生産者の再出発
続きを書く気はありません。中途半端な終わり方で書き終わりましたが、割と満足しています。もっとも、唐突に書きたくなる時はあるかもしれませんが。
「人間様? どうしたんだ?」
病室の布団に横たわりながらリリアは微笑む。しかし、切り落とされなくなった右足と顔に残る傷がその笑顔を痛々しく引き立てていた。
「リリア、お前はまだ人間に戻りたいと思うか?」
「それは、今でも思っているが……。何か手がかりをつかんだのか?」
「いや、手掛かりというか、ハイドラとの戦いの中で作成能力が向上したからもう作れるんだ」
「……それは、何とも運のいい」
リリアはそう言うと目を逸らす。皮肉だということなど顔を見なくても分かった。
「それで、今からもしかしてやってくれるのか?」
「ああ、最後に約束だけは果たしておこうと思って」
「そうか。ありがとう。やっと夢がかなう……。いや、少し未練が今はあるが、それでも私は人間になりたい」
「未練?」
「私は、この通り歩けない。さらにそこで力も失ったら、私はいよいよ役立たずだろうな。もうお前の役に立てないと思うと、悲しい。だから、今すぐなりたいかと言われたらそうでもないんだ」
シヅキはかける言葉がなかった。今までは鬼の力に苦しめられてきた彼女が、今度は仲間のために自分を苦しめた力を受け入れようとしているのだ。
「なあ、私が人間になったら、どうすればいいと思う?」
「そうだな……。俺はなってから決めてもいいと思うが」
「そうか……。……ところで物は相談なのだが、私が人間になって役立たずになってもそばにいてくれるか? お金とかで迷惑をかけることになると思うが……。勿論、その場合この体は人間様のものだ! 好きに使ってくれて構わない」
「……その言葉に、二言はないか?」
シヅキは真剣な表情で聞き返した。その反応にリリアはびっくりとしていたが、覚悟を決めたように顔を真っ赤にしてもじもじし始めた。
「ああ、ない」
シヅキはそれを聞いて安堵の息を吐いた。
「夢があるんだ。今度は超能力なんかに頼らずに、人のためになるものが作りたい。そして、俺が作りたい人のためになる第一号製品は俺義手義足だ」
「? それは、なんだ?」
「腕や足をなくした人に機械などを使って物を掴めるようになったり歩けるようにしたりする道具だ」
「それは……」
「お前さえ良ければ、俺の夢に付き合ってもらう。勿論エステルも引っ張っていく。あいつのことはテトラに全面的に一任されたし、発作のように人を殺そうとしなければ比較的従順だ。だからあいつは助手でお前はその、言い方は悪いが実験台だ」
「ああ……、ああ! いいぞ! 薬物でも人体実験でも何でも来い! そうか、私にもまだやれることがあるんだな……」
「流石にそんなマットなことはしないが、そうだな、あるさ。やれること」
シヅキはそう言うとリリアのベッドに腰を掛けて彼女に背を向けた。
そして、心に引っかかるものを語り始めた。
「リリア。ロベルトって覚えているか?」
「……いや、全然。どこかで会ったのか?」
「……何でもない。俺もはっきりとは覚えていないんだ。ただ、とても大事な人のような気がするんだ」
「そうか。お前がそう言うのならそうなんだろう。それなら私にとっても大切な人だろうな。……どれで、その人がどうかしたのか?」
「そいつを見つけなければいけない気がしているんだ。ま、お前たちが安定し始めたらだけどな」
そう言ってシヅキは布団を降りた。
「さて、準備があるから行くよ。また後でな」
「ああ。あ、ちゃんとエステルの手綱を握っていてくれよ? 今私はあの子に目の敵にされているから」
「わかってる」
シヅキは苦笑いを浮かべた。穏やかな会話、静かな空間。ついこの前までは当たり前の世界。
しかし、今となってはかみしめるほど貴重なものとなってしまった。
シヅキは小さな幸せを感じながら病院の廊下を歩いていた。
「……シヅキ。これから大変だろうが、まあお前なら何とかなるだろ。店を頼んだ」
シヅキは振り返り、あたりを見回した。廊下の向こうに黒いマントを羽織った人が一人シヅキに背を向けて歩いているのが見えた。その人物が声を掛けてきたのかは分からないが、シヅキにとってはとても親しい人の声に思えた。
そしてやがて、その人の影は見えなくなった。
今まで読んで下さった方、本当にありがとうございます。練習も兼ねての作品だったので自分でも満足できる出来ではありませんし、面白いかどうか微妙でしたが、自分なりに一生懸命書けて楽しかったです。
次の作品はある程度練り込みを入れて納得がいったら投稿します。今やってるのは不定期連載で暇つぶしでやる予定です。
では最後に、皆様良い一日を。




