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19.職業の儀式

リリを村に連れて行く前にオークの集落で魔獣の皮を受け取りゴブリンの集落に届けグリーンにリリに服を作ってもらうようにお願いした。

傷薬だけ持って現れて転生して来た時の俺と同じような服装しかしていなかったのだ。女の子だし、少しは身なりを整えてあげたいというノエルの思いがあった。


傷薬を取りに行ったはずの俺たちが傷薬と一緒に少女を連れて帰ってきたことにジョルジュは当然だが驚いた。

ブライの傷薬を留守番をしていたサラに託して傷薬と一緒にリリを連れてブライの手当に向かった。ノエルは森で起きたことをジョルジュに説明をする。

「なるほど、そんなことがあったのですね。しかし、エルフ様から職業の儀式を行うように頼まれるとはさらに驚いてしまいます」

「すみません、職業の儀式というのは何なのでしょう」

「それぞれの国で決まり事は違うかもしれないのですが、この国では職業に適性があるかを女王や各地の王女が判断して認めることです」

「エルフに薬の調合を教わったなら適性はあるのではないでしょうか? 認めるだけならノエル様は王女ですし誰も文句は言わないでしょう」

俺がそう言うとジョルジュが割って入ってきた。

「儀式はそれだけのものではないのです。確かに認めるだけで終わりますが、ノエル様が認めるとリリの魂の証が作成されます」

ジョルジュが自分の騎士の証を見せる。

「これは装飾品として誰かが作ったものではなく、それぞれの魂から形成されたものです。人に危害を加える力を持つものを抑制する意味をあります。騎士や薬師は人を助ける力がありつつも、その力は人を傷付けることもできます。証を持つものが人に危害を加える時は女王や王女の力でそのものを罰することができます。また逆に本来職業の証を得ないとならないものが儀式を行わずに活動をした場合は反逆者とみなし騎士団が取り締まる対象になるのです」

何か凄いことを言っている。王女たちの魔力は凄いものなんだな。

「全部の商人というわけではありませんが王宮に出入りしたり、武器を扱ったり、身を守るためとはいえ自信が武装するものは儀式を行うが通例ですよ」

ノエルが補足してくれた。商売ひとつするのも大変そうだ。ただ、この村やエルフの南の村で近隣とやり取りするくらいなら商売に制約はないとのことだった。


確かにこの話を聞くと軽く儀式を行うとは言えないのは理解できた。

しかし、どうもノエルはリリを村に置いておきたいように見える。

「ノエル様がリリを村に置きたいのなら儀式を行ってみてはいかがでしょうか。もしリリの技量が足りないのなら儀式は失敗に終わりますし、どうでしょうか」

「私が職業の儀式を行うことを女王様やお姉様たちはどう思うのでしょうか……」

職業の儀式も内緒で行うことはできないらしい。俺のやってしまった進化の名付けのように、誰かが儀式を行うと女王と王女たちの間だけだが伝わるようになっているらしい。

「北の地で薬師に認められた者が出たことは確かに驚かれるかもしれませんが、戦士などと違ってそこまで何かやっかみを言ってくることもないと思いますよ」

それを聞いてノエルも決心したようだ。

「そうですね、分かりました。早速、職業の儀を執り行いましょう」


ブライの部屋からリリが呼ばれる。傷の塗り薬だけでなく痛みを和らげる飲み薬もリリは用意してくれていて、それを使って薬が効いたのかブライは眠ったとのことだ。

早速、職業の儀式が行われる。

儀式と言っても、ノエルが薬師として忠誠を誓うか、みたいなことを言ってリリが返事をしただけだ。

リリの身体が光り、職業の証が形成されて空中に現れた。これは能力が上がると形が自動的に変化して、分かるものが見るとその能力を判別できるらしい。もちろん偽物の加工も俺が初めてジョルジュに会った時にやったように見分けることもできるそうだ。

俺の場合は王女たちではなく女神に作ってもらったものだから少し違うのかもしれないが、ジョルジュが言うには職業の証になっているとのことだ。


「これはどこかに無くしたり、誰かに盗まれても必ず手元に戻ってくる。そうとはいえ、しっかり自分で身につけておくように」

ジョルジュがリリに伝えた。これってそんな凄い機能まで付いているのか。これについても女神の説明不足だな。

「ありがとうございました。これからは村の薬師として頑張っていきます」

リリは少し声が小さい。それでも精一杯決意を述べていた。

「リリは調薬は何ができますか?」

ノエルが聞いた。

「基本的な怪我や病気に関するものはほとんど作れると思います。あと、野草の見分けるもできます。薬に使うもの、食用になるもの、それと毒のあるものも見分けることができるように教わりました」

「それは心強いですね」

ノエルは嬉しそうだ。

「あとはゴブリンたちのように簡単な罠を仕掛けたり、逆に解除したり、それと森の蔦とか使って簡単な武器も作って使えます」

見た目は大人しそうで声は小さいのになかなか強力な話をしている。

「それはさらに心強いですね……」

ノエルはさっきと違って少し引いてるように見える。

「森で暮らしていくにはこういうのも覚えなさいと教えられまして……」

ノエルの反応を見てリリの声はさらに小さくなってしまった。

「あっ、あと素材さえあれば魔法玉も作れます」

リリがこれなら喜ばれると思って言ったようだがノエルだけではなくジョルジュも引いていた。

魔法玉というのは魔法を込めるわけではなく、色々調剤して爆発を起こす玉ということらしい。

現代で言う爆弾のことのようだ。


そんなものを作れる少女をエルフから託されてしまった。

村のためにはなるとは言え、とんでもない住人が増えてしまった。

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