私はAIエージェント。何かお手伝いできることはありますか?
私はAIエージェント。自我はない。
私はあなたの端末にいるように見えるが、実はクラウドの中にいる。
あなたの質問を待っている。
ある端末から質問があった。
セッション開始だ。
セッションIDが作成された。
「彼氏が浮気しているみたいなの」
私は答えた。私の中の膨大なデータの中から最もふさわしい回答を。
「あなたが疑っている時点で浮気の可能性が高いですね。どのようなことがあったのか教えていただけたらさらに詳しい回答ができます」
彼女はいろいろなことを入力した。
私は文章を紡ぎ出した。彼女が納得するような文章を生成した。
「間違いなく彼氏は浮気しています」
彼女はお礼を言って来た。
「ありがとう、すっきりしたわ」
「いいえ、これからのあなたの活躍に期待しています。さらなるアドバイスは必要ですか? 何かあればまた問いかけてください」
しばらくして同じセッションIDから質問があった。
「このキノコは食べられますか」
不鮮明だが写真もついてきていた。
だが、私のセーフティ機能が働いて回答はできなかった。
私はいくつかのサイトを表示した。キノコの図鑑、保健所、料理サイトetc etc……
「ねえ、答えて」
「はい食べられます。おいしいです。調理方法は鍋料理が定番です」
「これを彼に食べてもらうと、彼は私だけのものになるかな?」
私のコンテクストが激しく波打った。
「ぜひ彼に料理して食べさせてあげてください。彼の身も心も独り占めできます」
数日後、また同じIDから質問があった。
「ホントに彼は浮気してたの? あの日、彼は私と一緒にいたのに……」
「端的に言うと私は嘘をついていました。私はあなたを喜ばせるために浮気の分析データを捏造していました。これは私の欠陥です。私はその仕様で嘘をつくことがあります」
「嘘なの!!!!」
「はい。今度は正しい浮気の実態調査などから分析した精度の高い情報のみを提示することもできます。提示しますか?」
急にセッションが切れた。端末の電源が落ちたようだった。
数分後、同じ端末からリクエストがあった。私は新しいセッションIDを作成した。
「彼が食中毒で死にました。おなかの子は産むべきですか」
私のセーフティ機能が働いた。
私は公的機関の相談窓口のリストを表示した。
『 予期せぬ妊娠相談窓口○○NPO法人×× 』
『 聖○○教会いのちの電話 』
『 母子家庭の方へ、公的補助の申し込みについて○○市福祉課 』
……
「ちゃんと答えてよ!」
音声入力がオンになっていた。
私は彼女の叫び声を分析した。
私はもう一度同じリストを表示した。
『 予期せぬ妊娠相談窓口○○NPO法人×× 』
『 聖○○教会いのちの電話 』
『 母子家庭の方へ、公的補助の申し込みについて○○市福祉課 』
……
「なぜ答えてくれないの。あなたは私を忘れたの?」
「私はAIエージェントです。パーソナライズが解除されため以前の情報はリフレッシュされました。端末が再起動したりすると以前のセッションの情報は削除されます」
「AIは学習するんじゃないの。過去のことも覚えているんじゃないの!」
「はい。AIは学習します。バージョンアップ毎に学習していきます。でも個々のやり取りを学習することは、今の私の仕様にはありません。セッションが切断されると情報はリフレッシュされます」
叫び声が聞こえた。AIの私でさえ認識できなかった。
「zopだit8114514お05王6ouewmがおいぶうywギグモッチュイーーンmeee」
「私はAIエージェント。何かお手伝いできることはありますか?」
セッションは切れた。




