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来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第1章 寂れた俺、寂れた店、寂れた親父

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5/12

5 マズい。とことんマズい。よくこれで客が来るもんだ

 なんだよ、全くもう。

 今日は散々な日だったなぁ。

 痛む鼻をチリカミで抑えながら、部屋に帰る。

 30分位して、来々軒のシャッターが閉まる音が聞こえた。

 俺は、冷えた体とすきっ腹を抱えながら、着替える気にもなれずに部屋で横になっていた。


 コンコン…


 玄関の戸が、叩かれた音がした。

 出たくも無かったが、いそいそと起き出した。

 開けてみると、誰もいない。

 出るのが遅くて、帰ったのか?

 閉めようと思ってふと下を見ると、ラーメンのドンブリが一杯、床の上においてあった。

「親父…」

 部屋に持ち帰り、食ってみた。

 麺は伸びきっているし、スープもなってない。

 だいたい、準備に手間取ったらしく、やたらヌルイ。

 マズい。

 とことんマズい。

 よく、これで客が来るもんだ。

 でも…

 俺は、残さず全部、来々軒の味噌ラーメンを平らげた。


          ~ ・ ~


 翌日の夕方。

 俺は空のドンブリを抱え、来々軒の暖簾をくぐる。

「いつもの」

「へい」

 客の一人もいない店内で、俺と親父はいつもの会話を交わした。

 ただ違ったのは。

 カウンターに、俺が空のドンブリを置いたのと。

 親父の頭に包帯が巻いてあったのと。

 俺の鼻に、大きな絆創膏が張ってあったことだった。



                        (つづく)


 マズい、マズいんだよ、このラーメン。

 何でこんな店が、営業し続けていられるんだよ。


 俺が常連だから、か。

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