惑わしの森4
*
「ちょっと待て!」
「なんだ?」
「このあたりからが、惑わしの森だ。
だから、気を付けて…」
俺が親切で言ってやってるのをまるで無視するみたいに、奴は、コンパスを懐から取り出し、ぱちんと蓋を押し開けた。
コンパスの針はいつものように勝手に動き出し、森の方を指し示した。
「間違いない。やはり、アレクシスはこっちに向かったようだ。」
そう言うと、奴は、俺の方を振り返りもせず、どんどん森の中へ足を踏み入れて行った。
「ちょ…ちょっと待てよ!」
俺は慌てて、奴の後を追った。
だけど、少し入ったところで、やっぱりすごく心配になって来た。
「おい、本当に大丈夫なんだろうな?」
「まだそんなことを言っているのか。
私がこんな森で迷うはずがなかろう。」
奴はやっぱり振り返りもしない。
よほど自信があるんだろう。
ええい、ままよ!俺ももう腹をくくった。
俺だけ森の中に入らないってわけにもいかないんだし、こうなりゃ、奴を信じるしかない。
(ようし!アレクシスと一緒に、ここのお宝も見つけ出してやるぜ!!)
気分はすっかり吹っ切れた。
俺は、奴の後をついて惑わしの森の中へ入って行った。
*
「こりゃあ確かにひどい森だな。」
先に進んで行く度に、木々は密度を増した。
太陽の光をわざと遮る大きな手のような枝が生い茂り、昼間だと言うのに薄暗い。
この先に行ったら、もっと暗くなるかもしれない。
「ユリウス、少し休まないか?」
「もう少し進んだ方が良い。」
「なぜだ?」
「さっきから何度も毒蜘蛛をみかけた。
あいつに刺されたら、まずいことになる。」
「な、なんだって!?」
「もう少し草むらから離れた場所で休んだ方が良さそうだ。」
俺も森のことはそこそこ詳しいつもりだったが、毒蜘蛛がいたなんて少しも気が付かなかった。
確かに、奴は森の事には詳しいようだ。
ここは素直にあいつの言うことを聞いておこうと思った。




