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来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第5章 酒席に誘う親父、ご機嫌な彼女、来々軒のラーメン

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19/28

19 何してたんですか。マスターも私も、待っていたんですよ

 ああ、泣かせちゃった。

 なんで泣いてるのかも、どうしたらいいのかも、分からない。

 黙って出てきて、なんにもできない。


 うん、後悔しかない。

 これから、どうしようと、ウジウジするまでが1セットですね。

 人の気持ちなんて、判らない。

 いつも顔を突き合わせている人の気持ちだって、判らないかも知れない。

 いきなり泣かれた女の子に対する対処法なんて、判らないのが男というもので。

 だから。

 俺は無言のまま、黙って来々軒を出た。

 今。

 激しく、後悔している…


          ~ ・ ~


 定休日明けの、翌日。 

 それでも、一日中立ち仕事のバイトを終えて、疲れて冷えきった体を癒すために、俺はもう真っ暗になった中、来々軒に向かった。

 店の前には、十人ほど並んでおり、繁盛ぶりを伺わせている。

 こういう行列自体は、店の強力な宣伝効果に繋がる。

 他の人が列を作っているだけで「並んでみたくなる」人は結構いるものだ。

 こういう行列を作れたら、あとは店の側がどれだけ「レベルを落とさずに」やれるかが問題になってくる。

 ただ、行列の出来るラーメン屋の中には、なるべくお客を店内に入れておく店もある。そうする事によって、食べているお客に“プレッシャー”を与え、回転率をさりげなく上げていくのだ。

 だが、来々軒はそういう事はしないようだ。

 だから、必要以外のお客を外に待たせているのか。

 それは“行列”の扱いに不慣れなのか、食べているお客への配慮の為に確信してやっているのか、俺には判らなかった。

 それにしても、以前の来々軒とは随分な変わりようだな…

 そんな事を考えていた俺が、当然のように店外で立って待っていた客たちの後ろについたのは当然なのだが。

「あ、鳴人さん、こちらです」

 不意に、れんげちゃんの声が聞こえた気がした。

 誰か呼んでいるらしい…

 あ、俺の事か…

 店の玄関から出てきたれんげちゃんが、こっちを見て微笑んでいる。

 お客さんを見送りに出て、並んでいる俺に気づいたらしい。

 しかし、俺は気恥ずかしくて、彼女の顔をまともに見る事が出来なかった。

 あんな泣き顔を見てしまった以上、もうまともに彼女と話す事は出来ない…

「何してるんですか。早く来てください」

 気がつくまもなく、れんげちゃんは俺のすぐ目の前までやってきた。

 並んでいるお客さんの目の前で、俺の手を掴んで引っ張る。

「えっ、ちょ、ちょっと…」

 柔らかくて細くて、そして熱気を持った手だった。

 意外に力強かった。

 そして、俺は女の子に手を握られる経験なんて、今までされた事など無かった。

 しかも、こんな大勢が見ている中で。

「何してたんですか。マスターも私も、待っていたんですよ」

 れんげちゃんは、そんな俺の戸惑いなど、全く気にしていないようだ。

「待ってたって…」

 それ以上、有無をいわさない態度で、れんげちゃんは俺の手をぐいぐい引っ張って店に入る。

 お客も、不思議そうな顔で俺たちを見ていたが、何も言わなかった。

 お店の外にできる行列。気になりますねぇ。

 あれ、絶大な宣伝効果ですよね。並んでみたくなりませんか?

 え、たかがラーメンに、並びたくないよ?

 …ですよね。

 でも、あのラーメン屋さん、ナニモノ?と調べたくはなりますよね?


 で、普通に順番待ちしていたら、店員の女の子に手を引っ張られて連れていかれる男。

 アイツ、ナニモノ?と調べたくは…ならないか。

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