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だから言ったのに!〜婚約者は予言持ち〜  作者: キムラましゅろう


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ジェスロへ

僕は孤児だった。

でも魔術の才を買われて、6歳の時に魔術師だった

師匠に引き取られた。


「バルク、精霊を相手にするのはやめなさい、

いずれとんでもない事になるかもしれないぞ」


師匠はよくこう言っていたけど

仕方ないじゃないか、

向こうから寄ってくるんだから。


それにアイツらは面白いよ。


小動物みたいで

神秘的に美しくて

無邪気で

悪戯好きで

優しくて

残酷


一緒にいて飽きない。


精霊力も貸してくれる。


魔術と精霊力を併せると面白いんだ。


だから師匠にどれだけ反対されようとも


僕は精霊たちとの付き合いをやめなかった。



まさかそれがこんな事に

なるなんてね……








5月6日の午前中に


運命の王子様方御一行は


港町ジェスロに降り立った。



本来なら王家専用の船を使うところだが、

あくまでも私的(?)なお忍びなので

一般の客船に乗った。



メンバーは

アルジノン、ジュリ、セオドア、タバサのいつメンに加え数名の護衛と秘密裏に暗部の者が数名……

である。


服装も少しだけ裕福な商家のボンボンと娘。

もしくは下級貴族の令息と令嬢、

といったコンセプトでキメた。



さすがは港町、


珍しい海産物や遠く海を越えてやって来た品々で

溢れかえっており、

ジュリは目をキラッキラさせて色々なものを

見物した。


視察などで何度か港町を訪れた事のあるアルジノンにとっては珍しくもなんともないが、

楽しそうにはしゃぐ婚約者の姿が見られて、

それだけでもこの街に来て良かったと思えた。



アルジノンは本当なら、

イグリードの真の目的もわからず、

また危険を伴わないとは言い切れないこの状況で

ジュリを連れて来たくはなかった。

だがジュリも予言者として無関係ではないし、

予言の中に“半身と共に”とあったので

渋々同行させる事にした。



拠点とするホテルに荷を置き、

下見としてジェスロ市街13丁目小高い山の上1ー1を探してみる事になった。



まずはその13丁目へ。

地図を手に1ー1へ行くが

小高い山などどこにも見当たらない。


港町特有の坂道の多い住宅街でしかない。


右、左、上り、下り、

どちらを見渡しても家ばかり。


その後もその周辺を探し回ったり、

この土地の者に小高い山はないかと聞いてみたが、

誰も山など知らないという。



結局その日は見つけられず、

坂道を歩きまくって疲れた足を引き摺るようにして

ホテルに戻る。


仕方ないので明日、

この地の領主に連絡して探索の協力を仰ぐという事になり、

その日はもう就寝する事となった。





「……リ、……ジュリ」



誰……?



「僕だよ」



あ、今度はすぐにわかったわよ、


イグリードでしょう?



「ふふふそうだよ」



丁度よかったわ、教えて欲しいの。



「小高い山の上1ー1だろ?」



そう!それよ!

ねぇ、小高い山なんてどこにもないのよ。


1ー1にはただ大きなお庭の小さな家が

あるだけなの。


予言の場所はどこなの?


どこに行けば小高い山は見つかるの?




「その大きな庭の小さな家が

小高い山の上1ー1だよ」



えぇ?

だって……坂の上だけど

平坦なお庭なのよ?




「昔はね、そこが山の上だったんだよ。

500年ほど前はね。いつの間にか、その小高い山にしがみつくようにして家が沢山建ち初めて、住宅街になっちゃったんだ」



どうりで見つからないはずだわ。



「そうだよね。だから教えに来た」



ありがとうイグリード。



「ねえジュリ」



なあに?



「やっと明日だよ」



?なにが?



「ぼくは18年待ったんだ。

まぁ当初の目的とかなり変わったけどね」





「明日、キミは怒るかな」



怒る?わたしが?



「それとも悲しむかな」



悲しむ?なぜ?




「明日わかるよ」



イグリード?



「ジュリ、明日ね」



ちょっ、イグリード!



待って!



「待って!」



ジュリはまた自分の出した大きな声で目が覚めた。



「イグリード……またこのパターン……」





翌朝、ジュリは


昨夜イグリードが夢に現れた事と、


小高い山の上の場所がわかった事を皆に告げた。





今日はとうとう5月7日だ。


朝食を摂り、


そのあと予言の場所、小高い山の上1ー1へ向かう。



ジュリはアルジノンと手を繋ぎながら歩いた。


なんとなく不安でたまらなかったから。




〈イグリード……ジノン様に何かするつもりなの?〉



『明日、キミは怒るかな』



昨夜のイグリードの声が耳から離れない。



イグリードの予言、


世界の存亡の鍵を握る運命の王子、



一体何が……


ジュリは強く、アルジノンの手を握った。


握り返してくれる

大きくて温かなアルジノンの手。


この手を絶対に離したくない、

ジュリは心からそう思った。





そしてとうとうその場所に着いた。



ジェスロ市街13丁目小高い山の上1ー1



昨日も見たはずなのに


なぜ昨日は何も感じなかったんだろう。



()()だけ妙に明るい。


陽の光?


何かが違う気がする。


でも昨日は確かに普通の家にしか見えなかった。



煉瓦造りの門扉の他は


生垣も柵も何も無い入り口。



その向こうには只々広い芝生の庭。



白壁に赤い屋根の小さな家の隣には

信じられないくらい大きな木がある。


でも昨日周辺を歩いた時、


こんな大きな木は見当たらなかった。


ここまで大きい木ならどこの位置からも

見えそうなのに。




なんだか不思議な場所……



ジュリはそう思った。




アルジノンと二人、


小さく頷きあって門扉をくぐる。




その瞬間、

〈あ、変わった〉とジュリは思った。



空間が変わったというか


次元が変わったというか


今までいた所と明らかに違う場所に辿り着いた、

そんな気がしたのだ。



ジュリはふとアルジノンの方を見た。


アルジノンは何も感じていないようだ。



セオドアとタバサも無言で後ろを歩く。



そのまま家の方までつき進み



家の扉の前に二人で立つ。



アルジノンが扉を叩いた。




「………」


胸の鼓動をうるさいくらいに感じる。





その時、



「はぁ~い☆」



ドタバタドタバタ……

中から賑やかな足音が聞こえてくる。



「ん?」




そしてバターンッと派手な音を立てて、


威勢よく扉が開いた。





「いらっしゃーーい!!」




白いレースのエプロンをした


年若い青年が中から元気よく現れた。





「待ってたよーー!ようこそーー!」



 


この声を知ってる。


寂しげで優しくて悲しげで温かい声。


母の胎内で





夢の中で聞いた声。





「……はじめまして?

 になるのかしら、イグリード」





ジュリがそう言うと青年は




「はじめましてじゃないよねーー☆」

と、これまた元気よく答えた。





目の前には


青色の髪に黒曜石の瞳を持つ青年。




その者こそが



大賢者にして予言者、



バルク=イグリード(500)その人であった。






















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