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92.アキアン到着

 ピラク、というよりモニカに声をかけられて俺とノエルは南領アキアンへやってきた。

 北から南への移動はハーピー達にお願いしても四日はかかってしまう。この世界でのほぼ一週間、往復で約半月、さらに滞在を考えるとキッタカールを長い期間空けてしまうのは少し気がかりである。しかし、以前と違い今は大浴場の管理を手伝ってくれる人を雇うこともできたし俺としては少し気が楽になった。

 ノエルは王女の立場を越えて魔法の手を活かして土木作業をしていた。大きなもの、重いもの、高所作業、何でもこなしてしまうのが強みだ。間違いなくキッタカールの発展の一番の功労者だ。しかし、ノエルでないといけない仕事もありつつも今は人も多く色んなことができるようになっている。もちろん作業のペースは遅くなる部分もあるのだが、キッタカールの住人もノエルにばかり頼ってはいられないと今は奮起している。

 特にオーク達の土木技術の上達は目覚ましく、今ではプロントの復興に人を派遣するくらいにまでなっていた。

 逆にこうなると俺とノエルがキッタカールに戻った時にどれくらい発展しているか楽しみになっている。


「ノエル様、何だか楽しそうですね」


「そうですか? 確かに楽しみなのら楽しみかもしれません。アキアンを訪れるのも久し振りですし、心のどこかで海で泳ぐのも楽しみにしているのかもしれません。キッタカールに行くことが決まった時は不安が大きかったですが、今はこうして心に余裕ができたようで楽しむ心も生まれたのかもしれません」


「それは何よりですね!」


「はい、これも全部タロウ様と出会えたからですよ」


 ノエルはそう言って俺の手を握ってきた。


「大袈裟ですよ。俺は何もしてませんから」


 道中でそんな会話があった。


 そして、今はアキアンに到着している。

 アキアンは海洋都市ということで整備した港があり漁業や海産品の加工を盛んだ。砂浜は整備されていて海水浴も可能になっている。ゴルド国内だけでなくブリダからも観光客が訪れるようだ。そのため宿泊施設も充実していてリゾート地して機能している。宿泊施設に関しては王都にも負けていないようだ。それに伴い飲食業や土産の加工なども盛んになっている。

 ブラメロと近いこともあり観光客を楽しませるための音楽や踊り、演劇のような人を楽しませることもブラメロには及ばすとも発展しているようだ。

 ゴルド国内一の娯楽都市というのは間違いなさそうだ。


 キッタカールにいる時はあまり意識しなかったのだが、この三ヵ国のある大陸の外に関してはあまり開拓は進んでいないらしいことも教えてもらった。近くの離島には人が住んでいるようでアキアンを通じて交流はあるが、どこかの国に属しているわけでもないらしい。


 やはりまだまだ知らないことが多い。


 さらに驚いたのは大型魔獣が既に出現していたことだ。


「遅かったのじゃ」

 モニカがそう声をかけてきた。自分の領じゃないのに何で上からなのだろう。


「モニカ、何言ってるのよ。ノエル達は来なくても良かったんだからね」


「もう戦いは始まるの?」

 ピラクがカバーしてくれた言葉をノエルが引き取る。


「そうね、明日には片付けたいわ。昨日、タコとイカのような大型の魔獣が二体も現れたのよ。漁も遊泳も禁止にして市民も観光客も海には近寄られせないようにしたわ」

 ピラクが説明してくれた。

 それにしても二体も出現したのは予想外だった。


「二体も出たのですか? 大丈夫なのでしょうか?」


「今はプロントの時と同じように止まったままなので大丈夫なのじゃ」


「大型から漏れ出てくる小型の魔獣は騎士団が対応してくれてるわ」

 俺の質問にピラクとモニカが答えてくれた。


「それにね、準備した上での出現だからあまり焦ってないのよ。もう明日には片付けてしまうつもり。一日ずれていたらノエル達が到着する前に倒しちゃっていたかもね」


「それなら間に合ってよかったわ。私も手伝うわ」

 ノエルも助太刀する気持ちが漲っているようだ。


「本当はノエルが来たから歓迎会をしないといけないのだけど、明日魔獣を倒してから祝勝会と一緒に開きましょう。今日はゆっくり休んで明日に備えましょう」


 ピラクは俺とノエルを城内の客室に案内してくれた。

 キッタカールは王女が暮らすのはお屋敷って感じだが、他の領は立派な城がありキッタカールの今までの扱いの酷さに俺は少し憤りを感じた。憤りを感じたのはキッタカールの一員になった意識が出てきたのかもしれない。

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