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来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第2章 彼女の熱意、変わっていく親父、旨くなったラーメン

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8 あの真剣で不安げな顔

 ちゃんと作られたラーメンは、基本的にマズくはなりません。

 マズいラーメンは、ちゃんと作っていないんです。

 ラーメンとは、そういうものです。

 取り敢えず、スープをすすってみる。

「…あれっ?」

 不味くは、ない。

 決して美味いとは言えないのだが、悪くはない。

 来々軒の、脂ぎった味噌汁のようなスープというベースに変わりはないのだが。

 スープが「水っぽく」ない。

 きちんと「さっぱり系」に収まっているのである。

 元々味噌ラーメンは、誰が造っても一定の味に収まるものである。

 「味噌」という素材が、それだけでかなり味が出るので、ラーメンとしての味が単一化するのが長所であり、同時に弱点でもある。

 だから、できるだけ腕の「差」がでない味噌ラーメンを、来々軒では「いつもの」注文としているのだが。

 だがこれは、スープのベースとなる塩ラーメンを食べてみたくなる、そんな期待感を呼び起こす味である。

 黄色くちぢれた麺をすすってみる。

 不味くない。

 伸びきっていない。

 麺本来の、シコシコ感がしっかり残っている。

 小麦粉と鹹水の、麺独特の風味が口の中に広がっている。

 特別な麺など使っていない、どこにでもある普通の麺なので、美味いというわけではない。

 だが、これなら充分に「美味しい」麺である。

 具であるネギも、前から切ってあったものではなく、出来る直前に刻んだようで、シャキシャキ感がアクセントとなって、食が進む。

 メンマもナルトも、下ごしらえが施してあるようで、スープのあっさり感に濃い目の味を加えていい感じである。

 チャーシューも、ダシを取った後の使い廻しではない。

 下味の染みた、ジューシーな肉本来の味わいだ。

 これはコストの関係で、普通のラーメン屋では中々味わえない風味である。

 本来は「チャーシュー麺」として出される別メニューであり、店によっては名前だけ付けていても、ダシガラなチャーシューに下味を付けて、枚数を乗せる事で客をゴマカす所も多い。

 ただの味噌ラーメンだから、一枚しか入っていないのは当然だが。

 まさか来々軒で本当のチャーシューを食えるとは思っても見なかった。

 夢中で食べていると、何となく視線を感じる。

 食べているふりをしながら、横目で見てみる。

 カウンターの裏の辺りでグラスを拭きながら、れんげちゃんが真剣な顔で俺の食べている姿を見つめている。

 なんだか心配そうな、不安そうな顔である。

 運転免許を取った時の試験で、教官が見守る中、試験を終えて、結果を待っている時の、あの真剣で不安げな顔である。

 その横で、親父も同じような顔をして俺を見ていた。

 確かに「いつもの」来々軒の味噌ラーメンではない。

 味が変わった事に、俺がどう反応するのか、知りたい所ではあるのだろう。


 味に敏感なのは、常連さんです。

 あの味を求めて店に通っているのに、何の断りも無しに、勝手に味を変えるなんて!

 そういう文句を言える人たちです。

 しかも、直接には言ったりしません。

 黙って、来なくなりますね。

 コワイ存在ですね。

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