鬼の渇望
評価ポイントが付いているだと!?
まままままままままさかこんなに早く付くとは思いませんでした。
ブックマークしてくれるだけでもありがたいのに評価まで、しかも4,4となかなか高得点!
もう頭が上がりませんね。
ありがとうございます!
シヅキ達はリリアが勝ち取った有名料理店の食べ放題券を手に腹を満たそうとしていた。
「あの、俺も参加していいんですか?」
アオイは困惑していた。
部外者であるというのと、エステルのこともある。
「アオイさんには参加してほしいです。私、すごく失礼な態度取っちゃったし」
「いやそれはいいんですが……、というか腕は大丈夫ですか?」
エステルは腕をまくった。
アオイの心配はエステルが腕を見せたことで消えたようだ。
「シヅキ、君の作った薬かな? 君はすごいね。何でも作れる」
アオイは感心したように話す。
「ま、これしか取り柄がないからな」
「謙遜するなよ。どんなものも作ることが出来るのなら何でもできるようなものだろ」
シヅキはまるで女性にべた褒めされたようなとてもこそばゆい気持ちになった。
だが勘違いしてはいけない。アオイは男である。
「人間様、今日はいっぱい私をほめたたえるがいい。なにせ、この私が優勝したんだからな!」
リリアはというとさっきからまるで地域の大会で入賞した子供の様にほめてほめてオーラを出していた。
いい大人だろうにとシヅキは思ったが、とりあえず機嫌を取っておかないと自分だけお腹すいた状態になりかねないのでほめておくことにする。
「凄い凄い、よくやったぞ!」
「ああ、なんかいい年して子供をほめるみたいに褒められるのもいい!」
自覚はあったみたいだが新境地を開拓していた。
テトラは立場がなさそうに後ろをついて来ていた。
「あの、テトラさんがしゃべらないと不気味なんですが」
「え、私いらない子じゃないの?」
「それならとっくの昔に送り帰していますよ。話に参加してください。ロベルトも」
「俺もですか」
「というかロベルト、一番後ろで何見てるんだ? まさかとは思うが……」
「違う! 断じて女性陣がいい尻してんなとか思ってない! 俺はただアオイ君が本当に男かを確かめてただけで」
「詳しく」
そう、シヅキやロベルトには確かめなければならないことがあった。
「どうだったんだロベルト! 真偽は……」
「間違いなく男だ。腰が女性ではありえないくらい狭い。ほぼ確定だと思う」
「なん、だと……、つまり俺は男にドキがむねむねしたという黒歴史を……、あびゃあ……!」
シヅキはショックのあまりにばたんと倒れた。
もしかしたら初恋にすらなっていたかもしれないほどのドキドキを忘れない。
そしてその相手が男だったショックはトラウマレベルの衝撃となった。
今までの人生、思えばろくなことがなかったけど、これほどバカバカしい話もないだろうとシヅキは涙を流した。
やけ食いした。
シヅキはひたすらにやけ食いした。
余談だがどうもアオイはこういった話にはなれているらしい。シヅキは初恋になりかけた程度だったが、実際に告白してアオイの目の前で失神した男がかなりの数いるようだ。
その後は友達としてやっていきましょうと苦笑いを浮かべるアオイと握手をし、その日は宿に帰った。
そんな帰り道だった。
リリアが口を開いた。
「やはり人間はいい。どれだけ力を持っていても、こうして楽しく過ごすことが出来る」
リリアが言ったとの意味を理解しているのか、ロベルトは無言で彼女に視線を向けていた。
「そう言えば、リリアってなんでシヅのことを人間様って呼んでるの?」
エステルが疑問を口にする。
シヅキも前聞いた時はあまりよく教えてもらえなかっただけに気にはなっていた。
リリアはその疑問の答えを口にする。
「人間様は、私の可能性だからだ。だから敬意をこめて、私の人間に対するあこがれも含めて、そう呼んでいる」
「えっと、可能性というのは」
シヅキは何の可能性を自分に見出したのか疑問だった。可能性を抱いてもらうには自分はまだまだ弱くて未熟だ。だからリリアの言うことがシヅキは解せなかった。
「私は、君ならば私を私でなくしてくれるという可能性を見たんだ」
その言葉にその場にいた全員が首を傾げた。
その様子を見たリリアは頭を掻いた。
「難しい話ではない。私はただ、人間になりたいんだ」
私を私でなくしてくれる。つまり鬼である自分を否定したいとリリアは言うのだ。
「あなたは、そこまでして人間になりたいの? 今の自分に誇りはないの?」
テトラがややきつい口調で問いを投げる。
その言葉を聞いてリリアは目を伏せた。
「ない。私は鬼である自分が嫌いだ。だから私は私を否定する」
「どんな形であれ、自分を偽るなんて出来ない。どんなにどうしようもない存在でも、個として生命を受けた以上は、定義上の名目が変わったところで何も変わらない」
「そんなことは承知の上で行っている。承知の上で、それでも私は人間になりたい」
テトラはリリアの在り方が気に食わないようだった。
それもそのはずである。なぜなら彼女の生き方は自分のどんな姿も受け入れ、ありのままの姿で生きているのだ。自分に対して不満もあるだろう。失望もするだろう。それでも彼女は絶対に自分を曲げないだろう。
「……そこまでの覚悟があるなら、いいわ」
テトラはこれ以上突っ込むのもバカバカしくなったのか、それ以上話を続けようとはしなかった。
リリアは再びシヅキに向き合った。
「人間様。あなたはまだ未熟だが、生産者としての力は本物だ。これから成長すれば恐れく、種族の壁すらも超えることのできる道具を生み出すと私は信じている」
リリアは強い信念を持っていた。
人間にどれだけ憧れて、どれだけ自分に絶望すればこれほどまでに自分を否定できるのだろうか。
どうすればそこまで自分を殺すことに強い信念でもってぶつかれるのか。
シヅキはリリアの在り方に困惑した。
今までは言われるがままに、作りたいという願望のままに物を作ってきた。
しかし、リリアの話を聞いてシヅキは本当にそんなものを作ってもいいのかと自問した。
結局答えは出ないまま、シヅキは眠りについた。
シヅキは妙に苦しくて夜中に目が覚めてしまった。
「なんだ、この息苦しさは……」
何かが体に抱き付いているのだろうか?
腹のあたりが苦しい。
シヅキは布団をめくってみた。
そこには意外な人物がいた。
「え、エステル様……、あなたなにやってんの?」
寝ているため寝息以外聞こえないエステル。
いつの間に来たのやら。
「シヅキ、静かにしないと起きるぞ」
隣から声がかけられる。
同室のロベルトだ。
「エステルの奴、つい三十分前位にやってきてな。鍵貸してくれって寝る前に言われたからなにするのかと思えば……」
今日は色々とあったから疲れているのだろう。
全く起きる気配がなかった。
シヅキはたたき起こすのも気が引けるので結局一緒に寝ることにした。
最近のシヅキはエステルといると日本の弟妹を思い出す。
見た目がそっくりというわけではないが、お兄ちゃんっ子な所がかなり共通している。
(……あの死神に会えれば今の日本のこと聞けるかな?)
そうはいっても相手は死神。
会うためには死ななければならず、そう簡単に会うことはできない。
今のところは諦めてシヅキは眠りについた。
更新ペースは平日が落ちて休日に増加する形になります。
というわけでこれからも暇なときにでも見てください。
異世界転生とかいうテンプレを使ってるくせにテンプレとは少し外れたストーリー構成ではありますが、どうか見放さずに見ていただければ幸いです。




