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恋したあの娘は大魔王  作者: きゃたっつー
はまってしまった…
1/11

きっかけは普通だった




「暇だな」


ぽつりと寂しそうに呟く男。いや、男というよりは高校卒業仕立ての若者と言えようか。

しかし若者といっても街中を(せわ)しなく闊歩(かっぽ)する者よりは、落ち着いた雰囲気から大人っぽさがある。


男が座る椅子は人間がデザインしたとは思えない程奇抜で、斬新で、生々しいものであった。

椅子全体は紅色の強い赤褐色に塗られ、所々から突き出るのは鋭く尖った骨と煌びやかな宝石。丁度椅子の頂点に位置する場所には一際鋭く、大きく、神々しく光る漆黒の(つの)が宛がわれているのだ。座り心地は最高らしく、何時間座っていても疲れることは無いとか。


 男の居る部屋もこれまた豪華な装飾が施されている。

純金で作られた杯、ダイヤモンドで(かたど)られた机、シルクで編んだカーテン、

大理石の床・壁。この男の権力がどれ程のモノなのか、象徴している様だ。


 そんな男が呟いた。暇だ、と。この一言がどれ程の者を怒らせ、どれ程の者を奮い立たせるか、男は知らない。


「まったく…あの種族もいい加減学んでほしいものだ、個体数を減らされる我々の身にもなってもらいたい」


男が云うあの種族。それは


人間であった。



―――1週間前


『魔王、今日こそお前を倒して平和を戻して見せる!』


 小さなボリュームだが音色がはっきりと我を主張するチェロの音が静かに反響する男の部屋。

しかし、この空気を破壊する音量で叫ぶ者が部屋の扉を乱暴に開いた。

シンプルな作りの剣を男に向け、男と同年代に見える若者が仲間らしき者を引き連れて城に現れたのだ。若者が叫んだ魔王とは、恐らく剣先が向けられてる、男であろう。


「また来たか、哀れな種族よ。これで5回目だな、何人の勇者もどきが死んだかいい加減理解したらいいものを」


先程と同様、真紅の椅子にどかっと座ったままの男…魔王は言葉の通り呆れ顔で若者…勇者もどきを見つめる。その目は大きな哀れみと僅かな期待を捉えている様だ。


『う、うるさい!父さんや先代を悪く言うな、この人殺し!』


魔王の冷静な態度も、この勇者もどきには通用しない。何故ならこの勇者もどきの父親や祖父は魔王に刃向い、殺されたのだから。見るからに復讐と云える。


「ああ、そうだな。俺はお前の父親や祖父、曾祖父から先代まで殺してきた。お前で五人目だ、誉めてやろう。


『黙れ!ボクはお前を殺すまで諦めないぞ、ゾンビになってでも殺してやる』


「おお、懐かしいなその言葉。確か…三番目の者だったな。

子は親に似るとは言うが、まさかここまでとはな。驚いたぞ」


昔懐かしい気持ちになったのか、飄々(ひょうひょう)と話す魔王。側に仕える魔物たちはゲラゲラと下品に笑っているが、魔王の鼻にふっかける様な笑いはひどく冷たい。


『ああああぁあ‼‼黙れ黙れ‼』


入室時から、かなり憤慨していた勇者もどきは魔王の態度に余計に腹が立ったようで、怒り狂い叫んだ。剣を握る手にも一層の力が加わり、大きく震えだした。


『勇者落ち着くんだ!怒りの感情はその剣の力を弱めるだけ、もっと冷静になれ!』

『勇者様深呼吸です。如何なる時であれ、集中することが大事なのです』

『勇者、復讐なんて考えるな。みんなの希望を叶える事だと思え』


発狂した勇者もどきを励ます仲間たち。自称世界最強のだと豪語する剣士。神の加護だと抜かし回復だの呪文だの魔法を使えない僧侶。気合で何でも乗り切ろうとするファイター。数十年の間に5回も勇者一行もどきと闘い続けた魔王には、何ら変わりのない甘々

集団にしか思えない。


一見すると美しい絆に見えるが魔王には傷の舐め合いにしか見えていない。感情の起伏などこれっぽちもないのだ。

只々、俺の目の前には哀れな種族が居る、としか考えていない。


『…はあ…はあ…。みんな…、ごめんボクが間違ってたよ。魔王を倒すのは平和を取り戻す為だもんね。魔王、ボクたちは必ずお前を…倒す!』


身体全体で呼吸をしていた勇者もどきの呼吸音が小さくなり、ようやく戦闘の始まりらしい。その間、魔王は沈黙を続けていた。まるで画面越しに見るC級ドラマを見る様に。


「運動不足の解消くらいには貢献してくれよ…?」


魔王が放った一言が戦いの火蓋を切った。



数分後


『ぅぐうう…何で、こんな強いんだ……?』


『けほっ…勇者様、今…手当を……』


『強すぎる…これが魔王なのか…?』


『勝てねえよ…こんなのチートじゃねえか…!』


ボロボロに朽ち果てる勇者もどきたちが乳白色の大理石の床に倒れていた。

完膚なきまでに叩きのめされていたのだ。


「お前たちで五人目だ、ここで死んだ勇者もどきの数とそれに(あお)られた愚かな人間は」


魔王の身体は愚か、その身にまとっている豪華な衣装にも何一つ傷がない。肩に羽織っていただけのロングコートの毛皮は一本の損失を許さず、三本ずつ着けた宝石の指輪は一片の欠如をも否定した。正に最強の王として、風格を保っていたのだ。

最強の王が勇者一行にした攻撃、それはとても安直でとてもあっさりと彼らを散らせた。


真紅の椅子から立ち上がった魔王は向かって来る勇者が居る王座の下段、丁度3段ほどの段差を降りた位置でそれをした。右足のつま先を少しだけ上げてぱたん、と僅かな音を立て地面に下ろす。と、共に魔王の部屋の中央は渦が作られ勇者一行を囲んだ。


竜巻、それだけの攻撃であった。



『……で。何でそこまで俺たちを苦しめるんだ……!?』


死を恐れたのか、仲間の一人剣士がそう問いただす。

剣士の目は何かの破片が刺さったらしく、流血していて視力はほぼ0だろう。

その充血しきった目に魔王は大層恐ろしく見えたのか。


「…………」


無言のまま魔王はコートを返し、再び定位置と言わんばかりの真紅の椅子にゆっくり座りこんだ。

音も無く、ただ静かに。剣士の問いの答えを導くように。


「何回も言っていた、お前たちは五回目だ、と。」


椅子の背もたれに体全体を預け、自身の身長の6倍もある天井を見上げて言った。


「人間という種族が分からない。何故そこまでして俺に勝ちたいのか、何故俺への勝算があるのか。理解できない」


まるで思い出を思い起こす様に淡々と話す魔王の瞳は閉じたまま。

声色に何も変化が無く、懐かしむという感情に浸っているのではないようだ。


『…俺たちは平和の為に戦っている……それの何が分からないと言うのだ!?』


「それが分からないと言っているんだ、お前たち人間の平和なら保たれているはず」


激昂する剣士によって飛ばされる荒声。その気迫すら通用しないといった魔王は表情筋の一つも動かさず、再び話を続ける。

その間も勇者一行は反撃など出来るに至るまでの回復はしていない様子。


「人間という種族は我々が見てきた中で最も優秀な生物個体だ。自我を持ち、欲望に駆られながらも抑える精神力、そして何よりも豊かである…感情。魔族の我々には欠如しているか不足しているものであり、それら全てを各個体が保有する人間を全滅させるなど愚の骨頂。人間を住まわせている地域に隣接する場所含め半径200キロメートルに魔族は入れていない。結界を張っているのだから余程の上位種でないと開けられないからな」


天井を仰ぐように上を向いていた顔は剣士の方を向き、閉じていたダウナーな瞳は勇者たちは順番に捉えていく。獲物を狙う蛇のように、その眼光は恐ろしかった。


「そんな平和が保障された中で何の不満があるというのだ?食糧も十分、犯罪者は絶対に逃がさない、安心して寝られる寝処。これ以上何を求める…?」


『それは……』


床に這いつくばる勇者たちは答えられない。当たり前だ、彼らは幼い頃から魔王や魔族はとても酷い生き物で人間たちを苦しめる。と教わってきたからで実際に体験したことなど一度もない。親を殺された当の本人である勇者ならそれが言えるが、付いてきた仲間には魔族に関して恐ろしいといった伝聞であった。


自分たちが刃向って、初めてその恐ろしさを知ったのだ。


「答えられないか、当たり前だな。お前たちは何も知らない、何も教えられていない。

 思い返してみろ、お前たちがこの城に来るまで一度たりとも城下の魔族は襲ってきたか?危害を加えたか?」


『ぅ………』


勇者はこれまでの旅を思い返す。

勇者の血を継ぐ者は魔王を倒しに行かなければならないという決まりに押され決意した今回の旅。訳の分からないまま剣と盾を渡され尚且つ村を半強制的に追い出された。

隣町に行けば賢者や剣士が居るという言伝(ことづて)で向かった隣町は、自分を向かい入れる事はしない。宿だって料金を徴収したし、他人の家のタンスを漁ったら怒られた。

ダメージを負い、回復の為に寄った教会では礼拝料を取られ一般的な治療のみ。傷口に消毒液を掛けられ絆創膏を貼られ、包帯でぐるぐる巻き。

敵が現れないのに、倉庫から引っ張り出されてきた古い剣を渡され()た追い出された。


剣士はこれまでの旅を思い返す。

自分の住む小さな町で催されたチャンバラ大会。順調に勝ち進んだ決勝戦は引き分けで、勝敗を決めるためにしたのはジャンケン。運で大会に勝ったのだが、何故かその時から自分の呼び名は最強の剣士。元々調子に乗りやすい性格だったことが重なり、自分でも言い始めた。実物の剣など振ったことも無いし、何かを切った経験もない。素人中の素人。

ふらっと現れた勇者が魔王を倒しに行くと言ってきたので、最強を試すいい機会になると思ってついて行った。


 賢者はこれまでの旅を思い返す。

街の掲示板に張ってあった求人広告。高待遇・住居ありという項目が気に入り、軽い気持ちでなった修道女兼賢者。教会でやることなど掃除か礼拝ぐらいで、まるで実感がない。

しかも賢者になったのだから魔法くらい使えないと、と言われ魔法を習い始めるが無謀だった。魔法何て存在いない事を否定してきた周りに流され一日中本を読んでは実証する毎日。当然、ただの修道女が魔法を使える訳でもなく、適当に誤魔化してきた。

勇者が街に来た時はエキサイトな経験を求めついて行った。


 ファイターはこれまでの旅を思い返す。

中規模のジムでスパーリングするのが趣味だったファイター。ボクシングは当然の如く得意で、喧嘩にはある程度の自信があった。自警団にも所属していることも関係し、強面の人とやり合うことには慣れていたのだ。仲間を探しに来た勇者の事を護衛の実践になれると思いついて行った。


 各々の記憶を探り、一つの答えに導かれた。

私たちは一度も魔族と戦闘を行っていない、と。

剣はただの飾りに過ぎない。魔法なんてものは存在しない。最強の剣士など井の中の蛙。

実践と呼ぶには簡単すぎる内容。

当然魔族との戦闘がないのだから、経験値など貰えるはずがない。

彼らの実力は初期のままであった。


   

「……聞くまでもないな」


既に見据えていたらしく魔王はふっ、と息を吐いた。


「これ以上お前たちに構ってる時間など無い。ここで死んでもらおう」


時間が惜しいと感じたのか、魔王は踵を返して段の一つを上がる。

そしてとある名前を呼んだ。


「ルティ、シエル何処に居る?」


床に半死半生の人間が居るとは思えない程の静寂に包まれた魔王の部屋。小さい声で名を呼んだ魔王の声でさえよく通る。ドーム型に浮かびあがっている天井に響くくらい。


魔王が読んで数秒後


『あははー、魔王様呼んだぁ?』


『呼んだのぉ?あははー』


部屋の奥から淡い紺色…水色に光る球体と黄金色に光る球体が現れた。


「ルティ、シエル。仕事だ、この人間たちを消すぞ」

 

その発行体が近くにくるなり、そう話し掛けた。魔王の口元は僅かだが、緩んでいるように見える。いささか、何かを楽しんでいる様だ。

そして、状況から察するに水色の発行体が『ルティ』。黄金色の発行体は『シエル』というらしい。


「あははー、魔王様就任してから五回目の勇者殺しぃ」


「勇者殺しぃ、あはははー」


ルティとシエルは双子の様に、且つ輪唱の様に話す。いや、発行体である彼女ら?は際のとこと双子かもしれないが、今はそんな事を気にしている場合ではない。


魔王の周りをぐるぐると縦横無尽に回る発行体は一層、光を強くして反応を示した。

まるでこれから宴が始まるかの様に。


「遊びもここまでだ。モード・断罪の呪刀(アルテミシス)


すっと伸ばした手に徐々に近づくルティとシエル。その内指先に向かうように細かく回りだし、遂には二つの発行体が融合した。


水色の光と黄金色の光がホースから出される暴れ水の様に、交互に魔王の手から輝きだす。部屋の壁や装飾品、勇者たちに当たるとたちまち花火のように弾けて消えた。

この光景は見る者すべてに息をすることすら忘れさせる。とても綺麗で、とても残酷。

もし人間がこの光を見た場合は、人生の終極であろう。


部屋の中央では二色に光る物体が段々ととある形に形成されていく。



『き、綺麗……』


思わずそう呟いてしまったのは、この部屋に居る者の紅一点である賢者。

女性からの目線では恐怖よりも感動が打ち勝ったようで、目の前で光の帯が弾け飛んでもびくともしない。

まだ見ていたいという願望すら生まれていたのだ。


『け、賢者…?何を言っているんだ、あれは俺たち殺すものかもしれないんだぞ‼』


賢者から発せられた言葉に強く反応したのは、気合精神論のファイター。

魔王を目の前にして弱気になるものなら良いものを、思いもしなかった言葉を聞きつい怒号をあげた。しかし、賢者の綺麗と思う心には何も響かない。


そうこうしていると、魔王を包んでいた光は徐々にその発光を収めていく。

勇者たちを始末する刀の完成が近づいてきたからだ。


「……あっけないものだ、この断罪の呪刀(アルテミシス)を一振りするだけでお前たちは消える。痛みを感じることなく死ねるのだ、ありがたいと思え」


魔王が勇者たちにはっきりと聞こえるボリュームでそう伝えた。

そしてその瞬間、魔王の手には翡翠(ひすい)の色に輝く刀身を持った長刀が現れた。



「罪を償え、哀れな種族よ」


軽く振りぬかれた断罪の呪刀(アルテミシス)は音も無く勇者たちを消した。




―――――。


「あの勇者もどきには何か期待できるものが有ったのだが……俺の勘違いだったか」


真紅の椅子に座ったまま先日の戦いを思い出す。魔王の心の中には、あの勇者が自分を楽しませてくれる、と感じられる部分があったらしく淡い期待を抱いていた。

しかし結果は前述の通り、期待外れの展開だった事にため息をつくばかり。


部屋に響くのは、只々無情に時間を伝える時計の針がなる。


そして魔王は呟いた。


「暇だな」


♦   ♦


「おい、勇者もどきの荷物の整理は終わったか?」


城の表玄関、数匹の魔物が先日から捨てたままの荷物を漁っていた。漁っていた、というよりは調査だろうか。何か魔族の技術を上げる事に繋がる物品は収められ、それ以外の物は基本魔界のオークションで売りさばかれる。


「親分、親分。あの筋肉バカの麻袋からこんな物が…」


筋肉バカとはお分かりの通り、ファイターである。上半身がほぼ裸だったので、浮き出た腹筋や肉筋の印象が強かったようだ。

そんなファイターが所有していた物が気になったらしい子分の魔物は親分と呼ばれる調査隊の隊長にその物品を渡した。何か鍵の掛かった箱で、相当頑丈な作りだ。


「ああ?何だこれ、硬くてまったく開かないぞ。ちょっと下がってろ」


魔族でも開けられないらしいその箱は、下級の魔法で無理やり開けることにした。

隊長が手のひらをかざし、箱の上で呪文を唱える。燃やすのだろうか。


「よっ‼」


ぼんっ‼と大きい音がした後、箱のふたは見事とはいかないまでも半開きになっていた。

成功とは言っていいのか分からない。


「中には何が入っているんだ?ガラクタばっかだな」


箱のふたをはがし中身を確認したが、その中身は魔族には到底理解できないものばかりが入っていたようだ。


「薄いカードに…何かの造形物だな。これが人間の間で流行っているのか?」


そう、中に入っていたものは。

所謂、ヲタクグッズ。アニメ等のグッズだった。



「…一応魔王様に持っていきますか」


「そうだな、何かの発展に繋がりそうだし」


♦  ♦



「魔王様、調査隊の者が奇妙な物を発見したとか…」


「そうか、通せ」


ダイヤモンドで作られた机で、何やら書類に文字を書いている魔王の下にそう伝えられた。

調査隊とは城門で先日の勇者もどきの荷物を漁っていた部隊のことである。

どうやら調査結果を伝えるために、魔王の部屋に来るようだ。


こんこん、という木音が響く。



「調査ご苦労だったな。それで、魔界の発展に一役買いそうなものはあったか?」


部屋に来るなり、そう尋ねる魔王の眼は相変わらず鋭い。嘘をついてもすぐさまばれてしまいそうだ。


「何か特別という程の物はありませんでした。ですが……」


「…ですが、何だ?」


口を中途半端に紡いだ調査隊の者に若干の違和感を感じた魔王、書類作業をしていた机から立ち上がり近づいていく。

魔王と接触する機会が少ない者なら、緊張から泡を吹いて倒れてしまう程の威圧感だ。


「あの筋肉バカの荷物から、妙な物を見つけまして」


話の終りと共に差し出される、魔族にとって妙な物・アニメグッズ等。

これまた、丁寧な包装で包んであったのでこの魔族の趣味と勘違いしてしまうかもしれない。


「な、何なのだこれは…?見たこと無い物だな」


渡された物を受け取り、まじまじと見る時間なく驚いてしまった魔王。魔界には造形文化はあるものの、殆どが等身大の彫刻・像である。なので、フィギアといったミニスケールの物や薄っぺらいカードには見慣れていないのだ。


「私も長年、人間の物を見てきましたが…この様な物が出てきた事は初めてですね。

それで魔王様、如何なさいますか?廃棄か研究か」


「…………」


「魔王様?」


魔王は答えない。時折フィギアを見ては、同じく包んであった機器に表示されている絵を見ては唸る。客観的に観れば、この持ち物が国一つを発展させるものとは思えないが…。


「…決めた」


「…?何をでしょうか?」


フィギア等を傍にあった棚に置いた後、魔王はそうぼそりと呟く。

小さい声だったが聞き取れたらしい調査隊の魔物は尋ねた。


「おい、今すぐ第3ルームにテレビを持ってこい。それと、……」


急に顔をぐっと上げ、珍しく大声で指示を飛ばす魔王。次々と使いの者を動かし第3ルームなる部屋の改装を指示した。一体何が起きたというのだろうか。


「ファイターの家を探しだし、これに関連した物を全て第3ルームに持って行け!」


どうやら、魔王はヲタク趣味にはまってしまったらしい。


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