ープロローグー
我々は、気づかぬうちに数多の信仰に奪われ、救われている。
信仰は、何時しか「掟」という形で体現され人々の生き抜く規則となる。
掟は、何時しか「風習」となり、人々を覆う鉄格子となる。
風習は、何時しか「慣習」となり、社会という名の抑制剤となる。
信仰は正義か悪か私には、わからない。だからこそ、身に起きたことの記憶が薄れないうちに、私は筆をとり真実を綴る。多くの方々に言い伝え、どうか皆様に判断して欲しい。
一。宗一。
「僕の名を呼ぶのは誰だい」
一。宗一。
暗闇の中、途切れ途切れだが、か細くとも、どこか不屈の感情を含めたような声で僕を呼びかける。
「母さんなのかい」「嫌違う」母さんにしては声の調子が1トーン程低い。
少年は恐る恐る目を開けて見る。
篝火の光がうっすらと灯された薄暗い部屋に1人の少年が正座をしている。
ああ。あれは10年前の僕だ。一人では何も決める事ができず、何かにすがり、流されている僕。
あれから、あの村。見晴村はどうなったのだろうか。あの頃の僕は身も心も幼すぎた。起きている事象に順応することができていなかった。嫌、順応したくなかったのか。そんな僕は、見晴村からしたら「不適格」なのだろうか。
一。宗一。
「わかったよ、僕もそっちに行くことにするよ」みんなにお別れができなかったことだけが気がかりだけど、もうすぐそっちに行くから安心して。
「 母さん 」




