやり過ぎだ。

 このダンジョンのせいか?

 明らかに魔素の影響を受けている気がする……。


「俺も悪かった。憑魔をすると少し乱暴になってしまうんだ」

「……そうか」


 覇王熊の死体を調べていた石丸さんが、横から口を挟んだ。


「少しだけ割れた魔石を回収できたぞ、質は今まで見た中でも最高レベルだが……後はもう駄目だなぁ」


「よし、ご苦労――瀬名、魔石は貴重だ、あまりやりすぎるな」


 桐谷が俺を指さすと、石丸さんがうんうんと頷いた。

 モリーナと小鳥遊は、緊張した顔つきで俺の様子を窺う。


「……わかったよ」

 そう答えると、場の緊張が解ける。


 俺達は森の奥へと足を進めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] はぁああ、ポータルがSだと悪魔のSっ気もアップ?! 魔素の影響侮り難しですが、憑魔は恩恵の方が大きいのでしょうかね
[一言] 速やかな憑魔のためにも、 戦闘以外でもアスモを呼び出したほうがいいのでは?
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