↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
30/121

030 塵肺の治療法?

「よお、キース。体は大丈夫か?」

「キース、目覚めたと聞きましたが、痛い所はありませんか?」


 部屋への入室を許可すると、ディアナが開いたドアから父上と母上が姿を現す。


 その後ろには、アビーとシンディーの姿もあった。


 なんだかみんな勢ぞろいだね。


 父上と母上は少し心配そうな顔で僕を見ている。


 なので、僕は両親の心配を払拭しようと笑顔を浮かべた。


「はい、体は大丈夫です。どこも痛い所はありません」

「そいつはよかった!」

「父上は大丈夫でしたか?」

「おう! いつもより調子がいいくらいだ!」


 そんなことを言う父上の腰に母上の肘鉄砲が刺さる。


「もう、あんなに疲れ果てていたのに調子がいいんですから」

「言うなって。だが、調子がいいのは本当だぞ? 詳しく言うと、いつもより呼吸が楽なんだ。たぶん、キースの水がオレの肺を洗ってくれたんだな」

「そんな無茶苦茶な……」


 たしかに、僕は父上の気道を塞ぐように水で顔を覆ったけど、肺を洗うようなマネはしていないよ。


 というか、父上って息苦しさを感じていたんだ……。


 それってもしかして、塵肺の症状だったりするのかな。いつもパワフルな父上だけど、まさかそんな父上にも塵肺の症状が進んでいたなんて……。


 でも考えてみれば、父上はこの土地でずっと暮らしているわけだし、塵肺になっていてもおかしくないんだよなぁ……。


「いや、こいつはオレの勘だが、キースの魔法なら、本当に呪いも治せるかもしれねえ」

「領主様、いつも言っていますけど、呪いではなく塵肺という病ですわ」


 呪いという言葉をシンディーに訂正される父上。いつものやり取りにちょっと安心するものがあった。


「わかってるって、シンディー。とにかくキース! 試してみないか?」

「試すって、どうするのですか?」

「まず、オレで試してみよう」

「父上で!?」


 こういうのって、普通はモルモットとかの動物で試すんじゃないの!?


 ああ、でも、劇的な目に見えるような改善があるならまだしも、呼吸が楽になったなんて動物実験じゃわからないか。


 でも、いきなり人間で試すのはちょっと怖いものがある。


「でも……」

「キース、何事にも初めてってのはあるもんだ。そして、リスクを恐れていてはなにも手に入らない。失敗してもいいんだ。シンディーが治癒魔法を使えるからな。だからキース、試してみろ!」


 そう言って跪くと、あんぐりと大きく口を開ける父上。


 やっぱりちょっと怖いものがあるけど、シンディーは治癒魔法を使えるみたいだし、一応父上なりに考えがあってのことだろう。


 ちらりとシンディーを見ると、シンディーはワクワクした顔を隠さずに僕を見ていた。


 あーうん……。もし、これが塵肺の治療法になれば画期的だもんね。シンディーが期待するのもわかるよ。


 僕はベッドを降りると、父上の口へと右手を伸ばす。


 にゅるんと僕の右手から伸びたのは、まるで触手のような形状をした水だ。もちろん、僕が魔法で出したものである。


「父上、肺を洗っている間、たぶん呼吸ができません。本当に準備はいいですか?」

「うむ! 来い!」

「では……!」

「がぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!?」


 僕は意を決して父上の口の中へと水を侵入させた。水を操作して、そのまま喉を通って肺の中へ。


 僕はなんとなく知覚できるのだけど、肺の中は何回も枝分かれを繰り返して段々細くなっていく構造だった。


 素早くした方がいいだろう。


 僕は一気に父上の肺を水で満たすと、すぐに水を回収していく。この間、水を父上の口に入れてから三秒も経っていないだろう。


「げはッ! がはッ! ごはッ!」


 盛大に咽る父上。


 一瞬とはいえ、肺が水で満たされたんだ。相当苦しかったに違いない。


「大丈夫ですか、父上?」

「あなた!? 大丈夫ですか?」


 しかし、父上は答えることなく、次の瞬間にはすくっと立ち上がった。


 そして、満面の笑みを浮かべて言う。


「これはすごいぞ! いつも感じているイガイガが完全になくなっている! 息苦しさもない! まるで肺が新品になったようだ! キース! でかしたぞ!」

「おわっ!?」


 父上は僕の脇の下に手を差し込むと、そのまま高い高いをするように持ち上げ、くるくる回り出す。


 僕? 父上の回転速度が速すぎて目を回しそうだよ?


「これで、塵肺の症状に苦しむ者も減るはずだ! キース! お前は最高の息子だ!」

「はわわわわわ……」

「あなた、キースが目を回していますよ?」

「おっと。すまん、すまん」


 ようやく床に降ろされた時には、僕は平衡感覚を完全に麻痺しており、父上が僕から手を離した瞬間、尻餅を突いてしまった。


 はわ~。視界がぐるぐるしてるんじゃ~。


 首もがくがくなんじゃ~。


「だ、大丈夫か!?」

「もう! あなたは加減というものを知らなすぎます!」

「らいじょうぶ、らいじょうぶでふ。おえっ」


 僕はまるで酔っぱらったかのようにぐわんぐわんを回る視界の中、コクコクと頷いていた。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
これは凄い治療法です。みんなの希望ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。