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トゥルーエンド

 ヨルは、彼と会う約束をした。

 そして思い立って、今まで持っていた服を全部、庭で焼いてしまったんだ。

 そうでもしないと、また俺たちに頼ってしまうかもしれないと思ったが故の行動だった。


 服が燃えるのと同時に、『みき』も『りさ』も『しょうこ』もいなくなった。

 それじゃあどうして俺が残ってるんだって思うだろ。

 俺の服はその時丁度、洗濯中だったんだ。洗濯機の中に入ってる俺の服のことを、ヨルは失念していたらしい。


 ヨルは服を燃やし終わると、約束の場所に向かった。

 可愛らしいが外出するにはあまりにも不向きなパジャマで、それでもヨルは全速力で走った。

 口から心臓が飛び出そうなくらい緊張してるのが、俺にも分った。

 それでもヨルは、彼は自分のことを受け止めてくれると信じていたんだ。


 なのに。


 ヨルの姿を見たあいつは、たちまち吹きだした。そして言った。


「パジャマ姿ってどういうことだよ、だっせー!」


 ……その男は、メンタルヘルス関連のブログを漁っては、女を食い物にするゲスだったんだ。心が弱っている女に付け込み、優しい言葉をかけてセックスまで持っていく男がいるとは聞いていたが、それがまさにあいつのことだったのさ。

 ヨルはまんまとそれに釣られた。俺は……まさかとは思っていたが、それをヨルに教えてやれなかったんだ。今思えば、怪しいと思った時にちゃんと言ってやるべきだった。



 意気消沈したヨルは、そのまま家まで歩いて帰った。その男も、ヨル本人を見て興味を失くしたらしく、追いかけてくることすらなかったよ。


 そうしてヨルはフラフラと帰宅し、自分の部屋で倒れた。 

『もう何も信じたくない』が、彼女の最期の言葉だった。



 数時間後に目を覚ましたら、俺が外に出ていた。

 パジャマを着ているにもかかわらず、だ。



 それ以降、どんな服を着ても常に俺が外に出ている状態なんだ。

 『みき』も『りさ』も『しょうこ』も、服が燃えた時に消滅したからな。

 今、外に出れる人格が俺しかいないってことらしい。


 ――……みんなそう言うけど、俺は信じたくない。

 ヨルという人格までもが消滅しただなんて、絶対に信じない。

 ヨルはきっと、眠ってんだ。だから俺は、この身体を守り続ける。そして、ヨルの帰りを待ってんだ。




 ――ん? ああ、そうだよ。

 ヨルのことを笑ったあの男を刺し殺したのは、ヨルじゃなくて『俺』だよ。

 警察はヨルの犯行としてるんだろ? そうじゃなくて俺だって伝えてくれよ。

 俺はヨルじゃないって、伝えてくれ。



 その為の先生だろ? その為の、精神鑑定なんだろ? なあ?

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