フクロウじいさん10
「アラン…実は…」
「ここから少し北に向かうぞ。」
俺の小さな声はユリウスの声にかき消された。
「少し北ってことは…また山になるのか?」
「どれどれ…」
俺は地図を広げた。
確かにアランの言う通り、北の方には山々が連なっている。
山となると、進むのに時間がかかる。
それは、アレクシスとの距離がまた広がると言うことだ。
一体、いつになったら、アレクシスに追い付けるんだろう。
この間のバーバラの時みたいに、誰かに捕まえられるか、一所に落ち着いてくれない限り、なかなか追い付くことは出来ない。
本当にもどかしいことだ。
俺達は街道を逸れ、山道に入った。
「アレクシス~!どこだ~!」
そんなことを叫んだところで、返事が来るはずもない。
けれども、ただ黙々と歩くだけではあまりにもやるせなく、自然にそんな叫びが飛び出てしまう。
*
「あ~あ、今夜もまた野宿か…。」
俺の独り言に、ユリウスがじろりと睨みを効かせ、ぷいとどこかへ行ってしまった。
「まぁ、そういうなよ。
ここは、惑わしの森みたいに危険なとこでもないし、ほら…見てみなよ。
月がとっても綺麗だぜ…」
そう言って、アランは空を見上げた。
アランの言った通り、空には微笑むような丸い月がぽっかりと浮かんでた。
アランという男は多少神経質なところはあるが、優しく穏やかで良い奴だ。
いつも苛々して、いつも偉そうにしてる誰かさんとは大違いだ。
見てくれも悪くはない。
ユリウスが特別に綺麗な顔をしてるからかすんで見えるだけで、アラン自体はけっこうな男前だ。
髭を剃った顔は本当にすっきりして整っている。
手に職もあると言ってたし、料理もうまい。
結婚相手としては理想的な男なのかもしれない。
「アラン…あんた、今まで好きな女はいなかったのか?」
「え?そりゃあいるにはいたさ。
でも、それは若い頃の話だ。
トレジャー・ハンターになってからは、お宝が一番だったからな。」
確かにそうなんだよなぁ。
頭の中にあるのは、いつもお宝のことばかり。
たまに、町に帰ってきて女と遊ぶことはあっても、それはごく割りきった関係だ。
愛だの恋だのいうものとは違う。
俺もずっとそうだった。 エリーズに出会うまでは…
本気で好きになったのは、エリーズ、ただ一人だ。
「昔のことなんか、気にすることないぜ。」
そう言って、アランが微笑む。




