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143 父上とお話

「それって……」


 たしか、アルコールには利尿作用があって、飲んだ水分以上の水を尿として出してしまうからじゃなかったっけ?


 あと、アルコールの分解にも水が必要だったはずだ。


 前世の日本では、アルコールは水分補給にはならないというのは常識だったけど、どうやらこっちの世界ではそうではないらしい。


 だったら、船乗りたちが水が欲しくて堪らなくなるのもわかるね。


「このアクロイド半島を通るには、風の調子がよくても十日くらいかかるらしいからな。その中間地点に港ができたら、水欲しさに寄港するんじゃないかというのが、シンディーの言い分だった」

「風の調子がよくても……」


 察するに、この世界ではまだ帆船が主なのだろう。エンジンとか、スクリューはまだないみたいだ。


 ゲームの世界から百年もあったら、技術もかなり成長しているかとも思っていたけど、聞いている限り、あんまり成長していないらしい。


 そういえば、戦争からの復興にだいぶ力が使われたんだっけ。もしかしたら、それが原因かな?


 それに、前世では魔法なんて不思議な力はなかったけれど、この世界には普通に魔法がある。なまじ魔法という力があるからか、技術開発に全振りできなかったのかもね。


 そういえば、シンディーが言っていたっけ。僕が狙われている理由も、無詠唱魔法の神秘を解き明かすためだって。


 僕としてはかなり迷惑な話だけど、魔法を研究する機関にも力を入れているから、その分、化学技術の発展が遅れているのかもね。


「そして、昔なら貴重な水をよそ者にやるなんて考えられなかったが、今だったら大丈夫だ。キースが連れてきたアクアスライムたちのおかげだな」


 そう言って、父上は僕の頭を回してるんじゃないかと思うくらいぐわんぐわん撫でる。


 毎回、目が回りそうになるけど、これが父上なりの愛情の示し方なのだろう。


 父上の言う通り、アクアスライムたちのおかげで、アクロイド村の水事情は劇的に改善した。今では、一家に一体のアクアスライムが飼われているような状態だ。アクアスライムたちは、まるで水道のような役割を担っている。今ではアクロイド村になくてはならない存在だ。


 ガレスゴディアを封印したことで雨も降るようになったし、草や木も生えるようになった。もうアクロイド男爵領は荒れ果てた砂漠の村じゃない。少しずつだが、緑が生い茂っている。


 アクアスライムたちのおかげで、アクロイド村では、もう水はありふれたものになっていた。みんなが必死に水魔法を使って水を集めていたアクロイドの大壺は、今では子どもたちや、アクアスライムたちの遊び場になっているほどだ。


「だからこそ、港で船乗りたち相手に水を売ることができる。売るのは水だけじゃないぞ? 火酒に砂糖、アクロイド男爵領で獲れたモンスターの素材だってある。船乗りたちに料理を振る舞ってもいいだろう。船乗りたちのやり取りは、しばらくはアクロイド男爵家で総括することになるが、その後は税を導入して、村人たちにも開放してもいいだろう」

「はぇー……」

「どうした、キース? 変な声を出して?」

「父上もいろいろ考えているんですね」


 勝手に考えるのは苦手だと思っていたよ。


「全部、シンディーの受け売りだがな」


 そう言って、父上は苦笑いをしていた。


 シンディーは、もうすっかりアクロイド男爵領の運営に携わっているね。たぶん、父上のなにも考えていないような借金を重ねる運用に我慢ができなくなったのだろう。


 まぁ、僕も領地の借金なんてない方がいいので、全面的にシンディーを応援しているよ。がんばれー!


 それから、父上とはいろんなことを話した。


 出産というのは、かなり時間がかかるらしく、父上の話す時間はいくらでもあった。


 僕も父上も緊張と恐怖がないまぜになったような複雑な気持ちを抱えていたのだろう。いつも以上に饒舌だった気がする。きっと少しでも気を紛らわしかったのかもしれない。


「キースは、かなり基本の大剣の扱いが上手くなったな。かなりいい調子だ。すごいぞ!」

「はい!」


 許刀の儀を経て、僕は今まで使っていた木剣ではなく、本物の剣を、アクエリアスを使うことを許された。最初は、今まで使っていた木剣ではできたことも、アクエリアスではできないことも多かったけど、今では自由自在とは言わないまでも、かなり使える自信がある。


「だから、そろそろ次のステップに進んでいいのかもしれない」

「次のステップですか?」

「ああ。実はな、今、鍛冶師にキース用のグリーヴを作らせているんだ」

「それって!」


 グリーヴって、たしか父上が靴に付けている鉄の脚甲のことだよね?


 僕の分のグリーヴが作られているということは……!


「ああ。そろそろ、キースもアクロイド流大剣術を練習してもいい頃だろう。こういうのは早い方がいいからな」

「やった!」


 僕の推しキャラであるモブ兵長。そんな彼が開発したというのが、アクロイド流大剣術だ。

お読みいただき、ありがとうございます!


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