生産者の同類
エロくならんかもしれへん
部屋の真ん中に置いてある豪華な机といすはその人の権力を象徴するかのようであった。
ここはリース市長の執務室である。
彼は国王に直々にリースの市長に選任された共和国きっての実力派であり、そして同時に無類の変人であった。
「市長、ムツキシヅキさまがお目見えですがいかがいたしましょうか?」
「通せ、そしてもてなしの準備をせよ」
「はい」
秘書にそう告げると市長、アドフは満足げに口角をあげた。
「面白くなりそうだ。実に面白くなりそうだ。実に実に面白くなりそうだ!」
シヅキは綺麗なお姉さんに導かれて市長のいるという執務室の前に通されていた。
「どうぞお入りください。市長がお待ちかねです」
シヅキは緊張した。
勢いでここまで来てしまったが、何か準備してくるべきであっただろうかと勢いに任せて行動してしまったことを悔やんだ。
しかし、悔やんでいても仕方がないので取りあえずシヅキは執務室のドアを開け、中に入った。
執務室の中はとてもきらびやかで豪華絢爛。そこに置かれている家具などは恐らく名のある職人が手掛けたに違いないであろう程に精度の高い作りをしていた。
そして、豪華極まる家具の向こうにその彼は座っていた。
かなりお腹が出ており、メタボであることは一目瞭然。頭は剥げており年もそれなりだろう。
だがそのような間抜けな見た目に反してその人の纏う雰囲気は恐ろしいほどに重厚感をまとっていた。
市長はシヅキを見るとにやりを口角を若干上げた。
「ようこそ、我が城へ。君がムツキシヅキ君で間違いないね?」
部屋中の隅々に声が響く。
とても聞きやすく耳に残る声であった。
「はい、ムツキシヅキです。今回はこのような面白……、とても素晴らしい仕事に誘っていただき光栄に思います」
「三十点だな、その挨拶は。さっき言いかけた本音、私に遠慮せずに言ってみるといい」
「……すごく面白そうなイベントの重要なものを作れると聞いて飛んできました」
シヅキがそう言うと市長は満足げにうなづいた。
「そうか、お前はこのイベントを面白そうだと思うか? 私も面白そうだと思って企画した」
そう言うと市長は重そうに腰を上げた。
「女性の裸体というものは美しくまぶしい……、そしてそれを恥ずかしがる姿を眺めるのは何とも背徳的な気分になる。人という生き物が変わらない限り、この事実は恐らく心理だろうと私は考えている」
市長はゆっくりとシヅキの前まで歩いてくる。
「だから私はこれを企画した。男どもの欲望、満たしがたい欲求を満たすためだけの、言ってみれば自己満足みたいな祭りごとだ。なぜ水着コンテストなのかというのは予算的な要素と公で出来る要素を吟味した末にたどり着いたとだけ言っておこう。大人の都合だ」
シヅキは別に聞いていないのに丁寧に市長は事の経緯をしっかりと話してくれる。シヅキは親切な人だなと思った。
「私が君を起用しようと思ったのは、この前のマザーの一件を知ったからと、君には女性の知り合いが多いという点が決め手となった」
別に聞いていないのだがそうだったのかとシヅキは思った。
この市長、別に聞いてもいないことなのにぺらぺらと話してくるのでシヅキが質問しようにも先に答えが出てきてしまう。
シヅキの喋る隙がなかなかなかった。
「さて、君の仕事はこちらにファイリングされているから今はいいだろう。そんなことよりも、君はどこまで行きたいかを私は君に問いたい」
「どこまでと、言うのは?」
「規制のぎりぎりまで、様々な事情を考慮し、出来る限りそのエロスの行けるところまで。私は挑みたい。きっとその先に、欲望を満たすものがある」
シヅキは市長の言葉を聞いて確信を得た。
(なんだかよく分からんが、一つだけ言えることがある。この人は俺と同じくらいのドスケベだ)
と、シヅキが市長の評価を下した時、部屋のドアがノックされた。
「入りなさい」
中に入ってきたのは恐ろしいくらい目の濁った中年男性であった。背丈はシヅキの頭一つ分くらい大きいその姿に思わず圧倒される。
「市長、私を呼び出すとはどのような件で」
「うむ、君にはこの少年、ムツキシヅキ君と仕事をしてもらいたい」
いきなり市長はまじめな表情をしたかと思うと男性にそのようなことを言った。すると明るさまに男性は目元を険しく釣り上げた。
「はい、いいですよ。私はそれでも、いい機会でもある」
「そうか、では頼んだぞぜひともよい水着コンテストにしよう」
その日はそれで解散となった。
市長がなかなか話しの合いそうな人なのは仕事の励みになるのだが、シヅキにはどうしても気になるところがあった。
名前も名乗らずに消えた中年男性である。
シヅキを一瞥した彼は明らかに嫌悪感に満ちた視線をしていた。
「エロい話苦手なのかな?」
この時はそうとだけしか思わなかったが、後にこの男との一件がシヅキの在り方を大きく変えることになるということを彼はまだ知らない。
新しいストーリーの構想が浮かんでしまい早くそっちに取り掛かりたいのでかなり早めに進めます。
なんか急展開とか思っても許してください。




