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翌朝僕たちは出立した。
チカヤマさんが見送りに来て、この先の山道で盗賊が出るから気おつけるようにと、ご丁寧にフラグを立ててくれた。
で、こうなるわけだ。
「おうおうおう旦那さん方、金目の物置いて来な」ゾロゾロ10人くらい出てきて、その中の一人がごろ巻いた。
「兄貴、いい女いますぜ」と、一人が兄貴に耳打ちした。
「おう、そっちの女4人は置いてきな。可愛がってやるからよ」周りから下卑た笑いが起きる。
「4人?」アカトが不思議そうな顔をする。
兄貴が、カクさんを指差し「あっちは要らないぜ。おれは、男にゃ興味ないんでね」と、笑う。
「兄貴、結構いい顔してますぜ」
周りからの声を
「お前らどいつもこいつも節穴か、よく見ろや。顔をどんなに綺麗にしていても、あのぺったんこな胸見りゃわかるだろう。ありゃ、脱がせばおめぇよりデカイイチモツ持ってるぜ」下卑た笑いが兄貴から漏れた。
プチンと何か切れた音が後方から、振り向くとカクさんが、表現できないほど凄い顔になっている。
地雷踏んじゃったよ。僕知らないよ。どうか彼らに安らかな眠りを……。
カクさん、兄貴のところへ行き、ニタニタしている連中の目の前で、兄貴の股間をおもいっきり蹴り入れた。
兄貴が魂の抜けたような表情で倒れこむ。そこへ追い討ち、2発3発。白目向いて口から泡を噴く。
慌てて助けに来た奴らも同じ目にあう。
これはやばい、そう思ったのだろう後方の方へ助けの声を上げる。
「おかしら~、おカマが暴れて手に負えねー」その途端、当人も2メートルほど上空へ飛び落下、みんなと同じ末路となる。
「なによう~、私に対してのあてつけー」
現れたのはタイポイよりデカイ男で、ただならぬ気配を持っていた。そのことはカクさんも感じたのだろう、様子を見るようにして距離をとった。
「あ~ら、かわいいおかまさんだこと」その挑発にもカクさんは動かない。
うん?、タイポイの様子がおかしい。何故か、僕の後ろに隠れている。当然隠れられるわけもなく
「あら~、タイポイじゃない~」僕の後方に視線が向けられる。
「ひ、人違いです」タイポイが震えている。
「私に会いにきてくれたの~、うれしいわ~」毛むけじゃらで、なよなよしている。まるで熊のオカマだ、気持ち悪い。
「だがら違うと言っているだろう。人の話を聞けー」タイポイが壊れた。
「そうお、ざんねんね~。で、どっちよ、そこのハンサムな方それともそのちっこい方」
「何言ってるんだ」
「決まっているでしょう。あんたの彼氏よ、か・れ・し」と、(^_-)-☆。
うへー、みんながタイポイを変な目で見る。
「違うからな、俺そういうんじゃないからな」タイポイが焦って言い訳するほど、みんなはドン引きしていく。
「ねえ、私はグリズグマ・ベアっていうのよろしくね」
相手の挨拶にジェットキが「俺はジェットキ」と、自己紹介する。
「あら、ハンサムさんはジェットキというのね」と、(^_−)−☆。
ジェットキが身体のあっちこっち掻きながら、助けてと目で訴えている。
「で、こちらは水戸 赤門だ」と、タイポイが言う。
「なに!」急にグリズグマの声に変化が現れ、鋭くなる。
「ミト アカトだ」と、変化を感じ取ったアカトは、自ら名乗る。
「てめー、コウル・マイン・キング様を知っているか」声がさらに鋭くなり、殺気まで含まれていた。
「ああ、知っている」アカトは、冷静に感情を殺した物の言い方をした。
グリズグマの殺気が頂点に達し、アカトを襲いかかる。
「てめーが、キング様を殺したのか!」巨漢を思わせぬ動きだ。
アカトは襲いかかる斧を右手の人差し指一本で受ける。
予想外の事に動きが止まるグリズグマであったが、慌てて距離をとる。
更に動きが鋭くなり、叫びながらアカトを襲う
「何故殺した。卑怯者」
無数と思われるほどの斧がアカトを襲うが、右手一本だけで全て受け止める。
一旦距離を取るグリズグマが、悔しさに流れる涙を拭きもせず、叫ぶ。
「何故届かぬ。こんな卑怯者に、何故だ、何故届かぬ」
「コウルは、貴様の何だ」アカトは何も無かったような口ぶりだ。
「卑怯者が、気安くその名を呼ぶな」グリズグマはまた襲いかかった。
だが、一匹のアリが象に襲いかかるほどに惨めな結果となった。
自分の無力さに嘆くグリズグマに、アカトは言った。
「悔しいか、俺はもっと悔しい」嗚咽が混じる。
「コウルは俺の友だ。俺の友が戦っていると言うのに、ここにいる俺の気持ちがお前にわかるか。今すぐにでも駆けつけたい。それが出来ない俺の気持ちがお前にわかるか。友を助けることができるなら、僕はこの命をくれてもいい」アカトは一気に感情を吐き出した。目にも止めどない涙が溢れていた。




