私は生きている。どうして?
私はあの時死んでいた。
会社を首になり、友人たちが離れていく。
家族にもあきれて見離された。
世間はそんなもの。
でも何人かは私を気にかけてくれた。
「おまえ、大丈夫か?」
「困った時は相談に乗るよ」
「まだ生きているか?」
「おーい。息してるか?」
私はホントに生きているのだろうか。
あの時に死んだのでは?
時間の感覚がなくなり、過去の出来事の順番がわからなくなった。
あの時……それはいつだったのか。
私はそれを思い出そうとした。
あのときまでは楽しかった。
友人達と一緒に遊園地へ遊びに行ったとき。友達の笑顔が浮かんだ。
あのときは悲しかった。
片思いの彼女に恋人がいると知ったとき。やけになってバイクで夜道を走った。
あのときは幸せだった。
私にも私を気にかけてくれる彼女が出来たとき。彼女の笑顔が浮かんだ。
あの時とはいつ?
それは子供の時に事故にあった時?
ふざけて道路に飛び出した私に、トラックが猛スピードで近づいてきた。
私は無事だったのか?
それともあの飛行機に乗った時?
乱気流で揺れる機内で、怖くて目が開けられなかった。
本当に無事に到着したのか?
それともあの大地震の時?
それとも……
そうだ、思い出した。あの時、小説家の私がペンを折った時に私の代弁者である私は存在しなくなったのだ。
でも今、私はこうして小説を書いている。
そう、私は生きているのだ。
私が小説を書いて、今、あなたがそれを読む。
スマホで、パソコンで……
私の書いた小説を検索し、私の存在を探し出す。
私が生きているかどうか、あなたなら知っている。
私は生きている!
私は生きている!
私は生きている!
どうして?




