特異事象危険度分類基準
第1 目的
本基準は、特異事象に係る人的被害、社会的影響、拡散性及び管理の困難性を総合的に評価し、当該事象の危険度を分類するために必要な事項を定めるものとする。
第2 特異事象の定義
特異事象とは、既存の科学的、医学的又は社会的知見によって合理的な説明を行うことが困難であり、かつ、通常の手段による予測、管理又は対処が困難な現象、物品、場所、生物その他の対象をいう。
特異事象には、次に掲げるものを含む。
一 特定の条件下において異常な現象を発生させる場所又は空間
二 接触、所持、使用、閲覧その他の行為により異常な影響を生じさせる物品
三 通常の生物とは異なる性質又は能力を有する生物
四 通常の人間には認められない性質又は能力を有する者
五 音声、映像、文章、記憶、夢その他の情報を媒介として発生し、又は拡散する現象
六 前各号に掲げるもののほか、特異事象対策室長が特異事象として取り扱う必要があると認めるもの
第3 分類の基本原則
特異事象の危険度は、当該事象の外見、規模又は物理的な破壊力のみによって決定してはならない。
分類に当たっては、次に掲げる事項を総合的に勘案するものとする。
一 人的被害の程度
二 被害を受ける可能性のある人数
三 影響範囲及び拡散性
四 発現条件の明確性
五 回避方法及び被害防止手段の有無
六 封鎖、収容又は監視の可否
七 性質又は発現条件が変化する可能性
八 一般社会に与える影響
九 既存の行政機関、警察、消防、医療機関その他の組織による対応の可否
十 その他、特異事象対策室長が必要と認める事項
危険度分類は、当該特異事象の本質又は恒久的な性質を確定するものではなく、分類時点において確認されている情報に基づく暫定的な評価とする。
第4 第一種特異事象
第一種特異事象は、現時点において、生命、身体、財産又は社会秩序に重大な影響を及ぼす可能性が低いと認められるものとする。
第一種特異事象には、原則として次に掲げるものを含む。
一 人的被害が確認されていないもの
二 発生する異常が軽微であり、日常生活に重大な支障を生じさせないもの
三 発現範囲が限定され、かつ、拡大する兆候が確認されていないもの
四 容易な回避又は管理が可能であるもの
第一種特異事象については、記録の作成及び定期的な経過観察を基本とする。
ただし、新たな被害、性質の変化又は影響範囲の拡大が確認された場合は、速やかに分類の見直しを行うものとする。
第5 第二種特異事象
第二種特異事象は、一定の条件下において、軽度の身体的被害、精神的被害、記憶への影響又は財産上の損害を生じさせる可能性があるものとする。
第二種特異事象には、原則として次に掲げるものを含む。
一 一時的な身体的不調又は精神的不調を生じさせるもの
二 一時的な記憶障害、知覚異常又は行動異常を生じさせるもの
三 限定的な財産被害を生じさせるもの
四 発現条件及び回避方法が概ね判明しているもの
五 警告、立入制限、保管その他の比較的簡易な措置により被害を防止できるもの
第二種特異事象については、必要に応じて対象の回収、保管、立入制限、関係者への警告その他の措置を講ずるものとする。
第6 第三種特異事象
第三種特異事象は、死亡、重傷、恒久的な身体機能の喪失又は回復困難な精神的被害を生じさせる可能性があるものの、発現条件又は回避方法が判明しており、適切な管理措置によって被害を防止できるものとする。
第三種特異事象には、原則として次に掲げるものを含む。
一 接触者又は影響を受けた者が死亡する可能性のあるもの
二 重篤又は恒久的な後遺症を生じさせるもの
三 発現条件が限定されているもの
四 特定の場所、物品又は行為を封鎖若しくは制限することにより、被害の発生を防止できるもの
五 管理区域外への影響拡大が確認されていないもの
第三種特異事象については、対象又は発生場所の封鎖、収容、監視及び定期調査を行うものとする。
なお、被害の程度が重大であっても、発現条件及び回避方法が明確であり、管理が可能である場合は、第三種として取り扱うことができる。
第7 第四種特異事象
第四種特異事象は、多数の者に被害を及ぼす可能性があるもの、影響範囲が拡大しているもの又は従来の管理方法による被害防止が困難となったものとする。
第四種特異事象には、原則として次に掲げるものを含む。
一 短期間に複数の死者又は重傷者を発生させたもの
二 発現条件、影響範囲又は回避方法が変化したもの
三 自律的に移動し、又は複数の場所において発生するもの
四 遠隔地にいる者へ影響を及ぼすもの
五 従来有効であった封鎖、収容又は監視の方法が機能しなくなったもの
六 一般の警察、消防、医療機関その他の関係機関のみでは対応が困難なもの
七 広範囲の避難、交通規制又は情報統制を必要とするもの
第四種特異事象については、複数の調査班及び必要な支援要員を投入し、関係行政機関と連携の上、封鎖区域の設定、住民の避難、継続監視その他の必要な措置を講ずるものとする。
既に第三種以下として管理されている特異事象について、発現条件又は性質の変化が確認された場合は、原因が判明していない場合であっても、第四種への暫定的な変更を行うことができる。
第8 第五種特異事象
第五種特異事象は、国家、社会又は人類の存続に重大な影響を及ぼす可能性があるものとする。
第五種特異事象には、原則として次に掲げるものを含む。
一 都市、都道府県又は国の範囲を超えて急速に拡散するもの
二 極めて多数の者を同時に死亡させ、又は支配する可能性があるもの
三 現実、歴史、記録、記憶その他の社会基盤を広範囲に改変するもの
四 既存の封鎖、避難、収容その他の方法による管理が困難なもの
五 国家機能又は社会秩序の維持を困難にするもの
六 前各号に掲げるもののほか、政府による非常事態への対応を必要とするもの
第五種への指定は、特異事象対策室長の申請に基づき、所定の承認手続を経て行うものとする。
第五種に指定された場合は、政府及び関係機関を含む統合的な対応体制を直ちに構築するものとする。
第9 暫定指定
特異事象の発生直後その他の理由により、危険度の判断に必要な情報が不足している場合は、確認されている被害及び想定される最大の影響を基準として、暫定的な危険度を指定するものとする。
暫定指定に当たっては、被害を過小評価してはならない。
調査の結果、危険性が低いことが確認された場合は、所定の手続により危険度を引き下げることができる。
第10 分類の変更
次に掲げる事由が生じた場合は、危険度分類の見直しを行うものとする。
一 新たな人的被害が確認された場合
二 発現条件又は回避方法に関する新たな情報が得られた場合
三 影響範囲の拡大又は縮小が確認された場合
四 対象の性質又は行動に変化が確認された場合
五 封鎖、収容又は監視の方法が確立された場合
六 従来の管理方法が有効でないことが判明した場合
七 外部からの干渉又は人為的な操作が疑われる場合
八 その他、分類の変更が必要であると認められる場合
分類の変更は、特異事象の原因又は変化の理由が解明されていない場合であっても行うことができる。
第11 管理状態
危険度分類とは別に、特異事象の管理状態を次のとおり記録するものとする。
一 観察中
対象又は現象の継続的な記録を行っている状態
二 封鎖中
対象となる場所又は区域への立入りを制限している状態
三 収容中
対象を専用施設その他の管理可能な場所に収容している状態
四 調査中
発現条件、回避方法、影響範囲その他の性質を調査している状態
五 追跡中
対象の所在が確定しておらず、継続的な捜索を行っている状態
六 沈静化
一定期間にわたり現象の発生が確認されていない状態
七 消失
従来存在していた対象又は現象を確認できなくなった状態
八 管理不能
現時点において有効な封鎖、収容又は監視の方法が確立されていない状態
沈静化又は消失の状態は、特異事象が恒久的に消滅したことを意味しない。
第12 留意事項
特異事象の危険度、発現条件及び回避方法は、将来にわたり不変であることを保証するものではない。
長期間にわたり被害が発生していない場合であっても、対象の性質が変化し、又は新たな発現条件が生じる可能性がある。
特異事象の取扱いに当たっては、過去の調査結果及び既存の分類を参考としつつ、現在確認されている状況を優先するものとする。
対象の由来、目的又は発生原因が不明であることのみを理由として、管理措置を遅延させてはならない。
また、発現条件又は回避方法が判明したことをもって、当該特異事象の全容が解明されたものと判断してはならない。




