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世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
二章

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レベルS

 紫がかった空、冷たく湿った空気が意識を覚醒させる。

 隊列を組み、朝露に濡れた木々の中を進んでいくと、切り立った岩壁に空いた洞窟に辿り着いた。


 先頭に立つ桐谷が声を上げた。

「ポイントに到着! 各自、最終確認を行うように!」


「いよいよだな……昨日はあまり眠れなかったんじゃねぇのか?」

 石丸さんが荷物の中を確認しながら言った。


「大丈夫です、(いびき)は途中で慣れましたよ」

「ありゃ……やっぱ、うるさかったかぁ……すまんな、へへへ」


「これいいよな~、こんな高級品配るなんて金曜会は気前が良い」

 そう言って、石丸さんは嬉しそうに、紺色のボディスーツを撫でた。

 若干、サイズが小さい気もするが、本人はジャストサイズだと言い張っている。


「確かに、全然寒くないですし、動きやすいです」

 俺の方は黒で、肘や膝にガードが付いている。

 いずれ買おうとは思っていたので、ちょっと得した気分になった。


「確認を終えたら、各自振り分け通り、五人一組になれ!」


「えっと、どれどれ、俺達は小鳥遊くんと瀬名くん、後は桐谷氏とモリーナって人……で、俺は戦闘が始まったら後方待機か、よしよし」

 専用端末を見ながら石丸さんが頷く。


 まさかモリーナさんと同じ班になるとは……。

 正直、気まずすぎるんだが。


「さ、桐谷さんのとこに行きましょうか?」

 いつの間にか後ろにいた小鳥遊が、遊びにでも行くかのように俺の袖を引いた。

「あ、ああ」


 洞窟の入り口前に、ボディスーツ姿の桐谷とモリーナが立っていた。

 桐谷は濃い紫色、モリーナは臙脂色だ。

 こうして見ると、美男美女で絵になるな。


「おはようございます……」

 挨拶をすると、モリーナが俺を見て、

「あら、縁があるわね?」と意味ありげに微笑んだ。


「ど、どうも……」

 もう騙されないぞ、昨日のも桐谷の命令っぽいし……。


 案の定、桐谷が俺を見て、わざとらしく笑う。

「おやおや、いつの間に仲良くなったのかな? 瀬名くんも隅に置けないね」


「ホントだぜ、あんな美人と……どこで知り合ったんだよ?」

「い、いや、それはまた今度……」

 食いつく石丸さんをはぐらかしていると、桐谷が鼻で笑い、

「二人の馴れ初めは討伐後にでも聞かせてもらいましょう。さ、私達の順番です、遅れないように」と言って、洞窟に向かう。


「俺達も行こう、石丸さん」

「あ、ああ……」


 俺達は桐谷に続いて、真っ暗な洞窟に足を踏み入れた。


 *


 洞窟の中は真っ暗だった。

 先に入った班の灯りが遠くに見えている。


「モリーナ、光を」

「了解しました」


『――光球(ライトボール)


 ポゥッという音と共に、モリーナの手の上に、片手で掴めるくらいの光の球が現れ、そのまま頭上に浮かび上がった。


「おぉ~」

「明るいですね」

「ふふ、魔術師(ソーサラー)としては、このくらいはできないとね」


 モリーナさんは魔術師だったのか。

 ここにいるってことは、高レベルなんだろうな……。


 道は狭くなったり、よじ登らなければ進めない場所があったりと、かなり入り組んでいた。

 一時間程かけて奥へ進んでいくと、突然、広い場所に出た。


「あ、あれは……」


 今まで見たポータルとはまるで違っていた。

 横に長い楕円形……現実とポータルの境界線は赤く輝いている。

 中心に広がる闇は、マーブル模様のように赤と黒が入り交じっていた。


 この、脳が締め付けられるような感覚――。

 かなりの魔素濃度だ……。


 ポータルの側には、先に到着していた班が待機していた。


 桐谷はポータルの前をゆっくりと歩きながら、

「流石にレベルSを見るのは初めてだろう? ポータル突入は我々が一番になる」と言った。

「え……」

「この中で最高火力を持つのは()の居る、この班だからね」

 桐谷が念を押すように俺を見た。


「……S級は俺と桐谷さんだけですか?」

「いや、弟もS級だよ。本当はこの班に入れる予定だったんだが、藍莉が君に見られたくないと駄々を捏ねるものでね……まったく、我が儘放題さ」

 そう言って、桐谷は肩を竦めた。

「……」

 いちいち鼻につく奴だ……。


「突入前にウチの支援術師(エンチャンター)達でバフの重ね掛けを行う。中で戦闘になった際は、私の指示に従ってもらう。いいかな?」

「……わかった」


 桐谷は辺りを見回す。

「よし、では全員揃ったようだな……、確か瀬名くんは憑魔をしないと戦えないんだったね? まず、入った瞬間のアタックを警戒しておこう。私とモリーナ、小鳥遊くんは前衛、石丸さんは後ろ。憑魔が済み次第、瀬名くんは小鳥遊くんと交代だ」

「わかりました!」

 小鳥遊が元気よく答えた。


「了解しました」

「わかりました、なるべく急ぎます」


 桐谷は頷き、ポータルの前に立った。

 ゆっくりと皆の方に向き直り、全員を見た後、口を開く。


「いいか! これは挑戦だ。金曜会の長い歴史の中でも、これほどの少人数でレベルSに挑んだ者はいない! 諸君は選ばれた! この時代に生きる覚醒者の中でも、ほんの一握りの者だけがここに立っている……。総勢50名! 吠えろ! 猛々しく吠えろ! ここに弱者はいない! 名を上げろ! 己を示せ! 立ち塞がる者全てを――掃討せよ!」


「「ウオオォォォ―――――――ッッ!!!!」」


 洞窟内が震えた。

 凄まじい熱気、熱量、石丸さんまで雄叫びを上げている!


 悔しいが、あいつの言葉に……俺も少し高ぶってしまった。

 見てろ……憑魔の力で一泡吹かせてやる!


「行くぞ!」


 桐谷とモリーナ、小鳥遊に続き、俺と石丸さんもポータルをくぐった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 憑魔のことが知れ渡った来ている。 悪魔が取り憑く前が最大の弱点と素人考え思い浮かびますが、その隙を護り切ってくれるのか、それとも都合よくいつでも突けるように監視していくのか。 中でどうなる…
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