生産者の攻防
そろそろ正真正銘の最後です。はやいとこ終わらせて書いている作品を一本に絞りたいです。
シヅキの合図とともに大量に作られた大砲が火を噴いた。現在リースで使われている大砲よりも何世代も上の性能を持つ大砲の砲撃にハイドラは苦戦を強いられていた。別に彼が砲撃に耐えきれないわけではない。しかし、砲撃だけに神経を集中させたら次にどんなものを使われるかが分からない。そのため、なかなか集中できずにいた。
だがハイドラもいつまでもやられているわけではない。彼は奥の手ともいえる神器を取り出した。
「時間制御の神器。さあ、針を狂わせろ!」
ハイドラが宣言すると時計の形をした神器が青く光りはじめる。すると、神器の中にある時計の針がカタカタと小刻みに震えはじめた。
その瞬間、ハイドラの周りの空間に異変が起きた。
砲弾が加速して彼方に飛んでいく。かと思いきやノロノロとういているもの、逆に元来た進路を逆走するもの、ぴったりとその場から動かなくなるものなど様々な変化が訪れた。
「……時間制御の神器は私の持つ者の中でも最高位のもの。ありとあらゆる時間を狂わせることでその空間にいる者に負荷をかけることが出来る」
ハイドラはそう言って不自然な挙動をする土煙をくぐって行った。しかし、そこにいるはずの二人がいなかった。
「何!? 奴らはどこに……」
シヅキ達は砲撃開始とともに近くの建物の中に退避していた。もっとも、ハイドラの神器の拘束から逃れられたのは狙ったわけではなく偶然の産物ではあるのだが。
「……爆音から逃れるために建物に逃げ込んだら、結果として助かったようだな」
「うん。あれ、まともに喰らってたらどうなってただろう?」
「……ただでは済まない。まな板の上の鯉みたいに真っ二つになっただろうよ」
そう言ってシヅキは肩から力を抜いた。思った以上に負荷がかかっているため、体がだるかった。魔力の消費が半端ではないのだ。
「早いとこ決着をつけないと、ヤバいな……」
「辛い?」
「ああ、辛い。死ぬほどだるい。けど、弱音も言ってられない」
そう言うとシヅキは再び対物ライフルを用意した。
「……ここからじゃ反撃を受けやすいか。もっと高いところに行かないと」
「シヅ、肩かすよ」
「すまん」
シヅキはエステルの肩を借りて建物の屋上を目指した。外では血眼になってハイドラが探していることだろう。仮に神器のサーチによって見つかっていたとしてもうかつには攻めてこないはずだとも思った。
「……こんなのが最後になったら、きっと最悪だろうな。お互い」
狙撃に成功しても、失敗して殺されても、異能バトルの豪快さも爽快さもない泥沼になることは見えていた。ここにあるのは殺しと狂気と憤怒だけ。そこに優しさなど微塵もないのだ。
「頼むから見つけてくれるなよ……」
シヅキは祈った。この一撃が相手の脳天を撃ち抜き、再生の間もなく殺しきることを。
……。
しかし、シヅキの祈りは届かなかった。
「……掃滅の神器よ。ネズミをあぶりだせ」
ハイドラが取り出した扇状の神器を彼は一煽りした。その瞬間、ハイドラを中心とする爆風が吹き荒れて廃墟のことごとくをなぎ倒していった。
そして、風が止むころには何もなくなっていた。
無論シヅキ達もそれに巻き込まれて瓦礫の中にいるのだろう。
「……やり過ぎたか」
ハイドラは死体でもいいからシヅキ達の顔を拝みたかった。辺りを見渡し、そして一歩踏み出した。
………………………が、それ以上足が進むことはなかった。
ハイドラの胸には大きな剣が、ちょうどロベルトが使っていたような剣が突き刺さっていた。
「……おのれ。ロベルト……、生きて、いたの、か……」
「……いや、死んだよ」
「ならば、なぜここにいる!」
「なんてことはないさ。死神との契約でな。俺の来世を前借したんだ」
ロベルトはボロボロな姿でそこに立っていた。
ゾンビとも見間違いそうな風貌はハイドラに恐怖を与えた。今まであってきた人間の中でもハイドラがロベルトはとてつもない狂気に満ちていると彼は思った。
「シヅキ達には休んでもらうとして、第二ラウンドと行こうか」
ゲームが楽しすぎて小説が書けない。




