バキュラ
「あ、あはは……お待たせしました」
やっぱり、悪魔との絡みを見られるのは恥ずかしいな……。
「何て言うか……、そのクラス最高だな」
石丸さんがニヤッと笑う。
「そ、そうですか? 役得感はありますけど……相手は悪魔なので……」
「あんな綺麗なお姉ちゃんなら、俺は悪魔でも全然平気だけどな。毎日でも憑魔するぜ?」
「まあ、自分も男なので……否定はしません」
欲望丸出しの石丸さんと奥へ進む。
「何か人工的な感じですよね……遺跡っぽいというか」
「ああ、ここはボスの間までずっとこんな感じだな」
「魔物はどんなタイプが出るんですか?」
「んー、大抵あんな黒い影みたいな……って、来たぞ!」
慌てて石丸さんが後ろに下がる。
『オオオォォォ……』
不気味な呻き声を上げながら、人型の黒い影が迫って来た。
「ふんっ!」
――影を殴った。
不思議と拳に感触がある。
こいつら実体があるのか……しかも、ゴムのような弾力がある。
なら……手加減無しだ!
「とぉっ!」
影を思いっきり手刀で切り裂いた。
『グアアアア……』
真っ二つになった影が粉のように崩れていく。
「え? 終わり……かな?」
「OKOK! そいつはかなり弱い、その調子だぞ!」
後ろから石丸さんが言った。
そっか、新人召喚師でもレベル上げが出来るんだもんな。
これくらいじゃないと厳しいか……。
「じゃあ石丸さん、ちょっと飛ばしますよ?」
俺は迫り来る影を片っ端から殴り倒し、無双状態で奥へと進んでいった。
*
「あの奥がボスの間だ」
石丸さんが指を差す方に、大きな扉が見えた。
「ちなみにバキュラって、どんな魔物なんですか?」
「大っきな蛇みたいな魔物だ。いいか? 狙うのは頭だ。身体を切ると分裂するからな」
俺は頷き、憑魔のスキルを確認する。
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憑魔:アンドロマリウス
・千里眼(900MP/一体)
対象のステータスをフルオープンにする
・スキル・ハック(500MP/1回)
対象の持つスキルを盗用できるが、効果は半減する
・スキル・ロック(800MP/1回)
対象のスキルを一定時間封印する
・ファナティック・十字砲火(1000MP/3分間)
狂信的な愛の使徒を召喚する
・暴かれる真実の庭園(総HP・MPの半分)
アンドロマリウス家の固有結界を実装、その場に居る者全ての状態変化を無効にする
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スキルを使わずに倒せそうな気もするが、折角だから試しておきたい。
愛の使徒か、やっぱりアイツなんだろうな……。
「じゃあ、石丸さんは外で待っていてください」
「わかった、この扉に隠れて見てるから」
石丸さんに頷き、俺は扉を押した。
ギギギ……と古い木の軋む音が響く。
「⁉」
中は異様な臭いが立ち込めていた。
何だろう、土の臭いを濃縮したようだ。
顔を顰めずにはいられない……。
薄暗い中、目を凝らすと、奥に山のような影が見える。
「あれか……」
まずは、千里眼でどんなもんか調べてみるか。
『――千里眼!』
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名前:バキュラ
HP:6,243
MP:776
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筋力:135
体力:1,210
知能:61
抵抗:359
反射:332
精神:124
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スキル:
魔素吸収 麻痺耐性 毒耐性
石化 猛毒 パラライズミスト
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歪んだ文字が俺の脳内に浮かぶ。
ふぅん……中々便利なスキルだ。
リディアの霊視もこんな感じなのかな?
ん……?
ちょ、体力1,210って……。
やたらHPだけ突出してるな。これが魔素吸収の恩恵なのか?
他のステータスに怖いところはないが……スキルが気になる。
石化や猛毒などの状態異常系か……。
よし、丁度良い。
新しく覚えたのを全部使ってみるか!
バキュラの前に立ち、手を翳した。
『シャアアーーーーーーーッ!!!』
鼓膜を切り裂くような威嚇音が広間に響く!
巨大な蛇の両眼が、闇の中で真っ赤に輝いた。
いいねぇ……この圧。
身体の奥底から、この蛇を無茶苦茶にしてやりたいという欲望が湧き上がってくる。
「起こしたか? クク、まあ直ぐにまた、眠らせてやるよ」
俺はスキルを発動した。




