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生産者のその後

次で最後です。

 瓦礫の中から瀕死のリリアが見つかったのはシヅキ達が病院に搬送されてから丸一日経ってからだった。死んではいないが怪我が深く、もう二度と立つことは叶わないと医師に宣告を受けた。

 ハイドラは死んだ。シヅキが止めを刺し、決着した。その後はドーピングの副作用と蓄積した疲労、ダメージのために意識を失い、人形兵を撃退したレオンの部下たちに発見された。


「今回の戦闘、死者は五千人を超えた。リリアは重傷、エステルは……、どうしてしまったんだ? まるで別人だ」


「……分かりません。ハイドラを倒してもあの状態が治らないということは、もう治らない可能性があるんでしょうか?」


「ああ、医者からはそう言われた。まあ、お前が相手をすれば比較的情緒は安定するんだが、もう社会復帰は不可能だろうな」


 シヅキはそれを聞いて暗い気持ちになった。もうエステルは治らない。

 更にシヅキには不可解なことがもう一つあった。ロベルトの事だ。

 ……誰も、その名前を聞いたことがないというのだ。シヅキは何かの冗談だろうと説明しようとしたが、そんな自分自身どんな人だったかを覚えていないことに困惑していた。

 ただ、確かにいたことだけは覚えている。そして自分たちを守ってくれたことも、確かに覚えている。


「……レオン教官、あいつの遺体は?」


「ハイドラか? 奴の亡骸は魔人の大口に放り込んだよ。灰すら残らないようにな」


 そう言うとレオンはタバコの火をつけた。彼は苦い表情を浮かべていた。


「部下がまた、何人も死んだよ。俺の指示がもっと的確なら、被害が減らせたかもしれない……、そう思うとやりきれない」


「守ったじゃないですか。ちゃんと」


「そうだな。だから死んだ奴らも浮かばれるよ。……それで、お前はどうするんだ?」


 レオンはそう言ってシヅキに視線を向けた。シヅキはそれから目を逸らすと呟いた。


「リリアの事、エステルの事、解決しないといけないことはたくさんですが、とりあえず俺はこの力と決着をつけないといけません」


「……ハイドラと同じ力なんだよな? 俺は別に残していてもいいと思うが」


「これは人間には余る力ですよ。それこそ、俺の浅い知識でもあれだけの武器が扱えたのなら、もっと強力な武器も作れます。ないほうがいい」


 理論上では核兵器すら作成可能、自分はハイドラのようになる気はなかったが、それでもいつどうなるかは分からない。ないほうがいいに決まっているのだ。


「……そうか。それならいいんだ。お前は、普通の人に戻るんだな」


「はい。どうせ、どんなものを作れたって誰も守れない力です。それに、物作りは手があれば、手が無くても、することはできますから」


 シヅキは病室の布団から見える外の景色に目を向けた。外は曇り空だった。

 すると、病室のドアが開いた。そして入ってきた人物は足早に駆け寄ってくる。それだけでシヅキには誰だか分かった。


「シヅ、怪我は?」


「もう大丈夫さ。すぐにでも退院できる」


「よかった。それなら殺し合えるね」


「……エステル、それは……」


「あ、そうだよね。あのリリアとかいう奴を先に始末しないと……」


「エステル!」


 最近彼女はずっとこの調子だった。エステルの中の愛の形はどうも殺し合いや傷付け合うことに直結しているらしく、執拗にそのことを要求してくるのだ。

 おまけに、この前お見舞いに来たテトラを半殺しにする事件があったりともはや手の付けようがないほどに彼女は豹変していた。


「普通に、せめて普通に愛を語り合うくらいなら」


「普通って何? それじゃあ伝わらないから、伝わるように言っているだけだよ? 私が誰かを殺そうとすればあなたは止めに入るし、その中であなたに殺されればシヅの中に私は生き続けるんだよ?」


 レオンはドン引きしていた。豹変という言葉すら生ぬるい変化。下手に話しかけようものならば即座に殺されそうになるということを彼は悟った。


「まあいい。エステルとは後でゆっくりと話し合うとして、レオン教官」


「な、なんだ?」


「この力とおさらばする前にやっておきたいことがあります。手伝ってください」


 シヅキの言葉にレオンはうなづいた。というより、エステルに睨まれてうなづくほかなかった。拒否すれば殺される可能性があるのだ。


「何をやるんだ?」


「今ならできると思うんです。リリアを鬼の運命から解放することが」


次はもっと上手くかきたいです。

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