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10.北の騎士団

 俺が執政官補佐になることが決まり、ノエルたちの荷解きも慌ただしくも終わった。


 屋敷はかなりの広さだった。一階の一室は今まで通りジョルジュ夫妻が使う部屋があり、それと調理場と大型の食堂がある。それと倉庫と見張りが待機する部屋がある。

 二階は個室が八部屋もあった。一番大きな部屋をノエルが使う。ここは先代の王女が使っていた部屋とのことで家具も一式立派なものが備え付けられている。


 俺とブライとサラにも部屋が割り当てられた。ブライとサラは交互で一階の待機部屋を使うこともあるらしい。正直、ジョルジュだけでも警備としては事足りるようにも思うのだが、こういうのは形も大切で勉強も兼ねているとのことだ。


 三人とも部屋を割り当てられたものの、俺は転生したばかりの身で荷物は持ってない。この二人もほとんど荷物もなくすぐに自室の整理は済んだようだ。

 どうも口数の少ないこの二人の少年兵だがクリスが言うには実践経験がないだけで相当優秀とのことだ。


 ブライはパワータイプで大剣や大型の斧や槌など使いこなす。髪は短髪で身長はあるものの身体が全体が細く力持ちには見えないのだが、見えない部分がかなり鍛えられているのだろう。

 サラはスピードタイプで軽量の武器を使い相手を翻弄するのが得意とのことだ。肩くらいまで伸びた髪とキリッとした目付きで小柄なのもあり実年齢より幼い男の子に見えなくもない。


 将来有望な若手らしいが平民の出身で上流階級出身の同期の騎士たちに疎まれていて、北への派遣は本隊でも賛否両論あったらしいのだが、貴族たちの顔を立てた結果、この地への派遣が決まったとのことだった。

 表情を出さないからあまり気にしてないように見えるが、本心はどうかは分からない。


 騎士団についてはジョルジュにも説明をしてもらった。

 クリスから聞いていたように本隊と八方向にそれぞれ部隊の九つの部隊から成り立っている。

 本隊の隊長が騎士団長で一番偉く、次が副団長になる。

その副団長は九人いて、一人は本隊に残り残りの八人がそれぞれの地域の隊長になる。その話を聞いて呼び方がめんどくさそうだなって思ったが、それぞれの部隊で副団長や隊長など呼び方は分かれているらしい。呼ばれる側の好みだ。

 副団長たちの配属も騎士団の方が一人多いが基本的には王女たちの派遣先と同じルールだ。

 一番強い副団長は本隊に残る。次に国境の要になる東と西、兵力的には重要拠点ではないが有望な王女が派遣される南に強いものが就く。

 あとは王女と同じ順番で最後が北だ。


 ただし、北だけ王女と違う理由で派遣される。強さではなく政治争いで負けたもの、強いが重要拠点に派遣されるには相応しくないと判断されたもの。

 北の前隊長のジョルジュと現隊長のクリスだ。

 しかも国境に面しておらず魔障気も薄く魔獣の危険も低いという理由で隊というのに部下が付くこともほとんどない。どの部隊でも不要とされたものや若手が来るくらいで、派遣されてすぐに退団していってしまう。左遷先だ。

 では、そんなところに騎士団を置くこともないのではないかというとそうでもなく、王女が派遣される地に騎士団がいないのも建前もありよくないらしい。


 騎士団内での模擬戦の結果や実戦での成果から考えるとジョルジュは引退しているものの当時は四番目の強さで、今はだいたいその位置にクリスがいる。

 ジョルジュが言っているのだけなので実際の力はわからないが、魔獣との戦闘でクリスが強さは知っているつもりだ。

 それにクリスの実力を知ってなお、本隊の副団長、東西の隊長はそれより強いと認めるのだから相当の強さなのだろう。


「それならクリスは女性では最強なのですか?」

 何気なく俺はジョルジュに聞いた。


「最強の女性騎士は東の隊長だよ。クリスの姉弟子にあたる」

 そう教えてくれた。

 ただ、この配置も政治的な思惑があったとも聞いた。

現在の本隊の副団長と東西、そして南の隊長はそこまで実力に差はなく誰がどのポジションについてもおかしくなかった。その次がクリスだ。

 東は一番の隣国フィルニアの政治的な不安定さや魔王が滅ぼされているとはいえ魔障気が強くその影響で強い魔獣も発生しやすい。

 人にも魔獣にも警戒しないといけなく戦闘も多い。

 どうも東に女性騎士を派遣したのは、彼女たちより下の副団長を可愛がっている貴族の意向があった。要は戦闘が多ければ命を落とす確率も高く、死ねばその座に子飼いの騎士が就くと考えていたようだ。


 これは完全に矛盾しているのだが、平和ボケしている貴族は気付いてないのだ。

 クリス以上の実力者が派遣されて戦闘で命を落とす場所でクリスよりも弱いものが上手く立ち回れるはずがないのに、そんなことも分からず貴族たちは権力のことしか考えていない。

 この国は思ったより腐っているのか、国外との戦争もなく魔人や魔獣の脅威を経験してこなかったから平和ボケしてしまったのか、それともその両方か。とにかく思ったより良くない国のようだ。


 それともう一つジョルジュが教えくれた。


「私はこの地に来たことも王女たちも騎士団も恨んではいません。ただ、貴族どもは恨んでいますよ」

 優しい口調だがどこか迫力があった。やはりこの人も騎士団の実力者だ。


「今のことは忘れてください。そろそろ人が広場に集まります。行きましょう」

 ノエルの着任報告の時間になっていた。

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