特別番外編 僕のアメリ
私の事が好きだから、
共に生きていきたいとあなたは言う。
出来る事ならば私もそうしたい……
でも、でもダメなの。
私ではあなたの隣に立つには足りないものが多すぎるから……
◇◇◇◇◇◇
「ル゛イスっ、あなたまたランバード領に行っていたのっ?」
大陸で1~2を争う大国ハイラムの王妃となったジュリが、自身の嫡男であるルイスに向かって言った。
「ご機嫌よう母上。今日も仁王立ちがお似合いで。もちろん、僕のアメリに会いに行っていましたがそれが何か?」
この国の王太子となったルイス(18)が飄々と答える。
「それが何か?ではありません。毎日毎日押しかけて、先方も迷惑でしょう。それにあなた、仮にも大賢者と呼ばれる人を辻馬車代わりにするのはやめなさい」
「でもバルちゃんも楽しいからいいよ☆っていつも言ってくれますよ?」
「あの暇人は何をしても楽しい☆からそう言うのよっ、とにかく頻繁に行き過ぎてアメリにウザがられても知らないわよ?」
母のその言葉にルイスがうっと胸を押さえ、傷ついた顔をする。
「ウ、ウザがられなんかいません!アメリと僕は愛しあってるんですっ」
「母親の目から見ても鬱陶しいくらいしつこいわよ。まったく、変なとこばかり父親に似てっ」
「賢王と呼ばれる父上に似ているのならいいじゃないですか!」
「執政と女性の扱いは別モノです!
あンの男の執着心ときたらっ……!」
今や国王となったアルジノンと10歳の時に出会ってから現在に至るまで、その寵愛を独占してきたジュリが手をワキワキさせて怒りを露わにしている。
何か色々と思い出しているのだろう。
怒りの矛先がこちらに向かない内にと、ルイスはその場をそろりと抜け出した。
母の故郷であり、ルイスの想い人がいるランバード領は西の国境に面していて、王都からは馬車で一週間、駿馬で駆っても五日はかかる距離だ。
しかし大賢者バルク=イグリードの転移魔法で行けば一瞬で着く。
「……今帰ったばかりなのに、もう会いたくなってきた……」
ーーー僕の可愛いアメリ。
祖父が有する国境騎士団副団長、セルジオ=ローバン卿の長女で僕と同じ18歳だ。
銀色の髪に透明度の高いアンバーの瞳。
控えめな性格でいながら芯が強くてとても優しい。
性格はいいし美人だし非の打ち所がない、僕の初恋の人だ。
6歳の時に出会って一目惚れして以来、僕はもう彼女の事が好きで好きでたまらないんだ。
そして6歳の時からずっとし続けているプロポーズ。
最初はまだ幼いからと母上に却下され、
少し大きくなってからはアメリの父上に娘はどこにもやらん!と却下され、
今では家格が釣り合わないとアメリ自身に却下される。
カカク?何ソレ美味しいもの?
家格なんてクソ喰らえだ。
僕はもちろんの事、父上も母上も王家が良いと言っているんだ。
何を憚る事がある?
アメリ、アメリ、僕は心配なんだ。
日に日に綺麗になっていくキミ。
国境騎士団にはアメリを狙うハイエナ共がうじゃうじゃいる。
そんなヤツらが近くに居るのに僕は遠く離れた王都の空の下。
こうしている間にも、アメリが言う家格の釣り合う男を選んでいたらどうしよう。
アメリ。
どうしたら僕を選んでくれる?
どうしたらキミをお嫁さんに出来る?
「……………もう強行手段に出るか」
僕は心を決めた。
12年待ったんだ。
もういいよね?
強引に事を進めてもいいよね?ーーー
次の朝、ルイスは名付け親であり親友である、
バルク=イグリードにその事について決意を打ち明けた。
イグリードは最初目を丸くしてルイスの話を聞いていたが、やがてその丸くした目をキラキラと輝かせて言った。
「イイね!熱いねルイ坊!よく決意したね、面白そう☆
全面的に協力するよ!」
「バルちゃんならそう言ってくれると思ってた!」
「でもさ……一つだけ問題があるよね☆」
「問題……?」
イグリードが発した不吉なワードにルイスが身構える。
「アメリちゃんを強引に城に連れ去るのはイイとして、後が怖いよね☆主にキミのママが……」
「ヒィっ」
怒りのあまり羅刹と化した母の姿を想像して、ルイスの顔が恐怖に歪む。
「アメリのパパも怖いよね☆」
「ヒィっ」
今や国境騎士団にこの人有りと謳われるアメリの父親の剣を抜く姿を想像して、これまたルイスは震え上がった。
それを見てイグリードは楽しそうにルイスに尋ねる。
「どうする?それでもやる?」
ルイスは怯えながらも力強く首を縦に振った。
「も、も、も、もちろんだよ!アメリを手に入れられるなら、地獄の阿修羅たちに八つ裂きにされようとも負けはしないっ!」
その言葉を聞き、イグリードは満面の笑みで言った。
「よく言った!それでこそ僕の愛し子ちゃんだ♪
ダイジョウブだよ、僕が全面的にバックアップするからね!」
胸をドーンと叩いてそう告げるイグリードを、
ルイスはジト目で睨め付けた。
「……でも対母上に関してだけは信用できないな。バルちゃんは母上には弱いからなぁ」
「あはは☆だってジュリってば怒ったら超怖いもん☆」
「大賢者をビビらすウチの母上はもしかして人類最強なのでは……?」
「ぷ☆」
「ま…まぁいいよ。もうウダウダ悩むのは沢山だ。実力行使だ!やるぞ!僕はやるぞ!」
「そのイキだ!
僕たちはやれる!エイエイオーッ!!!
こうして謎のテンションのまま、ルイスはイグリードの転移魔法でランバード領内へと転移んだ。
いつも通りアメリの生家であるローバン家の玄関ポーチの前に辿り着く。
玄関のチャイムを鳴らそうとしたルイスの肩をイグリードが叩いた。
「ルイ坊、あっちだよ」
ルイスが振り返り、指し示された方を見るとそこに意中の人がいた。
「……アメリ」
愛してやまない彼女が庭の草花に水をやっている。
細くて白い手でジョウロを持ち、慈しむような慈愛に満ちた目で草花を見つめていた。
ルイスは静かにアメリの元へと歩いて行く。
そして優しくその名を呼んだ。
「アメリ」
ジュリとアルジノンの長男ルイス。
幼い頃からイグリードがベッタリだった為に性格はかなりイグリードに影響を受けています。
でもそこはやはり王太子となるべく育てられた嫡子、帝王学を含む勉学も剣術や体術もとても優秀な青年に成長しました。
そして作中にもありましたが、
羅刹や阿修羅を知っているなど、他国の思想や文化、そして言語や簡単な魔術などもイグリード自身から教示を受けております。
本人を見るからにとてもそんなハイスペな奴には見えませんが、ルイ坊の名誉の為に作者のひとり言として呟かせて頂きましょう☆
そして今回のもう一人の主人公アメリ。
こちらも皆さまご存じだと思いますが、
『わたしは知っている』のヒロイン、アニスの娘です。
そう、あの絶対妊娠魔法で授かった赤ちゃんです。
この二人の結婚にまつわる一連の騒動を今回お届けしようと思います。
よろしくお願い致します!




