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21.魔法玉

 工事は三日目に迎え、湖から村までの水路を引くことはできた。

 まだ形をオーク達に整えてもらう必要はあるが、ノエルの計画通りよりもやはり早く進んでいる。

 一度、村に水路が到達した時点で水を流し込むか検討されたが山から流れてくる水の量や速度も正確には分からないため、村へ水を引いた時に予想以上の勢いで水が流れ込み村が水没する可能性もあるということでそれは無しになった。

 なるべく早く水を引いてあげたいが、危険な目に合わせるわけにもいかないので安全策を取る方が正解だろう。


 その後、順調に村を囲む堀の工事に着手した。

オークとゴブリンの集落も一つにまとめて、村として大きくなっていく計画だ。そのために堀も大きく作る。

 集落も巻き込んでいくのでゴブリンたちも堀と土塁の工事からは合流してくれた。


 その頃、ブライも合流した。

 ブライ自身の肉体の回復力ももちろんだが、リリの作った傷薬は効果が高いみたいだ。


「力仕事は任せてください。休んでいた分、働くっスよ」

 ブライはそう言ってオークたちの仕事に混ざっていった。傷が開かないようにほどほどにして欲しいものだ。


 それから数日して川への合流口まで水路の基礎を造ることができた。

 堀から川への水路で掘り起こされた土は、村を囲う土塁のために使うためにオークやゴブリン達が運んでいく。


 いよいよ、水を流すところまで工事が完了したのだが、二つ問題が見つかった。

 一つは堀と外側を繋ぐ渡りの部分。

 普段、堀へは水を流さない構造にした。水量が増えた時に堀へ誘導させるように高さを調整した。

 本当は木を使って跳ね橋を造って護りを固めたかったのだが、技術も素材も無かった。とりあえずは渡りの部分だけは地中を深く掘り土の下に水を流せるようになっている。

 しかし強度を考えるといずれは木材で橋を作りたい。この地域では木材も貴重なため、なかなか良い木材が採れないらしい。エルフの森から調達できればいいが、これにはエルフの許可も必要だし、伐採や運搬技術も要る。

 ただ、これはいずれ必要になることなので考えないといけない。


 もう一つは水を流すタイミングだ。

 湖から水を流入させるのと、水路から川へ放出するのをできれば同時にやりたい。

 しかし、王女の魔法の手は片方でしか使えない。湖側で堰き止めていた土を掘削するために使ってから馬で川側へ移動して放出するための採掘に間に合うかもしれないが、やはりキッタール山から流れてくる水の仕組みのことを考えると間に合わなかった場合に村が水害に襲われることが考えられ、それは避けないといけない。


 次の案としては川へ流す側をノエルが湖から水路へ水を流す混むために掘削したら、合図を送り川側で別の者に人力で掘削してもらう。

 これは現実的に思えたが、川から水が逆流して巻き込まれる可能性が高い。ブライが自分がやると言っていたが、万全な時ならともかく傷が癒えきっていない今は無茶はさせられない。


 各自意見を出し合っていたが、なかなかこれだという案が出てこなかった。

 その話を聞いていたリリが案を出した。


「私の魔法玉を使うのはどうですか?」

 確かにその手があった。

 リリの魔法玉を使えば堰き止めてある土壁を吹き飛ばすことができる。

 ただ、この世界に爆弾を使った工事が今までなかったのか俺とリリ以外は理解ができていなかった。

 俺は地面に簡単な仕組みを描いて皆にイメージの共有を行った。


「湖に行った日にノエル様の魔法を見て穴を掘るなら私の魔法玉でも何か協力できることあるかもしれないな、って思って素材を集めて魔法玉を作っていたのですが、完成した頃にはほとんど工事が終わっちゃっていて……」

 リリは話ながら声が小さくなっていった。


「ありがとう。リリがそう思って準備をしてくれたから工事が進みそうですよ」

 ノエルがリリの手を握って励ます。


「それで魔法玉はどうやって爆発させるんだい?」

 俺がリリに尋ねる。


「だいたいは目標物に投げて爆発させます。ただ、私の力だと勢いもなく届かないかもしれません……」

 やはりここはブライの出番か?

 しかし、初めてのことだ。失敗する可能性もある。もう少し慎重にいきたい。


「他には魔法玉に線を引いて、その線に火を付けて爆発させる方法もあります……あとは罠として地面に埋めるとか……」

 今回、地雷は関係ないが危険過ぎるのでその活用方法は使わないようにリリに指導しよう。

 導火線は今回の工事に一番合っていると思った。

 リリに導火線について再度確認して、その方法で明日いよいよ水路の開通工事を行うこととなった。


 翌日、湖側にはノエルが行く。ジョルジュとサラはそちらへ同行した。

 川側へは俺とリリ、ブライが来ている。ブライは最後にどうしても力仕事が必要になるかもしれないとこちらへ来た。

 まずは川側に魔法玉を設置する。これはブライとオーク達が手伝ってくれた。こちらから合図の笛の音を鳴らす。

合図に使う笛は魔獣の骨からゴブリン達が加工してくれたものだ。すでにゴブリンたちは狩猟の時の合図の為に使っているようだ。今後は村のやり取りでも活用したい。


 こちらの笛の音を聞いて湖側でも王女が魔法の手によって工事を開始した。

 湖側の決壊を破壊した合図の笛の音が聞こえた。

 同時に湖から水が勢いよく流れ出す音も聞こえたような気がした。


 堀に到達した時点でもう一度笛の音が聞こえた。

 いよいよこちらにも流れてくる。


 俺の魔法で導火線に火を付けた。

 徐々に魔法玉に火は近付いていくが、火の歩みが思ったより遅い。

 このままだと堰き止めを壊す前に水が来てしまいそうだ。

 水の勢いで壊さないものか。しかし、失敗した場合、こちら側にいる人たちに被害が出てしまいそうだ。


 間に合わないならタイミングを見計らって俺が魔法玉を爆発させる。

 手は魔法玉に照準を合わせる。

 顔は反対の水が来る方向だ。


「水が来るっす!」

 ブライが声を上げる。


「ファイヤ!」

 俺の炎の魔法は魔法玉に無事に直撃し、大きな破裂音とともに堰き止めていた土を吹き飛ばした。


 川から水が逆流してきたが、湖から来た水の勢いで押し戻し無事に水路は開通した。

 これで村の水源の確保、堀と土塁を造ることによる村としての外からの脅威に対する村の防御力が少し上がった。

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