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リインカネーション  作者: 岐塔
学院生編
43/64

41. 事後処理と臨時休暇



学院は一週間の臨時休校となった。

他に類似する装置がないか、徹底的に調査することになったのだ。ちなみに、調査隊の責任者はエトランドなため、彼は一週間学院に詰めっぱなしだった。


以前ならばこういうときにエトランドが引っ張り出されることはなかった。政治的な問題で周囲が煩かったためだ。しかし今は、エトランドとリオンの手によってうるさい連中は一掃された。

使って構わないなら使わないでいる必要はまったくない、ということで、ナサナエル国王はエトランドを責任者に据えた。

虫退治をしたせいで今後も使われるだろうことは予想できたが、今回ばかりはエトランドに文句はない。

何せこの学院には、今後もアルフが通うのだ。いずれはウィルも通うだろう。


ならば掃除は徹底的にやらなければ。


ということで、最悪校舎を解体してでも綺麗にしてやろう、とエトランドが内心で思っていることは、秘密だ。





--------------





一週間の間ずっとアルフと一緒にいることができて、ウィルは上機嫌だった。

その分、休み明けは宥めるのが大変になるが、アルフはウィルを思う存分甘やかした。

弄って遊ぶにはまだ短い髪だが、ウィルにそんなことは関係ない。最近ちょっと、育毛の術でも探すかつくるかしようか、と考えたが、それがその後どんな影響を及ぼすかわからなかったのでやめた。将来はげたりしたら嫌だし。

親を見て判断しようにも、親どころか祖父でさえも未だ欠片の老いも見せない若々しさ。

わかる訳がない。


なので、少しでも楽な体制でいるためにアルフは敷き布の上に寝転がった。

かつてアルフがすごした子供部屋は、今はウィルの部屋だ。昔と同じ――もちろん新しいものだが――ふかふかの敷き布。

寝転がったアルフの髪を、自分も寝転がったウィルはご機嫌で握り締める。そのまま口へ運ぶのを見て、あ、とアルフは思った。


(髪、何で洗ったっけ)


ウィルが口に入れても問題なかったかな、と考える。

この家のアメニティは母の好みで天然物を揃えているはずだから、大丈夫だろうと結論付ける。


(うーん、でも、ずっとウィルにしゃぶられてたら痛むよね。そしたら母上も父上も気にするよねぇ?ていうかそもそも、癖になったらダメだよね。やめさせなきゃいけないんだけど……)


でもこの楽しそうな顔を見ると、どうしても強くは出られない。

泣かれたら嫌だなーと考えながら、アルフはおかえしとばかりに手を伸ばし、ウィルの髪をつまんだ。


(けどこういう、叱るべき時にちゃんと叱らないとダメな親とか言われるんだろー?俺親じゃないけど)


赤子らしい細く柔らかな髪。

ああでも可愛いんだ!!と、アルフはウィルの両脇の下に手を差し入れ、抱えあげながら身体を起こした。

急な動きにウィルは目をぱちくりさせたが、怯えることなく楽しそうに笑い出した。

そのまま立ち上がり、高い高いをしながらくるくるとまわる。


(まあ、躾とかそういうのは父上たちに任せればいいよね。だっておれ自身まだ子供だし)


すべて両親に押し付けて、今はただ弟を可愛がろうと、アルフは決めた。





------------





「これの何処が土産だ。厄介事でしかねえぞ」


誰も入ってこないよう厳しく言いつけた自室で、ギルド長のギドはぼやいた。

あの日、リオン――シーヴに特別依頼を出したとき、確かに土産を期待しろといわれた。

しかしその時、ギドは思った。

土産なんぞ期待しないが、厄介事を持ってきそうだ、と。

そして本当に、厄介事が持ち込まれた。


「あぁ?土産だろうが。ギルドにとっても重要な情報だろう」


来客用の長椅子に座ったリオンが、お茶を飲みながら言う。

一見寛いでいるだけに見えるが、実際は室内の情報が外に漏れないよう強固な結界を張っている。

リオンが本気で張った結界を潜り抜けて情報を盗める者など、ギドは一人として知らない。


「どこからどう見ても、厄介事だ。何だこれ。国中捜せってのか」


机の上にはリオンに渡された書類が広げられている。

確かに、その情報の重要度は理解できる。早急に対処しなければならないとも思う。

しかしそれを、自分がやるとなるとまた別問題だ。


やってられるかこんなこと、と放り投げてしまいたくなるほど、面倒くさい。


だがしかし、重要な問題だと理解しているだけに、そうやって放り投げることも出来ない。


「迂闊に依頼になんて出せん内容だぞこれは。この、施設のことを伏せて依頼を出しても、好奇心を押さえられるようなら遺跡になんぞ潜らんし」


口外しないと絶対の信頼をおく相手ならば、好奇心を出して施設のことを知っても、そこでその情報は止まる。

しかし、迂闊な者に知られると、あっという間に世間に広がる。

国の広さに対して、動かせる人員が圧倒的に足りない。

うぐぐ、と呻いて頼める人員のリストを作ろうとするギド。しかし一向に名前は増えない。

書いては消し、書いては消しを繰り返す。

こいつなら、と思っても、いややはり、と思い直すこともう何度目か。

各ギルド支部長ならば大丈夫、というわけではない。

やはり任せられないものもいる。情けない話だが。



結局、これならなんとか、と言えるリストをギドが作り上げたのは、それから二日後だった。



明らかなタイムロスだが、ここを怠るとあっという間に情報操作に失敗するのでリオンも文句は言わなかった。


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