おのれ……タバサったな!
と、いうわけで
結局、期日ではないからと
オリビア姫から予言を受け取る事が
出来なかったアルジノンは、
そのままダッシュで城に戻り、
ダッシュでジュリの侍女のタバサの所へ
転がり込んだ。
そして今、
タバサの前で正座をしている男二人……。
「それで?ご自分がヘタレチキンだったために
ジュリ様を傷つけた事を悔い改め、謝罪して許しを
請い、尚且つモトサヤに収まりたいと、そう仰られるわけですか?」
「はい……そう仰られるわけです……」
アルジノンがしおしおになりながら返事する。
只今タバサのお説教タイムである。
アルジノンの乳母の娘であり、7つ年上のタバサには何故か昔から頭が上がらない。
「王太子ともあろうお方が、一介の侍女に正座して
懇願しなくてはならない事態を招かれた事を、
どう思われているのでしょうか?」
「大変深く反省しております……」
「というか、何故セオドア様も一緒に正座をしてるんです?あなた、何も悪くないでしょう」
タバサはアルジノンの隣で正座をするセオドアを
一瞥して言った。
「いえ、あれだけ毎日殿下のジュリ様好き好き攻撃を一番近くで見ていた筈なのに、殿下のお心を信じなかった自分は側近失格です。殿下がお叱りを受けるならばもちろん自分も……!」
それを聞き、アルジノンは感嘆の声を上げる。
「セオドア……!」
「殿下……!」
「あ、そういう主従の絆とかどーでもいいんで、
話戻させて貰ってもよろしいでしょうか?」
「「はい……」」
「それで?殿下はどうなさりたいんです?ジュリ様はもう、城の皆に別れを告げて綺麗さっぱり未練なくこの城を去られたのですよ、それを今更呼び戻すというのですか」
「し、城の皆に別れまで……」
「はい、料理長や庭師、下僕に至るまで、心を込めた感謝の気持ちが綴られたお手紙をお渡しになられました。それはもう皆、感動して……
『全城が泣いた』という感じでしたね」
「うっ……俺には無いのか……」
「あるわけないでしょう、ジュリ様が城を去る原因を作った張本人が!脳みそまでヘタレやがりましたか?」
「うっ……!」
アルジノン、タバサの辛辣な言葉に被弾。
「タバサ、結果としては全く意味もなくただ弱腰で
逃げ回っていただけの殿下ですが、それは本当に
ジュリ様を愛していらしたからこその空回り……
どうかもうその辺で許して差し上げてください……!」
セオドアが手を着いてタバサに懇願する。
「セ、セオドア……!」
「殿下、なにトゥンクさせていやがるんですか、
本当に反省しておられるんですか!?」
キレかけタバサが恐ろしい……
「む、無論だ!今のはちょっと、あまりにもセオドアが優し過ぎて思わず恋をしそうになっただけだ!」
「殿下……」「セオドア……「帰れ」
「「わー!タバサーー!」」
その後、怒り狂うタバサの荒御魂をなんとか鎮め、話し合いを再開した時には既に窓の外は夕闇に包まれていた。
「それで?要するに、私がジュリ様の居場所を知っている筈だと、そう仰られるのですね?」
「だってそうだろう。ジュリに後を託されたお前なら、ジュリの居場所を知ってて当然だ、だろ?」
「だろ?と申されましても……」
「頼むタバサ!ジュリの居場所を教えてくれ!」
「知ってどうされるのです?」
「決まってるだろう!今すぐ飛んで行って、
泣いて縋って許しを請うのだ!」
「……王太子のする事ですか……」
「ジュリを取り戻すためならなんでもする!」
タバサは呆れたように盛大にため息を吐いた。
「申し訳ありませんが、ジュリ様とのお約束ですのでお教え出来ません」
「何故だ!?」
「ですからジュリ様とお約束したのです」
「そんな……」
アルジノンはがっくりと項垂れた。
全身から哀愁が漂う。
それを見てタバサはまたまた
ため息を吐いた。
「お教えは出来かねますが、ヒントなら独り言で、
ブツブツ呟いてしまうかも……」
「え!?」
「まさか分かりやすくそのまま実家に帰られる事はなさらないでしょうねぇ。連れ戻される危険がありますし。でもジュリ様に他に行くところなんてないはずです……となるとお母さまのご実家であるフィンリー子爵領の可能性も有りですよねぇ……ブツブツ」
それ聞き、
アルジノンはガバァっと立ち上がった。
「なるほど!フィンリー子爵領だな!
ありがとうタバサの独り言!!」
そう言ってダッシュで出立して行った。
「……フ」
その様子をタバサは
ほくそ笑んで見ていたのだった……。
王都からフィンリー子爵領までは馬を駆って
3日はかかる。
アルジノンは何度か休憩を入れ、
何度か馬を替えて、最短の一日半で到着した。
王太子の突然の訪問に慌てるフィンリー子爵夫妻を
他所に、アルジノンはジュリを探す。
「ジュリ!ジュリ!どこだ!?」
困惑する子爵に、
セオドアが事の次第を説明した。
するとフィンリー子爵から
驚きの発言が。
「孫娘のジュリなら生家のランバード辺境伯領に
直接帰ったと聞き及んでおりますが……?」
「……は?」
「城を出てすぐに、寄り道ナシで……」
それを聞き、アルジノンがわなわなと震え出す。
「タ、タ、タバサっ……!
おのれっ……タバサったなっ!!」
「殿下、それを言うなら謀った、ですよ」
「いや、謀るとタバサるとかけてだな……
なかなか上手い言葉遊びだろ?」
「お見事です、殿下」
「「……………」」
フィンリー子爵夫妻には
ただ黙って見つめる事しか出来なかったそうな……。
こうしてジュリの侍女、
タバサによる王太子へのプチざまぁは見事成功したのであった。




