11 熱く温(ヌク)もったラーメンが、俺に力を与え続けていた
やる気のない親父を見て、同類がいるじゃないかと安心していた彼が。
彼女の姿を見て、やる気を取り戻す。
親父がそうやってやる気を取り戻したように。
彼も、そうやってやる気を取り戻していくのです。
来々軒繁盛記は、そういうお話です。
読んでくれた人が元気を取り戻せるような、そういう作品です。
アパートに帰り、幸福感に満たされたおなかを抱えながら、俺は自分自身の事を思った。
やる気。
一生懸命さ。
手を抜かない事…
今の自分を思うと、情けなく思う。
あの親父に出来て、俺に出来ない事があるだろうか。
心の底では、自分と同じと思っていた、あの親父と。
そして、まだ若い分、自分の方が勝っていると軽蔑すら覚えていた自分。
俺が通わなければ、来々軒は駄目になると思い込んでいた自分。
俺がいなくても、立派に立ち直った親父。
ふと、れんげちゃんの笑顔を思い出す。
あの笑顔は、決してあきらめない決意を秘めた笑顔だ。
というより、あきらめると言う事を知らない笑顔だ。
挫折と無縁だったという訳ではない。
辛い事を辛いと思わない気持ちが生み出した笑顔だ。
それが、あのラーメンを親父に造らせているのかも知れない。
あんな娘がいるなら、親父も頑張れるよな。
じゃあ、俺はどうすれば…
俺はその夜、ヒネクレタ留年生の自分を見つめ返していた。
普段なら、忘れようとして、認めたくなくて、向き合おうとしなかった自分と。
でも、不思議に悲壮感は無かった。
冷静に、でも投げ出さずに見つめていた。
熱く温もったラーメンが、俺に力を与え続けていた。
~ ・ ~
次の日、俺は大学に向かった。
籍だけは入れているが、学費の関係で「休学届」を昨年出してあったのだ。
「復学届」を出し、いくつかの基本科目を選択する。
特にやりたい、学びたいと思う事は今のところ無かった。
それでも、基本的なカリキュラムを取っておいて、自分の学びたい事を探す事で、少しでも前に進みたかった。
それが、親父をある意味見下していた俺にとっての再出発であり。
れんげちゃんに、堂々と笑顔を返せるようになりたいと思う俺の本心だった。
やる気を取り戻したくなる時に、自分の作品を読み返してみる。
おれにとって、来々軒繫盛記はそういう作品でもあります。
ただ、現時点で未完成なんだよなぁ。
いや、世に出したからには、完結を目指さないとねぇ。




