表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/15

ノエル着任

荷解きも終わった頃、村の中央でノエルの着任の報告の準備も大方整ったようだ。

村の女性たちは報告の後の交流会のための食事を準備している。食事や酒などは御者が操っていた場所に積まれていたものだった。ノエルたちが森の南の村でこのために調達してきたのだ。

三台の馬車の割にはノエルも荷物がすくないと感じたのはこのせいだった。王女の着任にしては寂しい。

あとはオークたちが捌いてくれた魔獣の肉も振舞われるようだ。


交流会の前に人間の村長が屋敷に来ていた。

「ノエル様、はるばるこの北の果てまで来ていただいたのにまともなおもてなしをできずに申し訳ございません。何分この地方は見ての通り貧しく日々の暮らしにも満足がいかないばかりで……」

村長の声が小さくなっていく。

「いえ、気になさらないでください。私も今日からこの村の一員です。一緒にこの地方を復興していくつもりです」

ノエルは気丈に振舞う。15歳に見えないのは王族の教育の賜物なのだろう。

「そればかりか着任の報告のための交流会の食べ物や飲み物まで持っていきくださりありがとうございます。この村では祭りなんて何年も開けておらず皆楽しみにしております」

恐縮した村長の背中は丸まっていき、小さい背中はさらに小さくなってしまったように見える。

「だからこそまずは皆様に親しみを感じてもらうためにも交流会は必要だと思いました。私もただこの村にいるだけでなく皆さんと一緒に働いていくつもりでおります。そのためにも早く皆さんとの距離を縮めたいのです」

ノエルの言葉にジョルジュとクリスが反応する。二人の表情を見るにあらかじめ話し合っていたことではないようだ。村長も驚いた顔をしていた。

新任の王女が働くと宣言したのだ。聞いていないのならそれは誰でも驚くだろう。しかも、昨夜まで本人すら自身の魔法の使い方すらまともに理解していなかったのだ。

何か考えでもあるのだろうか?

ノエルの表情からは分からなかった。


陽が落ち始めると辺りは徐々に辺りは暗くなってきた。

現代社会と違い電気の力で街の灯りが照らされているわけではないため星の光しか頼れる明かりがない。

俺の魔法で松明に火を灯し篝火として使う。松明はオークやゴブリンには集落の帰路に持たせるようだ。

ちゃんと共存できているのが窺える。


人間、オーク、ゴブリンと集まってくる。

人間が300人、オークとゴブリンがそれぞれ100人ずつくらいでキッタール領は約500人くらいで生活しているようだ。

全員が来るわけではないが500人が集まると多く感じつつも、学生の頃は一学年が400人くらいだったことを考えると生活する集団としては少ないのかもしれない。


ノエルの簡単な着任式のようなものが始まる。

村長からノエルが紹介され挨拶をする。内容は先ほど村長に話した内容と変わらない。

当然、それを聴いた村人たちは驚き少しざわめいた。

それはそうだろう。

その後、俺とブライとサラも紹介された。

火を魔法を付けたことで隠しておく意味もなくなり、この領の者たちしかいないということで魔法剣士ということも伝えられた。

火と水の魔法が使えるということも伝えると、皆喜んでいた。どうやら火も水も用意はできるのだが維持するのが難しかったり、緊急の場合に準備にするのに手間取ることを考えると今後は頼りにしたいということらしい。

とりあえず俺も役に立てそうなことも分かり安心した。


その後、食事と飲み物が村人たちに振舞われる。特に男衆には酒が喜ばれた。

聞けばこの村では一年に一度飲めるか飲まないかの貴重なものとのことだ。

そこでこの世界にも一年という単位があることを知った。どのような仕組みかはまたどこかで勉強しよう。


宴の途中で簡単な幹部の集まりの場も設けられた。

ノエル、ジョルジュ、クリス、俺は王族側として出席する。

村からは村長、人間であり鉱山の棟梁のドットという男、オークとゴブリンのリーダーのハイ・オークとハイ・ゴブリンが出席した。

ドットと男はまさに働き盛りの鍛えられた身体で棟梁の風格というものが滲み出ている。

オークやゴブリンの代表はハイという通常より進化した者で知能も身体能力も他の者たちより高くそれぞれの集落を統率している。


この集まりはノエルがこの村や地域として困っていることを聞いておきたいということで設けられた。

ドットからは労働力の不足、特殊な鉱山だからか既存の道具では工事が遅々として進まず、そもそもの道具も足りていない。しかし、何を使えばいいかも分からず調達する術もなく困っている、という意見が出た。

ただ、この地は王女の赴任地で工事が進んでないことや鉱物が少量しか取れないことは王都からも問題にされていないとのことだ。王都がこの地を鉱物の重要拠点に考えているなか、はたまた王女や騎士団の左遷の地に考えているのかいまいち見えてこない。

あとは全体として水を確保が大変で生活用水や農業用の水の確保が大変との意見も出た。特にゴブリンの集落は水場から一番離れていて季節によっては深刻なこともあるそうだ。

それと農作物を魔獣ではなく野生の動物に荒らされる被害も多く苦しんでいる要因だった。簡単な柵を用意してもほとんど意味がなく突破されてしまう。確かに森を抜けてからこの村に来るまでも広い大地が広がっているだけで、ここが人が生活している領土という境目がはっきりしているわけではなかったし、野生動物の被害に遭ってしまうのも分からないことではなかった。


ノエルは何か策があるのだろうか。

「少しずつ解決していけるように取り組んでいきます」

意見を集約した後にそんな言葉を口にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ