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生産者のフラストレーション

ゴールデンウィーク、小説も書かずにずっと遊んでました。

シヅキは悶々としていた。

理由は何かというと何もできないということにある。

なぜか、そんなことは考えるまでもない。シヅキは本来であればマザーの重い一撃を受けたために生死の境さまようほどの大けがを負っているのである。

それがどういうわけかシヅキは何ともなかった。

あの死神が何かしたのかとも思ったが、確証を得られる根拠がない。シヅキはとりあえず無傷でよかったなくらいにだけ思うことにした。

だがそんなふうに楽観的に考えているのは彼一人だけであった。

医者も仲間一同はシヅキがいくら無事だと言っても全く耳を貸そうとせず、結局シヅキは未だに病院のベッドの上にいた。勿論、けが人ということになっているので物作りも禁止されている。

「日本に帰りたい……」

シヅキは光の失われた視線を虚ろに部屋中にはわせていた。

戻ってきてから一週間、シヅキは何も作っていないし部屋から出ることも禁止されている。

そのあまりの過酷さにシヅキは再び日本に帰ることを夢見ていた。

出てくるご飯は味が薄く、トイレも一人では行かせてもらえない。

点滴などいらないのに念のためとまだ左腕に刺さっている。医者の顔を見るなどもううんざりになるくらい何度も何度も見た。

攻めて何か物を作ることが出来ればこの苦行にも耐えることが出来るのだが、そんなことは叶わない。

その事実がシヅキを軽く絶望させていたのであった。


昼時になった。

いつもはご飯だけが運ばれて来るのだが、今日は来客もいた。

「シヅ、容体はどう?」

「この病院からだしてくれればすぐにでも改善するぞ……」

エステルは学校帰りなのか珍しく制服を着こんでいた。

「シヅ、あれだけの大けがをしたんだからきちんと直さないと。林檎食べる?」

「くれ」

エステルが持ってくる果物が最近の楽しみとなっていた。

それほどにここの飯は味気ない。

エステルは流石に刃物の扱いに慣れているのかするすると皮をむいていく。

今でこそ落ち着いて話が出来ているがシヅキが起きたばかりの時のエステルはひどいものだった。

当然のように病室に自分も住もうと荷物を持ってきては看護師さんたちに強制退去させられていた。挙句の果てにシヅキはまだ体が治っていないからと彼の意見ガン無視で入院の帰還を伸ばす暴挙に及ぶ始末である。

毎日のようにいろんな人がお見舞いに来るがエステルとロベルトは今のところ皆勤賞である。

それだけ大事に思われているということなのだが、今のシヅキにとってはその好意すらも苦痛だった。

テトラはシヅキがすでに健康体であることを見抜いていたが口には出さずに黙認していた。軍隊のほうからは謝礼も兼ねてと入院費の肩代わりをして貰っている。

ありがたいがそのせいで逃げにくい。

みんなが慕ってくれているのになぜか四面楚歌のような状況であった。

シヅキは目の前に出された林檎をシャクシャクと咀嚼する。

そんな時、もう見飽きた病院の先生が病室に入ってきた。


「シヅキ君、怪我が本当に治っているようなので退院していいですよ」


「先生……、今までありがとうございました!」


シヅキは人生で出会った中で最高の医者である目の前の先生に深々と頭を下げ、そして荷物を手早くまとめ始めた。

「先生! シヅの怪我は本当に感知してるんですか?」

「はい、間違えないかと。まったく驚きの回復力です」

「じゃ、俺は帰りますさようならもう来ません」

シヅキは光を取り戻した瞳を輝かせながらダッシュでロベルト雑貨屋に急いだ。



「もう退院か。早いもんだ」

ロベルトはシヅキを見るなりそう感想を残したものの、特に驚いたような素振りは見せなかった。

エステルはまだ心配そうな表情をしていた。

「そう言えばシヅキ、こんなものが届いているぞお前に」

ロベルトは手紙のような物をめんどくさそうに投げてよこした。

「扱い雑だな。預かりものなんだろ?」

「おっさんから渡されたんだよ。女の子からの手紙ならモチベーション上がりまくりなのにな」

ロベルトは相変わらずだった。

シヅキははいはいいつものいつものと心の中で思いながら手紙の封を切り、そして目を見開いた。

「リース市長が主催する水着コンテストに使う水着の作成依頼だと!?」

「シヅキ、俺はこの町が好きだ。何かできることはないか?」

さっきまで尻を掻きながら欠伸をしていたおっさんがイケメンボイスで語り掛けてくる。

シヅキはそんな卑しい、もとい、いやらしいおっさんを無視して仕事の内容を確認する。

材料費は先方が持ち、こちらはデザイナーさんと相談して水着を作成すると言った内容が書かれていた。

「な、なんて神イベントなんだ!?」

作る側も見る側も幸せになれる夢の国のようなこのイベント、男であれば誰もが笑顔になれるであろう。

シヅキはリース市長の元に走った。

久しぶりの仕事はシヅキの欲望を満たすに足るのであろうか?

そろそろ新しい話を書きたくなってきました。

多分そろそろ区切りのいいところを見つけて完結にします。

後五、六話くらいかな?

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